すでに存在する「知」が行き渡るように

「よりよく生きるための知はこんなにも社会に存在しているんだ」

様々な視点からサステナビリティに関連する取り組みを取材、発信するなかで、そんなことを考えるようになりました。10年程度の短い時間ではありますが、それでも様々な可能性と出会ってきました。

ただ、可能性と同時に、これらの知が行き渡ってない、輪郭やつながりが不可視、適切に翻訳がなされていない、などの課題も目に見えてきました。

社会に生きる一人の市民として、自分の人生のみならず、社会をよくしていくために、できることがある。希望と共に、これらの”知”を分かち合いたい。

それが「inquire University」を立ち上げる目的です。



市民のアントレプレナーシップの醸成

市民としての十分な役割を果たし得るよう、知識・態度・スキルを体得させるための教育として「シティズンシップ教育」が存在します。その概念では、コミュニティとの関わり、倫理、ポリティカルリテラシーなどがキーワードとしてあげられます。これらが市民として重要であることは言うまでもありません。一方で、働くや仕事、技術やメディアなど、現代社会で生きる上で避けては通れないテーマが不足しているのではないでしょうか。

「シティズンシップ」を何かしらの形で更新していく必要があるように思います。不確実な時代、正解のない時代、多様な時代に、私たちは生きている。大切なのは、一人ひとりの市民が内省し、自分らしさを活かし、創造性を解放して挑戦し、他者と協力し、そして社会と接続すること。議論、対話、実践、創造、協働…これらの営みの積み重ねが新たな市民的感覚の形成につながり、公共や社会の再構築につながっていくのではないでしょうか。私たちは、この感覚を「市民のアントレプレナーシップ」と呼びたい。

inquire Universityでは、「市民のアントレプレナーシップ」を醸成するために、様々な領域を探索しながら発見した知を編み合わせて、深めるための機会を創り出していきます。きっと、時代や社会の変化と共に、共有する知も更新されるでしょう。学び続けること、変化し続けること、成長し続けること。望む未来に進むためにはそれが欠かせません。

未来は与えられるものではなく、自ら紡ぎ出すもの。不確実性を切り開き、人々がそれぞれの物語を紡ぎ出していくための力を養う、そんな学びのエコシステムを目指して活動していきます。

学びのエコシステムで扱うテーマ

よりよい未来に向かうためには、人の発達や変容は欠かせません。非営利かつオープンソースのイニシアチブである「Inner Development Goals (IDGs)」は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために必要な集団の内側のスキルをBeing、Thinking、Relating、Collaborating、Actingの5つのカテゴリに分けて説明しています。

また、書籍『ソーシャル・イントラプレナー』では、U理論やシステム思考、セオリーオブチェンジなど、様々な理論を引用しながら、ディープリスニングや高次の問いの設定、組織における優位な物語の分析と再構築、再構築の際に受けての世界観に配慮するための道徳基盤などの考え方が紹介されています。

社会課題を解決し、経済的にも成立させるためには、内的なスキルを磨くこと、あり方を見直すことなどが求められているのではないでしょうか。

inquire Universityでは、こうした文脈を踏まえて、様々なテーマを扱っていきたいと考えています。例えば、以下のような。

  • 書く、聴く、読むなどのメディアコンピテンシー
  • 対話や内省などの自他との関わり
  • レジリエンスやネガティブケイパビリティ
  • 心理的資本や社会関係資本、自然資本などの資本との向き合い
  • 自己やシステムへのアウェアネス

記念すべき初回のテーマは、「リーダーシップ」です。本講座を企画するにあたり、「人の可能性に光をあてる」ことをミッションに活動してきたNPO法人soarとコラボレーションしました。

講座のテーマは、「私からはじまる“リーダーシップ”〜人の可能性を開く『自分と他者の関わり』を考える」です。自然体な経営、自分や他者を活かすプロセス、地球思考、人権、コールの響きあうチームなど、「リーダーシップ」について、様々な観点から学び合う場を用意します。

「私からはじまる“リーダーシップ”〜人の可能性を開く『自分と他者の関わり』を考える」の開催概要

本講座は、全7回の連続講座として開催します。2〜6回目の講座では、毎回ゲストをお迎えし、実践の事例やその中で生まれた気づきなどをお伺いしながら、参加者のみなさんと学びを深めていきます。また、初回と最終回は参加者同士の交流や振り返りを実施。自分自身の経験や思いを振り返り、話し合う場を設けます。


第1回 6月7日(水)19:00-21:00 
オリエンテーション

第2回 6月14日(水)19:00-21:00
テーマ:いのちから学ぶ、“自然体”な経営の実践
ゲスト:影山知明さん(クルミドコーヒー・胡桃堂喫茶店店主)

第3回 6月21日(水)19:00-21:00
テーマ:自身と他者の可能性を活かすプロセスは、“自分の変容”からはじまる
ゲスト:桑原香苗さん(プロセスワーカー、有限会社フィールドシフト代表取締役)

第4回 6月28日(水)19:00-21:00
テーマ:“地球思考”を持ち、創造性を活かして未来をつくりだす
ゲスト:上田壮一さん(一般社団法人Think the Earth、多摩美術大学客員教授)

第5回 7月12日(水)19:00-21:00
テーマ:“人権”というリテラシーを携えて他者と関わる
ゲスト:佐藤暁子さん(弁護士/国連開発計画(UNDP)ビジネスと人権プロジェクトのリエゾンオフィサー)

第6回 7月19日(水)19:00-21:00
テーマ:自分のコール、相手のコールを聴き、それが響き合うチームであるために
ゲスト:嘉村賢州さん(NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授)

第7回 7月26日(水)19:00-21:00 
振り返り


お申し込みは以下のPeatixから。本講座への参加を検討中の方向けに、2023年5月10日(水曜日)20時よりオンライン説明会を開催します。説明会へのご参加を希望の方は、こちらの申込みフォームからお申込みください。

学びのために様々な共創に取り組みたい

初回の講座は、soarと共に企画を進めました。今後も、inquireが媒介となり、様々なパートナーと社会に存在する知を届けるために活動していきたいと考えています。なにかコラボレーションしたいという方は、ぜひともお声がけください。

講座の情報をウォッチしたい、という方はニュースレターを購読いただくか、Peatixのグループをフォローいただければと思います。