これまで理工系分野への研究支援を行ってきたANRIが人文系分野へと支援を拡大する今回の取り組みは、急速に進化するテクノロジーがもたらす社会的影響を考える上で、人間や社会、思想への深い洞察が不可欠であるという認識に基づいている。
本奨学金の対象となるのは、狭義の人文学に限らず、政治学や社会学、経済学、その他融合領域なども含めた広く人文社会系の研究を行う35歳以下の大学院生、ポスドク、学部生、フリーランス研究者。国籍や所属機関は問わないが、2025年9月上旬に開催予定の交流会への参加や、ANRIの媒体を通じた研究成果の発信が条件となっている。
応募期間は2025年6月30日までで、専用のGoogleフォームから応募可能。選考は書類審査と面接の二段階で行われ、選考基準としては「研究内容の具体性と社会・未来への影響力」「従来の枠組みにとらわれない新たな発想と挑戦意欲」「学問に対する真摯な姿勢」が掲げられている。
テクノロジーと人文知の融合を目指して
ANRIはこれまで「未来を創ろう、圧倒的な未来を(Make the Future AWESOME)」というミッションのもと、主に技術革新や社会変革を目指すスタートアップ企業への投資や理工系研究者の支援を行ってきた。しかし、テクノロジーの発展がもたらす社会的影響を考える中で、人文系研究への支援の必要性を強く認識するようになったという。
本奨学金を通じて、ANRIは学際的な交流と新しい視点の創出を促進し、テクノロジーと人文知が掛け合わさる未来の構築を目指している。採択された研究者には2025年9月下旬に一括で奨学金が支給され、研究活動に自由に活用することができる。
本活動をリードするANRIシニアプリンシパルの中路隼輔氏は「テクノロジーとイデオロギーは表裏一体である」と指摘し、「立ち止まって考える力・ある種の遠回りする力の重要性」を感じているという。そして、「人間のこと・社会のこと」を考える若い研究者の支援を通じて、より良い未来の構築に貢献したいとの思いを語っている。