「シェアビレッジ」は、2015年5月、秋田県五城目町の里山にある茅葺古民家を舞台に、都会と田舎のシェアを生み出す“新しい村的コミュニティ”としてスタートした。「村民」と呼ばれる会員が、「年貢」と呼ばれる会費を持ち寄り、古民家の維持管理費を賄うと同時に、第二の田舎として滞在する「里帰」や、地域共同体の営みに参画する「助太刀」、楽しみながらつながるフェスイベント「一揆」といった仕掛けを通じて、共創型コミュニティを運営してきた。

彼らが取り組んできたのは、“村的コミュニティ”の捉え直しだ。5年間の運営を通じて、生産者と消費者、カリスマとフォロワーといった関係性を越えた、皆で持ち寄って育む共創型コミュニティの知見を研究・実践してきた。彼らは、顔の見える小さな共同体、主客一体の関係性、資源を持ち寄り分配する、多様性と変容を受け入れる共“異”体、といったコミュニティのあり方を「ビレッジ / Village」(村)と名づけたという。

ビレッジが目指すのは、近年の価値観であったより大きな共同体への拡大成長の指向ではない。自律分散的に小さなビレッジが次々と生まれ、ゆるやかにつながっていく未来を指向している。自立分散的なコミュニティのあり方は、サステナビリティの観点などから議論されてきたテーマではあるが、昨今の社会システムのゆらぎが顕在化する中で、小さなコミュニティの存在は、より安心安全で、学びや挑戦に溢れた生き方、ひいては文化的に彩りある社会へとつながっていくはずだ。

会社を立ち上げ、資金調達を行ったシェアビレッジは、2020年11月に共創型コミュニティプラットフォーム(β版)をリリース予定だ。共創型コミュニティ=ビレッジの立ち上げとその運営に最適化した、「メンバー募集・管理機能」「サブスクリプション決済機能」「コミュニティウォレット機能」「コミュニティコイン発行機能」「村と村をつなぐ“姉妹村”機能」を中心に、Webサービス・スマートフォンアプリとして実装していくという。

スマートフォンアプリは、コミュニティの形成をテクノロジーの力で推進する「コミュニティテック」の先駆けである株式会社KOUとの連携をもとに開発していく。KOUは、最近は感情を仲間とシェアするツール「emochan」の開発に取り組んでいるが、それより以前はコミュニティコインの開発に取り組んでいた。

いま、共同体の捉え直しはあらゆる場面で進行している。ビレッジはその中でも様々な領域・産業に関わる社会実験になる。地方の遊休資産の活用、共同住宅、シェアオフィス、シェアリゾート、飲食、お寺、一次産業、教育など、社会システムを再構築しながら、地域が抱える課題の解決にもつながりそうだ。