震災から少し時間が経った。これまでと比べて、被災地への支援も減ったと聞く。
時間が経過したことで、また違った形の支援ができるのではないか、そんな考えがふいに頭をよぎる。
「BuzzCamp」に誘ってもらったのは、ちょうどそんな時期だった。
しおたんこと、塩谷舞さんが運営するメディア「milieu(ミリュー)」に、ある記事が掲載された。
この記事は4万PVを超え、大きな反響を呼んだ。さらに何かできることはないか、そんな話し合いから生まれたのが今回の企画だった。
メディアとして何かを応援する際にできることは記事を出すだけではない。企画をすることで、また違ったアプローチも可能になる。
色々とヒントがもらえそうだ、そう考えて僕は参加を決めた。
「BuzzCamp」に集ったクリエイターたち
40人を超える参加者が「BuzzCamp」に参加。いずれも、インターネットで情報発信を行い、話題になったことがある人たちだ。(参加者リストはこちら)
事前にFacebookグループで交流を行って準備をしつつ、当日からはTwitterでハッシュタグ「#BuzzCamp」を付けた投稿も盛んに行われた。
当日は、仙台駅に集合し、バスで南三陸へ(僕らはレンタカーを借りたのでここは別行動)。
お昼頃には今回の合宿の舞台となる「南三陸ホテル観洋」に到着。お昼ごはんに名物のウニ丼を食べ、タイムラインにはウニの写真が溢れた。
キラキラうに丼!南三陸ー!#Buzzcamp pic.twitter.com/MU4SMH5qM9
— 工藤 瑞穂 (@mimimizuho) July 1, 2017
「語り部バス」で南三陸をめぐる
その後、参加者は「語り部バス」に乗車。語り部バスは、震災を風化させない為にと、南三陸ホテル観洋のスタッフが町をバスで案内する活動だ。
スタッフの方に当時の様子などを教えてもらいながら、被害のあった場所を順番に巡っていった。
行政が決めた避難場所である中学校の校庭が、23メートルの津波に飲み込まれ、多くの人が亡くなった
そしてそこに、仮設住宅が建築された。一度飲み込まれた場所に、仮設住宅が建つ皮肉
いまも時計は、街が停電した時間のまま止まっている#BuzzCamp #かたりべバス
#311 pic.twitter.com/iHIJ9JPxzY— カツセ (@katsuse_w) July 1, 2017
震災からは時間が経過している。だが、町が元通りになるにはまだまだ時間がかかる。実際にバスでめぐることで、そのことが肌で感じられた。
発信することを生業にする人間として、どんなことができるのか。そんな問いかけを頭の中で繰り返しながら、案内をしてもらっていった。
語り部バスに乗り、南三陸の町を回りながら、震災のときのようすを聴いてます。
仮設住宅を久しぶりに見て、支援物資を持って被災地に通ってた頃を思い出しました。あのおばあちゃんたち元気かなあと、懐かしいきもち。#BuzzCamp pic.twitter.com/Vtd6uIsHyA
— 工藤 瑞穂 (@mimimizuho) July 1, 2017
津波の現場へ。ここは行政が避難場所に指定した校庭だったけど、ここにも津波がきて多くの人が流されてしまったそう。手前の仮設はあとから建てられたもの。 行政が指定してようが安全な場所なんかないことを知ってほしいと。#BuzzCamp pic.twitter.com/XPhLqf0Mjj
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
実は震災後にボランティアに来たことがある南三陸町。6年ぶりに来て、奇しくも当時と同じ場所を巡っているような気がする。ランドマークのように建っていたホテル観洋に初めて泊まる。 #BuzzCamp… https://t.co/pqktizbqch
— ころく@ナンバーナインCXO (@coroMonta) July 1, 2017
津波の高さです #BUZZCAMP pic.twitter.com/HNKxyYlTS7
— ぎだ / yoshiyuki yanagida (@gida_gida) July 1, 2017
震災当日、300人以上の方の命を救ったという高野会館に。一般見学はしていないそうなのですが、今日は中を案内してもらっています。従業員の方が帰ろうとする人たちを留まらせ、屋上に避難したことで助かったそうですhttps://t.co/SMpkWRdATG#buzzcamp pic.twitter.com/45kp5XHRrn
— junyamori|inquire (@junyamori) July 1, 2017
「津波てんでんこ」という言葉を広めた津波災害史研究者の山下文男さんの話。
「お互いが信頼し合って逃げる。人間には情があるが、犠牲者を1人でも少なくするには、情を断ち切り、心を鬼にして逃げなければならない」https://t.co/JqxWGfZ7g7#buzzcamp
— junyamori|inquire (@junyamori) July 1, 2017
震災当日の様子を改めて情報発信することは、実際に被害にあった人たちにとって見るのも辛いことだ。実際に、ハッシュタグにはそうした意見も寄せられた。
#BUZZCAMP のツイート、突然見るのは胸が痛い…という方もおられると思います。心の準備がない中で突然TLをお騒がせしてしまい、申し訳ないです。
特定のハッシュタグのみミュートできる機能があるようなので、お試しください。https://t.co/CZ4hOgWIIq
