フリーランスが感じる、自分を経営することの難しさ
「フリーランスのライターとして働いているんだ」と伝えると「自由そうでいいな」「うらやましい!」と言われることも少なくない。けれど、私はこの時少しの疑問を抱く。正社員としての働き方をやめ、フリーランスになって、私はどれだけ「自由」になったのだろうかと。
フリーランスという働き方に対する印象が全くなかったわけじゃない。前職ではWeb制作に携わっていて、周りにはフリーランスも多かった。「フリーランスならではの大変さ」を多少聞いてはいたものの、彼らの働き方を見ていて「会社員の頃よりも自由に働いて、やりたいことに集中できるだろう」という印象を抱いていた。
フリーランスとして働き始めた頃は気楽さを感じる部分が大きかった。時間は自由だし、選べるほど引き合いは多くなかったけれど、“自分の判断”で仕事を請けることができる。心配事といえば、ちゃんとこの先も仕事があるか、ということだったけれど、それも目の前の仕事にしっかり結果を出していれば次の仕事につながり、次第に不安は解消されていった。
問題は、フリーランスとして順調に仕事が回り始めてからやってきた。はじめは数えるほどだった案件が徐々に増え、取引先の数も増えていく。収入が安定し、今後の自分の可能性を広げられる、と期待すると同時に、会計管理や契約まわりといった“会社的やりとり”をきちんとする必要性に気づく。
そうなって、はじめて「ああ、自分を経営する意識を持たないといけないんだ」と気づいた。自分自身に対しての責任を感じると共に、眼前の仕事が複雑になってしまったことに伴い、ストレスを感じるようになった。
「確定申告どうしよう・・・」
「あの請求書どうしたっけ」
「契約書を送らないと」
など、執筆という自分の本業以外の懸念が頭から離れずモヤモヤすることもある。「本業にもっと集中できたらいいのに」と感じたことは、一度や二度じゃない。自分が思い描いていたフリーランスとは、こんな働き方だったのだろうか。
フリーランスの“経営”を支援し、本業への集中を高める
もともとは「自分の仕事に集中したい」とフリーランスになったはずだったのに…ともどかしさを抱えているフリーランスも多い。そんなフリーランスが本業に集中できるようにと生まれたのが、個の経営管理インフラ「myCo.」だ。
myCo.は以前UNLEASHで紹介した個人のバーチャル株式会社化を実現する「Freelance Basics」のサービスのひとつ。Freelance Basicsは株式会社ランサーズが提供する、フリーランスを苦手領域(たとえば会計管理や法律・契約に関すること)の業務から解放し、本来その人が集中すべき”本業”にリソースを割けるように支援する。
現在、myCo.で提供されているのは、請求書機能だ。順次アップデートしていくことを前提に同サービスの第一弾としてリリースされている。支払い遅延を抑止する機能としてクライアントへのリマインド機能がついているのが特徴。近しい機能を持つサービスとして、売掛金の回収保証サービスMisoca回収保証もある。
これらの機能はフリーランス特有の課題を汲んだ機能と言えるだろう。フリーランスが増えているとはいえ、まだまだ立場が弱い。私自身、実際に支払いの遅延を経験したこともある。
そんな状況に置かれた時、企業なら経理担当が業務として行ってくれる支払い催促も、フリーランスは自分で行わなくてはならない。個人としての印象を悪くしたくないという理由で催促しないのではなく、個人が個人の仕事を、あくまで“会社的に”行えるようにサポートするのがこの機能なのだ。
順次アップデートしていくというmyCo.は、収支管理や提案・契約の機能、目標管理など新しい機能が追加されていく予定だという。
注目したいのは、会計周りに関する機能だけではない。契約や目標管理、ToDoリストなどフリーランスが日々仕事を行う際に、必要な機能が一つのサービスにまとまっている点だ。
特に「目標管理」は、案外フリーランスが見落としがちなものではないだろうか。会社に属していれば、解決すべき課題などがあって、会社全体や部署がもつ売り上げ目標が設定されている。つまり、向かうべき方向性がある程度示されていることが多い。
しかしフリーランスとなると、向かいたい方向性を決めて目標設定をするのは、他でもない自分だ。課題や目標数字などが明確にならず、メリハリがつかないという話はフリーランス仲間からも聞いたことがある。持続的に働くという観点においても、目標管理は重要だ。
個人の経営管理を行う環境が整備されれば、フリーランスが本業に向き合う時間が増え、得意領域に集中できるようになる。そして余裕ができることで、仕事の方向性や目標の見直し、未来の仕事の可能性を広げるための関係性づくりなど、「その先」を見すえた仕事ができるようになるのではないだろうか。
働き方の選択肢は、よりフラットになる?
最後に私自身の働き方の話をすると、私はフリーライターと並行して、半年ほど前から会社員としても働いている。
それは、関心のある分野に強みを持つ企業で知見を増やしたかったからという理由も大きいが、社会保険への加入など制度的なメリットも大きいと感じているからだ。当たり前だが、会社員の給与をもらうのに請求書が不要ということにも、今となってはありがたみを感じる。
もし会社で働くメリットを、フリーランスとしても享受できるような環境ができあがったとして、私はどのような働き方を選ぶだろうか。
きっと、自らの「好き」や「やりたいこと」「こんな人と働きたい」など、より素直な欲求に沿って働き方を選ぶようになるだろう。フリーランスだから、会社員だからとくくるのではなく、自らの進みたい方向に自由に舵を切っていきたい。
会社員とフリーランスの働き方における”前提条件”のギャップが埋まることで、選択の可能性はより広がる。雇用されているか否か、組織に属しているか否かに関わらず、個人個人に合わせた働き方の“前提”が整っていけば、働き方の選択肢はよりフラットに、選びやすくなるのではないだろうか。