コミュニティ、経済、お金
「KOU」の構想が発表されたのは、2018年2月のことだった。
株式会社ツクルバがコミュニティ×テクノロジーのサービス開発を目的に、エンジニアリングカンパニーの株式会社Hanoi Advanced Labと合弁会社である株式会社KOUを設立。コミュニティコインアプリの開発を始めた。
コミュニティとテクノロジーを使って、成し遂げたいことは一体どのようなことなのだろう。
KOU取締役の中村真広さんは、ツクルバの共同代表であり、CCOを務める人物だ。ツクルバは、クラウドファンディングやコワーキングスペースといった新しい概念の黎明期に、CAMPFIREを用いて資金を集め、シェアードワークプレイスの「co-ba」を立ち上げた。
仲間を集め、場を共創する体験を通じて、中村さんの中ではコミュニティの大切さはどんどん大きくなっていった。co-baを運営するツクルバにおいても、事業や組織のデザインにおいて「コミュニティ型アプローチ」を大事にしてきたという。
中村さんがコミュニティに関して大いに刺激を受けたのが「地域通貨」だ。NPO法人グリーンズが開催する「コミュニティ経済と地域通貨、そして未来のお金クラス」という講座を受講し、神奈川県相模原市の藤野で導入されている「お互い様の経済をつくろう」を合言葉に「萬(よろづ)」に出会った。(詳しくはこちらのインタビューもどうぞ)
よろづの仕組みでは、メーリスを通じて助けを求めたり、それに応えたりでき、助けたり助けられたりの取引は履歴が通帳に記載される。すると、地域の中でどれくらい自分が助けてもらっているか、はたまた助けているかが可視化される。
金銭的なやりとりは発生していないが、藤野というコミュニティの中では、よろづを通じて「感謝」が循環している様子が見えるようになっているという。こうした地域通貨に影響を受け、千葉のいすみ市でも地域通貨の取り組みが育っている。
話を聞いていくと、どうやら中村さんが「KOU」で挑戦しようとしているのは、こうした地域通貨の仕組みにヒントを受け、多様なコミュニティの中で「感謝」を循環させる仕組みをテクノロジーで作り上げることのようだ。
コミュニティ×テクノロジーで「お金」を再発明
開発開始から半年ほどが経過し、「KOU」はiOSのアプリをリリース。
当初は「コミュニティの仲間にコインを送る」ことと「仲間同士のやり取りに、ラブ機能を使って投げ銭感覚でコインを送る」という2つのコインを送る機能がメインだった。
中村さん「iOSのファーストリリース版ではコインを送り合う機能しかありませんでしたが、ユーザーはKOUで初めてのオンラインコミュニティをつくっていたりしたので、『タイムライン投稿機能』を付けました」
投稿機能がついたことで、KOUの中でコミュニケーションが可能になった。よろずでいう、「メーリス」と「手帳」が揃った状態だ。
2018年12月6日にリリースされたAndroid版も「メーリス」と「手帳」が揃った状態となっている。「いよいよスタートラインに立ちました」と中村さんは言う。
朝活コミュニティ「朝渋」でのKOUの活用
すでにKOUはコミュニティの活性に寄与できているようだ。朝活コミュニティとして知られる「朝渋」もKOUを利用しているという。
中村さん「KOUを一番うまく活用してくれているのは朝活コミュニティの『朝渋』ですね。毎月のアクティビティランキング上位の人を非金銭な表彰をしているんです。ゆるい繋がりの中でコミュニティメンバーの人となりをKOUを通じて知り合えることもGOODと言っていました」
https://twitter.com/madeinpanini/status/1070129887225073666
今日は #朝渋オフ会 にお邪魔してますよ☀️#朝渋KOU部 による11月のメンバーランキング報告&表彰もあります👏
こんなに朝渋内で #MONI が流通してて嬉しい!#朝渋 #KOU #MONI pic.twitter.com/ShOFHudUTO— 株式会社KOU|職場のおもちゃメーカー (@KOU_community) December 4, 2018
#朝渋 のりたけさん @noco25 がくれた #MONI のコメントが嬉しかった!こちらこそくるみにお越しいただき、ありがとうございました!!#KOU @KOU_community @cafe_kurumi pic.twitter.com/NSCBP1OYBB
— 吉田 将来/ソクスポ (@kurumirai21) November 12, 2018
コミュニティテックのムーブメントを
コワーキングスペースの増加のみならず、朝渋のように活動を起点としたコミュニティも増えている。こうしたコミュニティが活発化するためにも、コミュニティ内の感謝を可視化することは価値がある。コミュニティが増えているいま、「KOU」のようなツールが活躍する場面は増えるだろう。
彼らは「KOU」をはじめとしたコミュニティについて様々な変化を生み出す事業領域を「コミュニティテック」と呼び、その発起人たちが集結する『コミュニティテックカンファレンス-2019年”コミュニティテック元年”宣言-』を2018年12月12日に開催する。
様々な分野で「コミュニティ」の形成をテクノロジーの力で推進するサービスが集まり、「コミュニティテック」の可能性について議論するという。コミュニティとテクノロジーの可能性に関心のある人は、足を運んでみてはいかがだろうか。
日時:2018/12/12(水)19:30 START(19:00 OPEN)
会場:co-ba co-ba jinnan 3F
住所:東京都渋谷区神南1-20-2 第一清水ビル 3階
詳細:https://community-tech-conference-pre.peatix.com/