環境や社会に配慮した公益性の高い企業に対する国際認証制度「B Corp™️」とは

2023年3月11日、日本で「B Corp™️認証」を取得する企業が一堂に会する参加型フェア「Meet the B」が開催された。主催したのは、有志の集まりであるB Corp Month JAPAN実行委員会だ。日本のB Corpの現状や、B Corp取得において重要となる考え方について語られたイベントの内容をレポートする。

B Corp(B コープ)とは、B Corporationの略称で、米国の非営利団体「B Lab™️」によって作られた国際認証制度だ。「B」はすべての人、地球、コミュニティのためのベネフィット(Benefit for All)の意味で、社会や環境、従業員、顧客などのステークホルダーに対する利益を表現している。

B Corpの認証は、B Labの定めた基準をクリアした企業のみに与えられる。

B Corpの認証を取得するには、B Labが無料で提供するオンライン認証試験「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」を受ける必要がある。従業員、コミュニティ、環境、ガバナンス、カスタマーの5つの分野における評価に沿って、200を越える基準が存在し、200点満点中80点が認証のボーダーラインとなる。

2023年2月現在、日本ではB Corpを取得した法人が20社になった。食品ロス削減に取り組むサービスを持つKuradashi、日本庭園を中心に造園業を営む石井造園、中高生向けデジタル教育を行うライフイズテックなど、様々な業界の企業が取得しており、その数はじわじわと増加している。

毎年、3月は「B Corp Month」と呼ばれ、B Corp認証の普及と啓発を目的とした様々な取り組みが、世界各地で展開されている。毎年グローバルでテーマが設定され、今年のテーマは「We Go Beyond」。「Meet the B」も、それに合わせて開催されたイベントだ。

日本のB Corp™️が集い、来場者との対話を促す「Meet the B」

「Meet the B」は、日本で活動するB Corpの集うイベントだ。日本でB Corpが集結する初のイベントとなっており、以下の22企業が出展した。

ustwo/石井造園/ヴェレダ/エコリング/Allbirds/オシンテック/ovgo Baker/クラダシ/Colere/CFCL/シグマクシス・ホールディングス/ダノンジャパン/ドクターブロナー/日産通信/patagonia/ファーメンステーション/フリージア/mayunowa/メタジェニックス/ライフイズテック/Luida/レドリボング

イベント会場には、対話型ポスターセッションと称し、各企業が商品や事業を紹介するポスターが設置され、参加企業と来場者の交流が行われた。

会場は渋谷の「100BANCH」で開催された

ブースではB Corp認証がついた商品を展示している企業も

日本におけるB Corpのムーブメントはどうなる?

イベントでは、ゲストを招いたスペシャルトークセッションが2部構成で開催された。

1部では、株式会社ロフトワークの共同創業者・相談役であり、株式会社Q0(キューゼロ)の代表取締役社長・林千晶氏、ヴィーガン対応のクッキーを製造・販売する株式会社ovgo代表取締役・溝渕由樹氏が登壇。両者からは、日本におけるB Corpムーブメントの展望について語られた。

林氏は「B Corpは、サステナビリティが実現されている“状態”を示しているのではなく、努力をし続けていくという“動き”を表す言葉だと思っている。認証をとることがゴールではなく、いい会社を目指すという宣言のようなものと捉えている」と話し、溝渕氏もその言葉にうなずいた。

左からQ0の林氏、ovgoの溝渕氏

B Corpでは、認証を取得した後に、さらにスコアを上げるために試行錯誤し続ける姿勢が重要になる。認証という制度があることによって、よりよい会社を目指す企業同士がコミュニティを形成し、ともにサステナビリティを探究する動きが広がってきているそうだ。

2部は、Allbirdsのハナ・カジムラ氏が登壇し、Allbirdsのサステナビリティに関する取り組みについて語った。

左から聞き手の宮武徹郎氏、Allbirdsのカジムラ氏、通訳の今田氏

製品自体にサステナビリティが体現されていることを重視し、製品のデザインから原料調達、製造、運搬といった過程において、いかにCO2 排出量を減らせるかに挑戦するAllbirds。

カジムラ氏は、「サステナビリティの取り組みは、初めから完璧な取り組みを目指すのではなく、改善しなければならない点も含めて透明性をもって開示し、社会から評価されることが重要です」と述べた。

B Corpはまだ新しい取り組みであり、正解は存在しない。小さな取り組みからでも、まず始めて、発信し、様々な立場の人の意見をとりいれながら改善していくことが重要になるだろう。

トークセッションでは2部ともに多くの参加者が集まった

トークセッション後には、改めてポスターブースにて来場者とB Corp企業が対話する姿も見られた。トークセッションを踏まえて生まれた問いを深めている様子が印象的だった。

会場内では、B Corpと来場者が集まり議論する場「カウチ」も盛り上がっていた

会場内では、認証取得の手引書となる『B Corpハンドブック』も販売された

最後に、参加したB Corp企業と来場者を交えたネットワーキングの時間があり、イベントは終了した。

B Corpをきっかけに、「いい会社」を目指す取り組みを推進

B Corp認証取得企業や認証取得を目指す企業、B Corp認証企業をサポートしたい企業といった、様々な角度からB Corpに関心のある方が来場した、本イベント。イベント申し込みも満席となっており、日本においてもB Corpや「いい会社」の世界基準について学び、実践につなげていくイベントやコミュニティのニーズが高まっていることがうかがえた。

主催であるB Corp Month JAPAN 実行委員会は、「今回のイベントは『参加型』を重視していました。実行委員会の枠も出展企業や協力企業に広げ、ともに協働することを通して、自然と会話が生まれ、自分がイベントを作っている1人だという実感につながったと思っています。それが一体となって、大きな熱量が生まれました」とコメントしている。

今後も、今回のイベントで生まれたムーブメントの勢いを止めないよう、B Corp認証企業同士の協働や、認証取得に挑戦する企業の実践が促進されるような環境づくりを行なっていくという。

今回、編集部として取材した中で特に印象的だった対話テーマは「B Corpを取得する意味」についてだった。

イベントの参加者からは、各セッションにおいて「なぜB Corpを取得したのか」に加え、「取得の前後でどのような変化があったのか」についての質問が多くあがった。

実際にB Corpを取得した企業からは、B Corpを取得すること自体がゴールではなく、サステナビリティに対する文化を社内で育て、「いい会社」をつくっていくための一つの手段であるということが共有された。

B Corpは、それを取得し、維持していく「過程」そのものに学びがある。今後も、B Corpをきっかけとして、ビジネスとサステナビリティの両立を実現する企業が日本で増えていくことに期待したい。