— 塩谷 舞 mai shiotani (@ciotan) July 1, 2017
忘れないように、後に残せるように発信をしたいという気持ちと、忘れようとしている人たちに辛い気持ちを思い起こさせてしまうことは本意ではない気持ち。両方がわき上がる。誰かが辛い思いをした、しているテーマで発信をする際は、こうしたことが常に課題になる。
「語り部バス」に乗り、参加者がそれぞれの思いを胸に抱きながら、「BuzzCamp」は次のプログラムへと進んだ。
情報発信で地域の課題の一部を解決できないか
「震災を経て、情報が重要だということを痛感しました。情報が絶たれたことで不安が高まったのです。
今、地域に必要なことは情報発信なのではないか、そう考えたことから何かできないかと塩谷さんに相談しました。
今回、『BuzzCamp』の取り組みを通じて、地域に直接足を運んでもらうことで、地域の悩ましいことが解決するきっかけになるのではないか、そう考えています」
次のプログラムは、こんな女将さんの言葉から始まった。震災当時のホテルの様子、どんなことが起こり、何を考えながら対応していったのか。女将さんの口から語られた。
南三陸ホテルの女将さんのお話がはじまりました。 #BuzzCamp pic.twitter.com/xo4wCrMRpg
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
南三陸ホテル観洋のスタッフの人たちからは、結びつきの強さを感じた。大変な時期を共に乗り越えてきた経験が、つながりを強くしているのかもしれない。
女将さんからの話の後は、しおたんがなぜ南三陸の記事を書くことになったかについて語った。
震災に対して何もできなくて無力だ、と感じる自分が、ついつい震災について避けてしまったり、目を背けてしまうような気持ちが自分にもあったし、そういう人が声をあげられずにいるのではないかと思い記事を書いた。https://t.co/yL0nfORz04 #buzzcamp
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
その「バズ」はなんのための「バズ」か
地域の現状に触れた後は、「バズ」をテーマにした勉強会が実施された。講座の内容はハッシュタグでもまとまっているので、詳しくはそちらを見てもらったほうがいいかもしれない。ここでは、いくつかのツイートを紹介しながら、内容を伝えようと思う。
佐藤ねじさんめっちゃ素晴らしいこと言ってる…
「自分の本質を理解し伸ばすべき」
ルフィはゴムという本質は変えられない。そこから逃げずに創意工夫すべき。
ルフィは泳ぐ練習なんてしない。— ゆーさく (@yusaku_tokunaga) July 1, 2017
こういうルフィのような能力のメジャーアップデートを自分に置き換えて考えてみる。
1st バズる
2nd 能力の拡張
3rd さらに拡張
修行・投資(スランプ)
4th さらに拡張それぞれの能力のステップをどう刻めるか?#BuzzCamp
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
佐藤ねじさんの話のまとめ
1. バズらせられる人には何か能力が存在する
2. 能力は必ずメジャーアップデートできる
3. 何をメジャーアップデートさせるか? そこに、一番センスが問われる #buzzcamp— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
福岡からきたBBDOの眞鍋さん「はじめしゃちょーにできないこと」のお話がはじまります。 #buzzcamp
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
課題解決できれば、手法はなんでもいい。例えば「雪道コワイ」というビデオをつくった。たった50万円ほどの制作費で、結果話題になり、1000万PVだった。https://t.co/T245Sml2DY
アイデアひとつでバズれる。 #buzzcamp— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
バズの構成要素&条件は詰まるところこの三つ。
1. 見てもらう
2. シェアしてもらう
3. メディアに取り上げてもらう #buzzcamp— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
2、どうしたらシェアしてもらえるか。今度は出口の設計が重要。SNSは発言のツール。何か言いたくなる読後感をつくるのが大事。共感系、クオリティ系、社会系、ツッコミ系、アンサー系、あるある系、情報系、気持ちいい系などの分類がある。 #buzzcamp
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
3。どうしたらメディアに取り上げられるか?メディアはバズをブーストさせるために必要。ただ、そもそもメディアはなぜ存在しているか?を考える必要がある。詰まるところメディアは社会(読者)のために存在している。PR視点が大事。コンテンツの存在意義をつくる。 #buzzcamp
— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
【眞鍋さん式バズメソッド】
1️⃣入り口の設計👉タイトルとサムネイルなど
2️⃣出口の設計👉何か言いたくなる読後感(発見・気づき・納得感 etc.)
