大阪公立大学とパナソニック コネクト株式会社は、全国の小中学校・高校などの教育現場に対して、「YOSS クラウドサービス」を2022年12月1日から提供開始した。子どもたちの潜在的なSOSを早期にキャッチし、適切な支援につなげることを目指している。

YOSS クラウドサービスは、2018年に大阪公立大学の山野則子教授らが開発したYOSS(Yamano Osaka Screening System)の機能を、パナソニック コネクトがもつノウハウを活かして、クラウド上にシステム構築したものだ。

教員は、生徒一人ひとりの欠席日数・行動・身だしなみ・家庭環境といった情報をスクリーニングシートに点数式で記入する。生徒全員の情報を記入していくことは一定の時間を必要とする作業ではあるが、一人ひとりの生徒に改めて目を配るきっかけにもなっているという。そして記入された内容に基づいて、YOSSが、支援が必要な生徒を抽出し、支援の方向性を自動判定。その結果をもとに学校内で議論を行い、データに基づいて支援内容を決定することができる。

「YOSS クラウドサービス」は、学校組織がチームとしてスピード感をもって子どもの支援を行うことに貢献しうる。クラウド上でデータが管理されることで、教員同士や専門家との情報共有がスムーズになることが期待される。さらに、客観的なデータに基づいてチームで議論する体制がつくられることで、教員が問題を抱え込むのを防ぎ、心理的負担の軽減にもつながるだろう。

実際に、遅刻早退や不登校の児童生徒の減少、諸費滞納が改善したという学校も生まれている。また学校組織として、支援内容の決定スピードが向上しているという。

さらに、データがクラウドに蓄積されるようになったことによって、大学がデータを活用して研究を進めることが可能になり、研究結果を教育現場に還元していくことも期待できる。

子どもに関わる問題は、学校現場や教育委員会、行政だけでは解決が難しい。

現在、不登校の児童生徒は年々増加しており、いじめによる事件や居所不明児童生徒、少年事件など、子どもを取り巻く問題はますます深刻になっている。さらに、コロナ禍以降の不安定な社会情勢を背景に、貧困・孤独・虐待といった問題も増えているという。

一方、そうした子どもの問題に取り組む教員の側にも課題は多い。特に問題なのは、学校組織として、子どもの変化の伝達・共有・支援決定を行う仕組みが十分に整っていない場合が多く、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーといった専門家との連携が不十分になっていることだ。その結果、個々の教員が子どもに関する問題を抱え込んでしまっていることも多く、子どもに早期に適切な支援を行うことが難しい状況になっている。

もちろん、公的機関が体制を整えていくことも必要になるが、民間のプレイヤーと連携していくことも選択肢の1つだ。民間企業が公教育を支援する場合、今回のように、いくつかの自治体での実証を踏まえ、他の自治体へと横展開されていくことも多い。また、公教育の性質上、一度学校に浸透すると継続した取組みにもなりやすいという、民間企業にとってのメリットもあるだろう。

「YOSS クラウドサービス」によって、学校組織がよりチームとして機能し、子どもたちに適切な支援を届けられるようになることに期待したい。