ALSという病気を、私は高校生になるまで知らなかった。
筋萎縮性側索硬化症。
脳から信号を伝達する運動神経細胞が侵され、少しずつ、全身の筋肉が動かせなくなる。
漫画「宇宙兄弟」で、伊東せりかの父親を苦しめたその病気は、いまだ確たる治療法がみつかっていない難病らしい。
「徐々に手足が動かせなくなって 食べることも… 話すことも… 自力での呼吸もできなくなってしまいます」(宇宙兄弟 12巻 第119話)
いまも当時も、自分の身体が動かせなくなるなんて、まったくイメージが湧かない。
けれど、症状を端的に表したこの一フレーズに、高校生だった自分がとても動揺したことを覚えている。
目で入力する意思伝達装置「OriHime eye」
手が動かなくなり、口が動かなくなる。病気の進行により、少しずつ意思を伝える手段を失ってしまう中で、現在ALS患者に広く使われているのが、透明文字盤だという。
五十音が書かれた透明な文字盤をとおして、介助者がALS患者の目の動きを判断し、1文字ずつ読みあげる。
患者側からすれば、介助者が近くにいなければ自分の意思を伝えることができない。一方、介助者側からすれば、人の目の動きを捉えることの難しさに加え、長い文章になると、前の文字を忘れてしまうこともある。
意思の伝達を助けてくれる恩恵は間違いなくありながらも、透明文字盤には、患者側・介助者側それぞれに決して小さくはない不便さがあった。
オリィ研究所が開発した「OriHime eye」は、センサーで眼の動きを捉え、文字を入力できるデジタル版の透明文字盤だ。
患者の目の動きをより速く、正確に把握し、患者が直感的に自分の意思や感情を伝えることを可能にした。文字の入力だけでなく、メモ機能やメール機能が備わっている点も、OriHime eyeの特徴だ。
メール機能が備わり、「その場」に相手がいなくても自分の意思を伝えられるようになった。そのおかげで、利用者が行えるコミュニケーションの幅が広がったといえるだろう。
オリィ研究所が、さらなるアップデートを目的とした製品モニターの募集を開始
さらなる製品アップデートを目的として、オリィ研究所が製品モニターの募集開始を発表した。モニター期間は最長3ヵ月間、募集人数は10名前後だ。
モニターには、ソフトウェア「OriHime eye」、必要パソコン、視線入力センサ、同研究所が開発した分身ロボット「OriHime」の他、必要な周辺機器が無償で提供される。
手を動かす、食べる、喋る。
いまだ治療法が見つかっていないALSは、ひとたび発症すれば、患者があたりまえに行ってきたこれらの動きを、少しずつ奪っていってしまう。
透明文字盤は、そんな中で、人々が難病に負けじとする知恵であり工夫であったように思う。
すべてができるようにはならない。
けれども、問題を「喋ること」に分割し、さらには「意思を伝えること」に再定義し、治療とは異なる角度からALSに対抗したのだと、私は思う。
OriHime eyeは、 そんな透明文字盤とテクノロジーを掛け合わせることで、患者がより直感的に意思を伝えることを可能にした。
身体の自由を失っていく中で、「直感的=自分の感覚のまま」に意思を伝えられること。それは患者にとって、とても大きな価値ではないだろうか。
今回のモニターでユーザーの声を取り込むことで 、アップデートを遂げるOriHime eye。
ALSなどの難病を患う人々にとって、さらなる助けとなることを期待したい。
なお、モニターの条件や応募方法は以下のとおり。
【条件】
・ALSやSMAなど、視線は自由に動かせるが、発話、筆談がほぼ不可能な方
・“透明文字盤“などにより意志の疎通ができている方
・日常において、他の意思伝達装置を使えていない方
(意思伝達装置を使ったことがない方、及び意思伝達装置を使っていたが使えなくなってしまった方)
・ご家族や特定の介助者、ご友人などコミュニケーションが取れる方が近くにいる方
・月1回×3の電話などによるヒアリングにご対応いただける介助者、家族のいる方
(月1回のヒアリングが平日10時~18時の時間帯、1回30分以内で対応可能な方)
・応募頂ける方が弊社担当者と連絡取り合える事
申込みは下記まで、以下の応募要項に答えた上でご連絡ください。
オリィ研究所お問いあわせフォーム: ( http://orylab.com/contact/)
⇒『当てはまらない、あるいはその他について』に選択して、
「OriHime eyeモニター募集・条件全て満たしている」とお書きください。
Eメールアドレス記入間違いのないようにお願い致します。
(アドレスが間違っていると返信する事ができません。)
【モニター応募要項】
①申請された方、お使いになる方の名前
②病名
③お使いになる方の年齢
④お使いになる方のお住いの都道府県
⑤意思伝達装置の利用経験の有無
あり(使っていた意思伝達装置の名前 ◯◯)/ なし
⑥視線入力センサの利用経験の有無
あり / なし
⑦透明文字盤の常用の有無
いつも使っている / たまに使っている / つかわない
⑧OriHime eyeに希望する事、やってみたい事 (任意)
(引用元:ALSなど、手を使えない患者の為の意思伝達装置”OriHime eye” 新アップデートに伴う無償モニター募集開始)
image: OriHime eye + switch