3️⃣PR視点👉社会(読者)に有益か?(プレスリリースが命)#BuzzCamp pic.twitter.com/0gI3bWgZms— 氏くん (@ujiqn) July 1, 2017
https://twitter.com/ujiqn/status/881070041705230336
本日最後の講義は @umedatetsuya さん。
「広告ではなく、ニュースをつくる」をモットーにする、梅田さんの企画論。#BuzzCamp pic.twitter.com/6hCPkJ4lly
— カツセ (@katsuse_w) July 1, 2017
そもそもバズってなんだ?400万年前の言語の発明。1455年印刷の発明。1920年、ラジオの発明。さらにインターネット、SNSが生まれた。これまではコンテンツは誰かが発信していたが誰でも発信できるように。つまりバズとは、発信力を持ったコンテンツづくりである。
#buzzcamp— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
バズることから逆算しすぎない。まずは、企業の言いたいこと、ユーザーの見たいことの重なるところが大事。それはつまり、企業のブランドの課題と、みんなの課題を掛け合わせるアイデアを考えること。
#buzzcamp— チャーリー (@tetsurokondoh) July 1, 2017
https://twitter.com/ujiqn/status/881087979732652033
登壇したどの講師も、「なんのために話題にするのか」を繰り返し語っていた。
「南三陸を盛り上げる企画」をテーマにアイデアソン
最後に、講義内容を踏まえて、11チームに別れて「南三陸を盛り上げる企画」を発表するワークショップ。
普段はアウトプットばかりしているメンバーが4時間黙ってただけあって、めっっちゃ企画が多彩。#BuzzCamp pic.twitter.com/v7HQPFyGS8
— カツセ (@katsuse_w) July 1, 2017
地域の現状を知り、「バズ」についてのインプットを終えた後は、アイデアソンの時間に。集まったクリエイターたちが、「どうしたら南三陸まで人が来てくれるのか?」をテーマに、アイデアを出し合った。30分という短い時間ではあるものの、どのグループもアイデアをまとめてきていた。
バズとアイディアについてたくさん講義聞いたあと、チームに分かれてアイディアソン。みんなめっちゃ面白いし、30分くらいで仕上げて来てるからすごい😂#BUZZCAMP pic.twitter.com/7fiNFoMuht
— さえりぐ (@saeligood) July 1, 2017
クリエイターと一言でまとめても、その関心範囲や得意領域は様々だ。「BuzzCamp」は参加者のバックボーンが多様であったことがアイデアの多様性に寄与した。同じ地域課題が与えられたとしても、クリエイターによって発想が変わる。正解はひとつではないと考えて、課題に向き合っていくべきなのだろう。
プレゼン大会、ネタ系と社会問題系が入り乱れてオモロイ #buzzCamp pic.twitter.com/80Fr06LUeo
— 谷口マサト (@chakuriki) July 1, 2017
今回、発表されたアイデアからどれだけが実行されるものになるかはわからない。だが、今回の取り組み自体の可能性は広い。40人を超えるクリエイターやインフルエンサーが集まり、情報発信を行い、その地域の課題について頭をひねったのだから。
このアプローチは、特定の地域しかできないものではない。どこでも可能なアプローチのはずだ。女将としおたんのように、地域の人とクリエイターの間に強いつながりさえあれば。
南三陸や気仙沼、陸前高田、遠方から今日の勉強会に来てくださった皆様。この度は本当にありがとうございました。今後何か宣伝されたい時、このクリエーター達に相談する、という手もありです。みんなとても感謝しています。#buzzcamp
⬇︎https://t.co/8KggvVYHMG— 塩谷 舞 mai shiotani (@ciotan) July 2, 2017
#BuzzCamp ご参加の皆さま、この度は南三陸に足をお運び頂きありがとうございます!皆樣にこの地域の魅力を発信頂きまして心より感謝申し上げます。これからも新しい地域づくりに励んで参りますので、またお会い出来ますよう願っております。キラキラの笑顔で溢れ嬉しいです(*^.^*)✨ pic.twitter.com/dDrlF9NUlQ
— 阿部 憲子 (@rikamama0710) July 2, 2017
こうした活動は、クリエイターたちにとってもつながりを作る良い機会になっていたようだ。
解散した瞬間から喪失感すげーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!! 孤独ーー!!!!!!!!!!!孤独つれーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 楽しかったーーー!!!!!!!!!!!!!!!!! #BuzzCamp
— カツセ (@katsuse_w) July 2, 2017
しおたんの奮闘によって実現した今回の取り組みは、様々な可能性を示してくれた。
個人的には、今回のプログラムの大きなメッセージは「なんのためにバズらせるのか?」に集約されていたように思う。これはクリエイター側もそうだし、地域側にとってもそうだ。
とにかく話題になればいいわけではない。なんのために、どんな話題にされることを狙うのか。情報があふれる時代になってきてるからこそ、より一層発信の根本を見つめ直していかなければならないのだろう。
BuzzCampのことを振り返りながら、帰りの新幹線でそんなことを考えていた。