事業承継マッチングプラットフォーム「relay(リレイ)」を運営する株式会社ライトライトが新たに第三者承継コミュニティ「relays(リレイズ)」を立ち上げ、2023年10月28日にローンチ発表会を開催した。

ライトライトは、relayにてマッチング事例を生み出していく中で、「まだまだ第三者承継は当たり前じゃない。マッチングするだけではなく、しっかり事業を成功に導く場所が必要だ」と感じたという。

事業承継の中でも「親族内承継」については、比較的事例やコミュニティなどが存在しているものの、第三者への承継についてはまだまだ事例も、コミュニティも足りていない。承継後の事業の成功確度を高めるために、同社は第三者承継における課題の共有や相互の助け合いなどが重要だと考えたそうだ。

こうした課題を解決するために、2年以上に渡って議論を重ね、事業者や行政関係者などを含めた、地域のキーマンが集うコミュニティ「relays」を、relayとは別ブランドとして立ち上げるに至った。本記事では、「relays」のローンチ発表会の模様をお届けする。

地域経済の担い手の育成も見据え、PMIに取り組む

基調講演には、経済産業省 中小企業庁 事業環境部 財務課 係長の越渡 一郎氏が登壇。第三者承継の重要性と、それに伴うPMIやエクイティ・ファイナンスの重要性について語った。

越渡氏「事業承継への注目度は年々向上しており、経営者が若返ることで生産性向上等につながる可能性への期待も集まっています。また、中小企業においてM&Aが実現することで、経営資源の散逸回避、生産性向上の実現、創業希望者への経営資源引き継ぎなどの意義が考えられます。こうした動きには地域から参加する人も多く、地域経済の担い手の育成の観点からも注目です。

中小企業におけるM&Aを実現するにあたり、いくつかの懸念や重視する事項があり、PMIに取り組んでいく必要があります。M&Aを実施する際の目的や戦略を明確にし、譲受側と譲渡側との相乗効果を起こせなければ、M&Aの満足度が期待を下回ってしまいます。早い段階からPMIに取り組んでいる場合、M&Aの満足度が高くなる傾向が出ています。

経済産業省では、こうした観点を踏まえて、中小企業向けにPMIガイドラインをまとめている。この他、デット以外のエクイティによる資金調達の概要や、エクイティ・ファイナンスに伴うガバナンスの考え方について簡単に共有し、基調講演を終えた。

地域で事業を起こすことのリアル

龍崎氏はオンラインで登壇

では、実際に事業を承継して活動する際、どのような利点や課題があるのだろうか。

株式会社KOU 代表取締役の中村 真広氏と株式会社水星 代表 / ホテルプロデューサーの龍崎 翔子氏、株式会社ライトライト 代表取締役の齋藤 隆太氏が登壇し、トークセッションが行われた。

まず、第三者承継が持つ価値とはどのように考えられるかという問いからスタートした。

龍崎氏「私は富良野のペンションを引き継いだのが最初の事業でした。第三者承継の形で事業を始められたのはとてもよかったと思っています。自分の考え方として、リスクは少ないにこしたことないと考えていて。何に対するリスクで、どれくらいの可能性で発生するのかなど、どうリスクを評価するか、それに対して自分はどう対応できるかを事前に設計しておくことが重要だと考えているんです。

第三者承継は、居抜きで事業を始めるようなもの。例えば、前年にどれだけの売上が立っているのかがわかる、オペレーションがある程度確立されている状態などがわかった状態で事業を始められます。第三者承継で始めたことで、起業における不確実性を低減させることができました」

龍崎氏は、当時Googleで検索して最初に承継した事業を見つけて承継したという。中村氏は不動産と事業承継の類似性をあげ、どちらも情報がオープンになりにくい領域だと語る。

中村氏「事業承継は中古を買ってリノベーションするようなものですよね。自分は建築出身で、ツクルバという会社で中古リノベーションマンションの売買プラットフォームの運営などをしてきました。この不動産において生じてる変化が、事業においても起きているのだと思います。

これまではプラットフォームがなくとも、龍崎さんのように実践してきた方もいらっしゃいますが、relayのように情報をオープンに共有するプラットフォームが登場することでこうした変化が加速するのではと感じますね」

「事業承継についての一歩目を踏み出すと、次々と事業承継の話が舞い込む」と龍崎氏は語る。齋藤氏もこれまでのrelayの運営経験から、ひとつの事業をひとりが承継するのではなく、ひとりが複数の事業を承継するという流れも起こり得る、という見立てを語った。

龍崎氏は「今回の登壇の話をいただくまで、自分が第三者承継をしたという自覚はほとんどなかったんです」と語り、他にも同様の実践者は存在するのでは、と述べる。中村氏も「今は第三者承継の黎明期で、実践者はレアケース。そうした実践者同士がつながるための場は大切なので、盛り上げていけるといいですよね」と続けた。

齋藤氏は二人からの期待のコメントを受けて、プラットフォームを成長させていくことへの意気込みを語り、トークセッションは終了した。

事業承継は、まだまだ情報へのアクセスが難しいフェーズにある。実践者同士や、関心がある人のつながりが生まれていくことで、実践のハードルが下がると共に、成功確度が上げていく。そんな役割が「relays」には求められている。