株式会社コーチェットは、ピアコーチングの導入・定着のためのクラウドツール「PEER+(ピアプラス)」のβ版の提供を開始した。

リーダーの力を引き出す対話型トレーニングプログラム「CoachEd for Leaders」やメンタル面を整えたい経営者のためのカウンセリングサービス「CoachEd mental support」を提供してきたコーチェット。同社の新たなサービスは、経営者やリーダーに向けたものではない。

なぜ、ピアコーチングのためのツールを始めたのだろうか。

横のつながりでコーチングし合う

近年、コーチングに関連するサービスも増加している。コーチングは、対話を通じて相手に気づきを与え、自発的な行動を促し、目標達成・課題解決を支援するコミュニケーションのことを指す。その多くは、コーチングを受ける側にとっては、上司やプロとの関係において実施される。

一方、ピアコーチングとは、組織における縦の関係や、プロフェッショナルとクライアントという上下関係のない、横のつながり同士が相互にコーチングをしあうことを指す。組織のなかにおいてフラットな関係になることが増えている今、横のつながり同士による相互支援は非常に重要だ。

日本においてピアコーチングの情報は少ないが、学術分野では1980年頃から研究が進んでいる。リーダーシップやエンゲージメントを高めるための施策として、改めて海外を中心に注目されていたが、日本においてもリモートワークやハイブリッドワークの浸透と合わせて、表出した課題への解決策として注目を集めているという。

その問題とは、ミドルマネジメント層への負荷のが高まる、コミュニティケーションが縦のレポートラインに集中してしまう、部門やチームを越境してのコミュニティケーションやコラボレーションが起こりにくい、信頼関係を構築するためのコミュニケーションが起こりにくいなど、様々だ。

コーチェット代表取締役CEOの櫻本真理氏は、理論としてピアコーチングの重要性を述べているだけでなく、コーチェット自体がピアコーチングのパワーを実感したという。

櫻本氏「チームで学ぶことの大切さは常々感じていました。ピアコーチング自体は社内で実践してきていて、社内での満足度も高かったんです。その光景を見て、やりたかったことの点と点がつながってきました。

『すべての人が、互いを生かし、育て合う社会をつくる』というミッションの実現に向けて、まずはリーダーからということで、これまでのサービスを提供してきました。ただ、わかってきたのはリーダーだけが頑張ろうとしてもチームは変わらないということ。

受け取る相手がコーチャブル(コーチングを受けられる状態)である必要があります。コーチ側の視点がわかると、コーチングされる際も相手のことがわかるはず。PEER+はそれを体験するためのサービスでもあります」

クラウドツールでピアコーチングを社会に広げる

PEER+は、こうした課題をピアコーチングで解決を目指すのみならず、それをクラウドツールという形式で提供することで、より多くの組織にピアコーチングが浸透することを目指す。

具体的な機能は、初めての人でもコーチングの成功体験を積める「セッションガイド」、隙間時間でコーチングの学びを深める「マイクロラーニング教材」、どんな価値観や強みを持ったメンバーがいるのかがわかる「プロフィール」など。

これらに加えて、AIがタイムラインのファシリテーターを務め、人間以外の存在も介在することで、デジタル空間の心理的安全性をつくろうとしている。筆者は別件でAIが介在することでピアサポートの質を一定以上にすることに成功しているサービスの話を聞いたばかりで、ピアコーチングというアプローチのみならず、サービスの機能自体も注目に値する点だ。

ピアコーチングというテーマを軸に、ラーニングやAIチャット、社内SNSなど、様々な機能の開発が必要になるため、道のりは簡単ではないだろう。だが、PEER+のサービスの核はピアコーチングになり、関連するサービスと連携しながらミッションの実現を目指していくことになりそうだ。

社会にピアコーチングを広げるために

ベータ版の提供に合わせて、利用を希望する企業からの問い合わせはもちろん、病院、学校、保育園などからの問い合わせもあるという。

櫻本氏「コミュニケーションの重要度の高い現場において利用したいというお問い合わせをいただいています。『中学や高校で生徒に使ってもらいたい』というお声もありました。社会の様々な場面で利用してもらえるよう、教材やガイドの仕組みをそれぞれの領域に合わせたものを作っていきたいと考えています」

横のつながりで互いにサービスが磨かれ、利用するチームが社会に増えていくことは、ピアコーチングが社会に広がっていくことにもつながる。コーチェットの『すべての人が、互いを生かし、育て合う社会をつくる』というミッションの実現にも近づいていくだろう。