2022年11月、「障害のある社会をデザインで変える」を掲げる株式会社方角は、聴覚障害者のための求人サービス「Gratuna (グラツナ)」を2023年1月にリリースすることを発表した。同社は、同年12月には聴覚障害者向け求人サイトへの掲載を無料にすると発表している。

Gratunaは、外見から障害の有無がわかりにくく周囲から理解されにくいことが多いと言われる聴覚障害者に焦点をあてるたサービスだ。聴覚障害者の視点から作成した求人サイトや、企業に向けたマッチング前の職場環境づくりサポート、就業後のアフターサポートを提供する。

同サービスを開発する方角は、WEBサイトやアプリのUIUXデザインを手掛けるデザイン会社として2021年に創業。富士通・大日本印刷・JR東日本の3社が合同で開発した、駅の音を視覚化できるデバイス「エキマトペ」のデザインに携わったことがきっかけとなり、多くの聴覚障害者と接点を持ってきたという。Gratunaは同社が開発する初めての自社サービスだ。サービスの背景には、同社が感じた大きな課題をなんとか解決しようという思いがある。

厚生労働省によると、現在、民間企業の半数以上が、障害者の法定雇用率2.3%を下回っているという。また、「障害者の就業状況等に関する調査研究」では、身体的な障害のある人の離職率は、1年間で30%にのぼると報告されている。このように、障害者雇用はそもそも推進が不十分である上に、定着しにくいという課題を抱えている。

こうした課題の背景には、企業側の受け入れ体制が整っていないという問題がある。採用の段階で事前に共有すべき内容や適切な業務内容、就業後の配慮の仕方などがわからないという課題を抱えている企業は少なくない。

方角はこれまで、自社でも聴覚障害者を雇用し、聴覚障害者にも配慮した企業文化の発展に取り組んできた。例えば、全社的にテキストコミュニケーションをメインにする、筆談用の電子ボードを導入するといった取り組みだ。自社での実践から、企業がコミュニケーションの方法を整備すれば、聴覚障害者であっても快適に仕事ができると実感したそうだ。

Gratunaは、方角が自分たちの実践によって得られたノウハウを共有し、多くの企業が聴覚障害者にとって働きやすい環境づくりを実現することをサポートするためのサービスだ。

今回、Gratunaは1月に公開する求人サイトへの掲載を無料にすることで、障害者雇用への最初の1歩のハードルを下げることを目指している。ハードルが高くなる理由は企業ごとに様々だが、金銭的な負担が少ないことは、障害者雇用推進の後押しになりうる。その上で、今後は心理的なハードルをいかに下げられるかが課題になってくるだろう。

Gratunaは現在、求人を掲載する企業を募集している。障害者雇用を検討している企業は、ぜひ検討してみてはいかがだろうか。Gratunaを通して、障害者雇用を積極的に推進する企業が増えることに期待したい。