若年層の支援を行なう認定NPO法人D×P(ディーピー)は、500円で妊娠検査が受けられる「ワンコイン妊娠検査」を提供する医療法人 大生曾 さくま診療所と、スマルナステーションを運営する株式会社ネクイノと2022年11月に業務提携を開始した

提携の背景は、D×Pが大阪ミナミにて若年層が自由に利用できるフリーカフェを2022年8月から始めたのがきっかけだ。フリーカフェでの雑談の中には「性に関する話」も多く、なかには「コンドームをつけてくれない」「最近アフターピルを飲んだ」という妊娠リスクが高い話もあったという。

D×Pではこれまでにも生理用品やコンドームを無料配布するなどの支援をしてきた。妊娠リスクに直面した際に必要となるのは妊娠検査薬などだが、検査薬は一般医薬品であり、配布できないものも多いのが課題だった。

今回の提携では、性に関して困ったときに医療機関や専門家に相談できる体制を実現。診察が必要な人には、さくま診療所にD×Pのスタッフが同伴を。さらには、診察後のアフターケアやフリーカフェで困っている人たちにむけて、いつでも助産師にLINEで相談できるスマステーションを利用できる。

D×Pが今回の連携に至った背景について、同団体理事長の今井紀明氏は「コロナ禍で繁華街にいて孤立している10代の子たちや若年層とオンライン相談で出会い、何かできないかなとずっと考えていました」と語る。

D×Pが2022年8月より試験的に始めた若年層が自由に利用できるフリーカフェ

「歌舞伎町では多くのNPOが活動しています。しかし、大阪ミナミでは一つを除いてNPOがアウトリーチできていません。家出や居場所がない子どもたちや若年層と関わる場を大阪ミナミに作りたいと思っていました。大阪のNPOとしてできることをやっていきたいと思っています。

実際に妊娠している方、出産後の子どもの養育について出産前から支援を認められている特定妊婦の方など、これまでオンラインで多くの相談に乗ってきました。『妊娠していて誰にも話せない』『パートナーがいない』という状況の人たちが、ミナミの現場でもあると思っています。

なので、孤立させずに心境を話せたり、泣けたり、感情を共有できる場を連携先とも一緒になって作っていければなと思っています」

「アウトリーチ」は社会福祉の分野で、「助けが必要であるにもかかわらず自ら申し出ない人たち」に対し、公共機関などが積極的に働きかけ、支援を届けることを指す言葉として生まれた。アウトリーチしていくために、今回のように複数の団体が手を取り合っていくことも非常に重要になる。

性の情報を発信するYouTuberや記事が、一昔前に比べて増えてきた。しかし、まだ情報が届いていない人たちもいる状況だ。たとえ知識があったとしても、コンドームやアフターピル、妊娠検査薬は子どもたちにとっては高価なもので、届け方に工夫が必要だ。今回の提携が、少しでも子どもたちに届いてほしい。