「メール」というコミュニケーションとどう関わるか

SlackやFacebookのMessengers、LINEなど、ビジネスコミュニケーションにおいてチャットが主流になっているような印象を受けるが、メールはなかなかなくならない。

変化は一様に進むわけではない。なんといっても、日本ではいまだFAXで連絡することが求められる場面もある。産業遺産の収集で知られる米国のスミソニアン博物館がコレクションの一つに加えたほどの機械を、だ。

これでは、チャットコミュニケーションが増える中で、メールのやりとりがなくならないのも仕方がない。

もちろん、メールの体験も全く変化がなかったわけじゃない。いろんな挑戦が行われてきた。中でも「Astro」はよかった。

チャットに近い感覚でメールを書いて送信することができ、重要なメールを読み逃したり返信漏れがないようにフォローアップしてくれるツールだった。

その他にも、

  • あまり読んでいないメールマガジンの購読を解除したり、不要な未読メールを削除してくれる。
  • メールの追跡(開封確認)や、返信すべきメールへのリマインダーの設定
  • スマホアプリがあり、スマートフォン上でのメール対応も可能
  • Slackと連携でき、Slack上でメール対応が可能

といった機能があった。Slackを見ていればメールの対応もできるし、カレンダー機能もあってスケジュールの確認までできた。このツールのおかげで、かなりメールの体験は良くなって“いた”。

Astroは、メールを統合しようとするSlackによって買収されてしまい、姿を消した。Microsoftによってカレンダーアプリ「Sunrise」が買収されてなくなってしまったときに近い悲しみだった。

以来、メール体験は低下の一途をたどっていたのだけれど、わずかに希望の光が差し込んだ。

メール体験を変えるAIアシスタント「Notia」

AI搭載営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供する株式会社マツリカが、AIを活用したメールトラッキングツール「Notia」をリリースした。

Notiaは外部とのやりとりでメールの利用が多い営業パーソンに向けたツールだ。すでにクローズドβ版として大手企業含む約200社に利用され、何百万通ものメール解析と日程調整をサポートしてきたという。

同ツールでは、返信対応漏れの防止や、フォローアップの支援、面倒な日程調整の自動化の機能の提供によって生産性の向上を目指している。Notiaが提供する機能は主に以下の4つ。

  • 日程調整自動化機能
  • AIを活用した重要顧客メールの自動仕分け
  • 開封やクリック、資料ダウンロードなどフォローアップ通知
  • Slackbotアシスタントによる返信漏れ通知

重要な相手の仕分けや日程調整のサポート、Slackとの連携による返信漏れ通知など、搭載されている機能の多くはまさにAstroを使っていたときに利便性を感じていた点だ。

NotiaはGoogle Chromeのエクステンションツールなので、Astroと全く同じ体験にはならないかもしれないが、それでもメールという体験が改善されることに期待したい。

マツリカは、同ツールを開発した背景について、以下のようにコメントしている。

「質の高い営業活動を行うため、多くの顧客に対し、最適な内容・タイミングでコミュニケーションをとることが求められてきてます。そのために”Eメールというビジネスコミュニケーションの効率化や最適化、高速化をすることが現場の支援につながると考えています。大量のEメールの処理作業から解放され、最大限の時間をクリエイティブな営業活動や目の前の大切な顧客のために使えるように。Notiaには営業現場の支援という強い願いを込め開発を進めています」

営業を支援するツールを開発してきた同社が、さらに営業を支援するためのアプローチとして乗り出したNotia。今後は下記のような機能を強化していくそうだ。

  • 日程調整機能の強化
  • モバイル対応
  • Slack連携の拡充
  • Sensesを中心としたCRMツールとの連携強化

コミュニケーションは相手がいる。であれば、相手に合わせてツールは変わる。メールというツールを使う人が多い以上、メールでコミュニケーションする場面はしばらくなくならない。その前提に立ち、メール体験を変えていこうとするNotiaの取り組みは心から応援したい。