「アートを描く作家しか、ヘラルボニーの事業の対象にならないのでしょうか」
「異彩を、放て。」をミッションに掲げる株式会社ヘラルボニーが、一般財団法人「ヘラルボニー財団」を設立した背景には、こんな問いがあった。
同社はこれまで、国内外79の福祉施設、293名以上の作家とライセンス契約を結び、障害のある作家のアート作品を社会に届けてきた。作家や施設へのロイヤリティ総額は過去4年間で25.5倍に増加するなど、事業は順調に拡大している。
ヘラルボニーのビジネスモデルは、アートを描ける作家を対象としたもの。しかし社会には、表現手段を持たない、あるいは持てない障害のある人々が数多く存在する。創業者の松田兄弟の兄・翔太さんも、福祉施設でアート活動をしているわけではない。
日本国内で障害のある人は人口の約9.2〜9.3%、およそ9人に1人。日常的に医療的ケアを必要とする「医療的ケア児」は全国で約2万人にのぼり、その家族の6割以上が慢性的な睡眠不足や外出困難を抱えている。希望する働き方ができている家族は、わずか1割にも満たない。

創立者メッセージで松田兄弟はこう述べている。
「生きているだけで尊い」「存在そのものに価値がある」——頭の中には、いくつもの正しそうな言葉が浮かびます。けれど、声をかけてくださった方の、ここにいたるまでの時間や痛みを思うと、私たちはすぐに言葉を返すことができません。
できる・できない、役に立つ・立たないという社会が引いてきた線を問い直しながら、「命そのものに想いをめぐらせ、立ち止まり、問い続ける」。事業会社としてのヘラルボニーが「障害のイメージを変える」というインパクトを生み出してきた一方で、財団では「制度や慣習の外側に置かれてきた声」に寄り添おうとしている。
活動の詳細は2026年夏頃に正式発表される予定だ。ヘラルボニーがこれまで培ってきた広報力、クリエイティブ力、そして社会を巻き込むネットワークを活かし、行政・企業・市民をつなぐハブとして機能することを目指すという。