障害などの個々の違いを活かした環境づくりに取り組む特定非営利活動法人Collableが、インクルーシブデザイン普及の取り組みとして、「Collable認定リードユーザー制度」を立ち上げた

インクルーシブデザインとは、障害のある人など、特別なニーズや違いのある人にデザインの初期段階から参加してもらい、 より包括的なデザインを模索する手法である。ワークショップといった共創の場で、各々の視点を共有して新しい気づきを得ながら、多様な人たちと価値を共有できるアイデアを検討していく。特別なニーズのある人とともに創っていくことを通して、健常者では気づかないような発見が生まれ、既成の概念を超えた新しいプロダクトを生み出す洞察を得ることにもつながると期待されている。

インクルーシブデザイン体験会の様子

一方で、インクルーシブデザインの普及には障壁がある。インクルーシブデザインの実践に欠かせない「リードユーザー」を担える人材を発掘する困難さと、リードユーザーを巻き込める環境の不足だ。

リードユーザーとは、インクルーシブデザインにおいて、場に新たな気づきを与える役割の人を指す。障害のある人など、従来のデザインでは対象とされにくい人にこの役割を担ってもらう。そうすることで、場に問いかけ、メンバーの視点を揺さぶる存在になりうるからだ。リードユーザーには、障害について代弁するのではなく、事象に対してあくまで自分自身がどう感じたのかを共有し、場の目的のために貢献することが求められる。

企業がインクルーシブデザインに取り組もうとする場合、そもそも誰にリードユーザーを担ってもらうのかという問題がある。また、プロジェクトは平日に動くことが多いため、一般企業に勤めている当事者はリードユーザーとして参画するのが難しいこともある。

そこでCollableは、Collable認定リードユーザー制度を立ち上げた。インクルーシブデザインにおいて価値共創に伴走するための姿勢やスキル、考え方を学ぶ「認定リードユーザー育成講座」を修了した人を認定する制度だ。そして認定後は、Collableのパートナーリードユーザーとして様々なプロジェクトに参画することが可能だ。今後、対象となる障害や特性を広げて、多様なリードユーザーとパートナーシップを結んでいく予定だという。

この認定制度は、リードユーザーの活躍を推進するだけでなく、リードユーザーという存在の社会的地位を向上することにもつながる。副業という選択肢もでてきた現代において、リードユーザーが、障害当事者にとって1つの「副業の職種」になることが期待できる。

また、インクルーシブデザインの領域は、まだ知見のあるプレイヤーが少なく、属人的になってしまう側面も大きい。今回の制度でリードユーザーの考え方やスキルセットを言語化することは、これまで蓄積されてきた知見を広く共有していくことにもつながる。Collable認定リードユーザー制度を通じて多くのリードユーザーが生まれ、インクルーシブデザインの場を引っ張っていくことに期待したい。