キーボードを用いて文字を打ち込み、画面に表示されたカーソルを動かしながらソフトウェアを操作する。パソコンを日常的に使う人なら当たり前のようにこれらの動作を行なっているはずだ。

しかし私たちが意識せず繰り返している動作は、身体に障害を抱える人にとって困難なことも多い。もし目が見えなかったらどうやって目の前のブラウザを閉じるか、あなたはすぐに答えられるだろうか。

“便利”なテクノロジーを誰もが利用できるように

アプリやウェブサービスにおける健常者と障害者のギャップを埋め、「誰もがウェブを利用し、楽しめる」社会をつくるべく、近年Googleはアクセシビリティ向上への取り組みを強化している。

アクセシビリティの向上とは、誰もがウェブサービスを便利に活用できるよう、機能やデザインを拡充していく取り組みを指す。例えば、目が見えない人のために操作の内容を音声でフィードバックする。あるいは耳の聞こえない人のために映像コンテンツに字幕を表示するといった機能が挙げられる。また「ctrl + V」などのショートカットキーを押すのが難しい人のために、「ctrl」や「command」キーなどを押した状態を保つ「固定キー」機能もその一つだ。

こうしたアクセシビリティへの理解を深めるべく、Googleは5月17日の「Global Accessibility Awareness Day」に合わせ、マーケティングや事業開発の学習アプリ『Google Primer App』上で、アクセシビリティの基礎を学べるレッスンを公開した。アクセシビリティとは何か、それらをどうデザインや機能に反映させていくかなど、基礎的な内容が丁寧に解説されている。「どこから始めたらいいかわからない」エンジニアやデザイナー、企業の経営者を対象とした内容になっているという。


(提供されている2つのレッスン)

また同社の「ユーザー補助機能」ページでは、アプリやウェブサービスの開発者だけでなく、それらを利用する企業向けにも、アクセシビリティに関する多様な資料が提供されている。

大手テック企業に広がるアクセシビリティへの意識

最近ではGoogleだけではなく、AppleMicrosoftも、開発者カンファレンスにおいてアクセシビリティへの取り組みを強調している。今後テック業界においてアクセシビリティに対する取り組みは不可欠になっていくだろう。

日本でも「NPO法人アイ・コラボレーション神戸」の主催により、4度目の「アクセシビリティの祭典の日」が開催され、協賛企業にはサイボウズやCyberAgent、Yahoo! Japan、freeeといった名だたるテクノロジー企業が並んだ。

アクセシビリティに無関係な人はいない

「アクセシビリティの向上」によって恩恵を受けるのは身体に障害を持つ人だけではない。音声によってアプリを操作できたり、少ないキーボード操作で特定の作業を行えたりすれば、健常者もより便利にウェブサービスやアプリを使うことができる。

また「アクセシビリティ」には、単に使いやすいウェブページを設計するだけでなく、どのような環境や端末からでもユーザーが問題なくアクセスできるという意味も含まれる。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」をミッションに掲げるGoogleが、アクセシビリティを重視するのは同社の戦略的にも理にかなっているといえるだろう。実際にGoogleは「多様なニーズを考慮せずに製品を作ると、潜在的なユーザーと顧客の大部分を失うのと同じだ」と述べている

Googleを含む大手テック企業の取り組みに追随する企業が増え、誰もが便利なアプリやウェブサービスの恩恵を受けられるようになってほしいと思う。