「美しさを学ぶなら、秋田へ」

秋田美人というコトバが有名な秋田ですが、今回の数日の滞在で感じたのは、その秋田の「美しさ」でした。英語で美しさとは、beautyと訳されたりしますが、私がここでいう美しさは、もっと広義的な美しさ、英語のaestheticというコトバがしっくりきます。秋田は、まさにこのaestheticの意味の美しさに満ち溢れた地域でした。

私は、10月7日から10日にかけて開催された「ドチャベン2017 教育シェア 3DAYSブートキャンプ」に参加者として参加しました。「教育シェア宣言〜地方に眠る驚くべき教育資産を味わってみませんか?〜」というキャッチコピーに心惹かれ、生まれてはじめて、秋田を訪れたのでした。

たった3日間でしたが、男鹿市、五城目町、北秋田市、能代市をめぐりながら、秋田の海洋資源、森林資源、文化資源、そして地域発の新たな潮流を五感で味わう、とても充実したプログラムでした。その中で、私自身が感じた秋田からシェアすべき教育資産について、簡単に触れたいと思います。

私は今回のプログラムを通じて、秋田では持続性(サステイナビリティ)がその時代に合わせて見つめ直されているように感じました。そして、その持続性について見つめ直すことこそ、日本の美しさなのではないかと感じるようになり、これこそ秋田からシェアすべき教育資源だと思うようにもなりました。

一時期禁漁で有名になったハタハタ漁業の地、男鹿市。厳しい自然の中で伝統的な狩猟を行うマタギの地、北秋田市。木材の様々な可能性に挑む地、能代市。そして、シェアビレッジなど新しい形のまちづくりに挑む地、五城目町。

どの秋田の地域でも、日本の、そして世界の持続性について見つめ直すヒントを得るのには、これ以上にない場所でした。そして、その時代に合わせて続性を見つめ直すことこそ、日本の美しさであり、それを考えることこそ、これからのグローバル人材に求められていると、私は感じました。

グローバル人材。私自身、教育事業を仕事にしている関係で、この言葉をよく耳にします。ただ、本当にグローバル人材がその教育で育つのか、という疑問が生まれる場面に出くわすことは決して少なくありません。ついこの前も、「世界の問題を取り扱っています。」「海外の学生と交流する機会を設けています。」と聞き、なんだか、ひと昔前で、残念な感じを受けることがありました。もう、そういう時代じゃないと思うのですが。とつい言ってしまいそうになります。(もちろん、世の中には、そうではない素晴らしいグローバルプログラムも数多くあるかと思います)

世界の問題に目を向けることや、世界の人たちとつながることはもちろん大切です。一方で、いきなり世界をみて、はたして子どもたちは、どこまでその問題を自分ごとに感じられるのでしょうか。自分ごとに感じられない中で、どこまで世界の人たちとつながることができるのでしょうか。

それよりも、こうした日本の秋田にきて、持続性について考えさせられる現場を五感で体験することこそ、グローバル人材に大切なのではないかと思います。その体験は、秋田だけでなく、きっと自らの地域の持続性についても見つめ直すキッカケになり、さらには世界にも目を向けるキッカケにもつながるのではないかと私は思っています。

持続性についてその時代に合わせて見つめ直すことこそ、日本の美しさ。この秋田からその日本の美しさを教育資源としてシェアしていけたら、本当にステキな未来があるのではないかと、私は思います。

と、能代市の金勇という旧料亭にて、ドチャベンプログラムの最後に実施したふりかえりで感じたのでした。(ちなみに、この金勇という場所は、取り壊すわけでなく、ただの見学施設にするのでもなく、なんとワークショップでも使えるような場所にしてしまうことも、また秋田のすごいところだと個人的に感じました。)


書き手:小川悠(おがわゆう)

一般社団法人i.club代表理事。1988年横浜生まれ。2013年東京大学工学系研究科修士課程修了。東日本大震災をきっかけに、誰もが未来をつくるアイデアを出せる教育(イノベーション教育)の提供が地域の中等教育には不可欠と考え、その教育と産業創出を掛け合わせた仕組みづくりを目指す(一社)i.clubを立ち上げる。自身も修了した東京大学i.schoolでは2017年まで教職員として携わるなど、高等教育におけるイノベーション教育の普及にも従事する。