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本書は、マージョリー・ブランズ、マギー・デ・プリー、フローレンシア・エストラーデの3名が著者となっている。3人は、世界で影響力あるさまざまな組織の中から、社会変革や環境活動に取り組んでいるイントラプレナーたちのグローバルな学習コミュニティ「リーグ・オブ・イントラプレナーズ」のメンバーだ。

リーグ・オブ・イントラプレナーズのメンバーは、世界20か国以上に存在しており、気候変動から貧困、移民、資源問題に至るまで、組織内部からの変化により、豊かで、公平で、持続可能な世界をもたらすために活動している。本書では、「ソーシャル・イントラプレナー」を以下のように定義している。

ソーシャル・イントラプレナーは、社会起業家に近い存在ですが、既存の組織で働くことによって、その力やリソースを活かして活動できます。ソーシャル・イントラプレナーシップとは、「社会的課題を解決するための起業的機会を、個人やグループが既存組織の中から見つけ出し、実践する自律的なプロセス」を意味します。──ソーシャル・イントラプレナー (Japanese Edition) (p.18)

本書では、U理論やシステム思考、セオリーオブチェンジなど、様々な理論を引用しながら、ソーシャルイントラプレナーに求められるスキルや知識について紹介されている。

個人的に興味深かったのは、ディープリスニングや高次の問いの設定、組織における優位な物語の分析と再構築、再構築の際に受けての世界観に配慮するための道徳基盤などの手法が紹介されていた点だ。

本書によれば、ソーシャル・コンサルティング・ファームのFSGは「The Water of Systems Change(システム変革の水)」という論文の中で、複雑なシステムや組織を固定化している6つの要因を挙げているという。

  1. 方針:政府や機関・組織のルールや規制・優先順位など、あらゆる団体に存在する行動規範

  2. 実践:公的な機関、業界団体などが取り組んでいる通常の活動プロセス。またその組織内の活動を形成している手順やガイドライン、非公式に共有されている習慣も含まれる

  3. リソースの流れ:お金や人・知識・情報およびインフラなどの資源の分配

  4. 関係性:システムに関わる関係者間、特に異なる経験や視点を持つ者同士のコミュニケーションや関係性の質

  5. 力関係:個人や組織の意思決定権や職権、および公式と非公式の影響力の分布状況

  6. メンタルモデル:物事の見方や言動に影響を与える固定観念や、当たり前とされている手法などに見られるような思考の癖

事業として成立させること、社会課題を解決すること。双方実現するためには、上記のような要因を洗い出し、認識することも重要だろう。課題を見定めた後、事業化に向けて仲間を集めるために物語をつくる方法も紹介されている。社内起業家として活動する以上、社外だけでなく、社内の巻き込みも必要になるため、物語の力は重要だ。

まず、現在の組織における優位な物語を分析し、それを踏まえて新しい物語を構成する。物語の分析については、アメリカのシンクタンクで、ストーリーベース戦略センター(Center for Story Based Strategies)の手法を参考に、以下のように記されている。

現在の組織内で優位な物語の分析を終えたら、未来の架け橋となる新しい物語の構成へと進みます。次に掲げる「FRAMES」は、ストーリーベース戦略センターのアイデアをもとに改良された手法で、新しい物語を作るステップごとのガイドになっています。

「FRAMES」とは、Frame(枠組み化する)、Reframe(枠組みを再構築する)、Accessible(伝わりやすくする)、Memorable(記憶に残す)、Emotional(感情に訴えかける)、Simple(シンプルにする)の頭文字を取ったものです。──ソーシャル・イントラプレナー (Japanese Edition) (p.98)

物語を再構築する上では、受け手の世界観も想像し、社会心理学者グループが作成した「道徳基盤理論」を参考に、物語の構成を考えるという。世界観や文化はさまざまだが、以下のような普遍的な構成要素がある。それを踏まえて、物語を構築する。

  1. ケア / 危害

  2. 公正さ / 欺瞞

  3. 忠誠 / 背信

  4. 権威 / 転覆

  5. 神聖 / 汚れ

イントラプレナー個人のニーズや価値観に向き合い、複雑なシステムを捉え、物語を構築して仲間を集め、事業化して社会課題の解決を行う。道のりは長く、変数も多い取り組みにはなるが、これから社会におけるニーズは上昇していくはずだ。企業に務めながら、事業性と公益性の両立に挑戦したい人にはぜひ読んでもらいたい。

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