デロイトトーマツが毎年発表している『グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド』は、働き方や組織のあり方について考える際のヒントが散らばっている。
世界119か国の約10,000人の人事部門責任者および管理職等へのアンケートとインタビューを基に人事部門・人材活用の課題とトレンドをまとめたレポートが、今年も発表された。
今年のレポートでは、「ソーシャル・エンタープライズ」と呼ばれる、既存の企業の枠にとらわれず、社会課題解決と自社利益最大化の両立及び、社内外の多様な人材等との関係構築によるエコシステムの形成といった特徴を持った会社像が示されている。
ソーシャル・エンタープライズという言葉は、「基本的に社会的な目的を持ったビジネスで、事業で得られた利益は、株主や事業主の利益を最大限に増やすためではなく、主にその社会的な目的のために、ビジネス或いはコミュニティに再投資される」ものとして認識されてきた。
ソーシャルビジネスを手掛ける、社会的企業という認識をされてきた言葉だが、このレポートの中では捉え方が少し拡張されている。社内外の多様な人材等との関係構築等への言及だ。仕事をする人自身のウェルビーイング、どういう人たちと仕事をするのかといった人間としての活動への注目が見られる。
テクノロジーの発展や社会構造の変化によって、組織も変化を余儀なくされている。機械から生体へと変化を進める組織に、今後どのような変化が生まれるのか。『グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド』には、いくつかのヒントが登場していた。
今回のレポートに登場していたトレンドは以下の10個だ。
- トレンド1: 代替的労働力:現在の主流
- トレンド2: ジョブからスーパージョブへ
- トレンド3: 21世紀のリーダーシップ:伝統と革新の交点
- トレンド4: エンプロイー・エクスペリエンスからヒューマン・エクスペリエンスへ:仕事の意義の回復
- トレンド5: 組織のパフォーマンス:それはチームスポーツだ
- トレンド6: 報酬:新しい期待値に対するギャップを埋める
- トレンド7: 人材へのアクセス: 採用を超えた人材獲得
- トレンド8: 生活・生涯を通じた学習
- トレンド9: タレント・モビリティ:人材獲得は内部から
- トレンド10: HRクラウド:終着点ではなく出発点
現在、注目されている企業はすでにこのトレンドに対応している。同レポートにおいてこうしたトレンドに適応していくため必要なのは「人間中心」の運営だと語られている。人の集合体であるはずの組織は、しばらく人間中心ではなかった。企業は、本質に立ち返って再出発する必要があるのだろう。