1991年、ロンドンで『ビッグイシュー』の第1号が発行された。

「問題」と「出版物の発行」の二つの意味がある「イシュー (issue)」を冠したこの発行物は、チャリティではなく、ホームレスの人に仕事を提供し自立を応援する事業として生まれている。日本には2003年に上陸。今では日本のあちこちで変えるようになった。

チャリティではなく、自立を促す。こうしたアプローチはビッグイシュー以外にも広がっている。

ストックフォトを活用した新たなホームレス支援の仕組み

大阪を拠点としてホームレス支援を行う認定NPO法人Homedoorが、ストックフォトを活用した新たな支援の仕組み「Snapshot taken by Homeless.」を2019年3月22日に開始した

この新しい仕組みは、株式会社電通からの支援を受けてスタートしている。そのきっかけは、2016年に開催されたソーシャルポスター展。同展示では、多様な社会課題とNPOの活動を世の中に伝えるため、電通グループのクリエイター132名が社会貢献の一環として、69のNPOのポスター約220枚を制作。そのうちの団体の1つが、Homedoorだったという。

「Snapshot taken by Homeless.」では、ホームレスの人たちがカメラマンとなり、撮った写真をストックフォト写真として販売する。写真の販売に用いられているのは、「Snapmart」だ。写真の売上をホームレスの人に還元するという。Homedoorは、ホームレスの人にとっては表現が仕事になることで社会復帰の手助けになるように、寄付ではなく購入という方針をとっている。

寄付ではなく、購入としてお金を払う。そのためには贈与ではなく、交換のモードになってもらわなくてはならない。ビッグイシューは、冊子自体に価値が出るように、様々な特集を組み、コンテンツに力を入れていた。

「Snapshot taken by Homeless.」では、「長い間、街・人・時間を見ている感性で切り取っている」という点に価値があると考えているようだ。サイトには、実際に販売されている写真が表示されている。

数年でストックフォトサービスの数も増えた。有料で写真を探すのであれば、選択肢には困らない。だが、逆に言えば写真の点数や料金以外に選ぶ際の決めてに欠けるということでもある。寄付のためのサイトを目指すわけではないものの、競合比較して「Snapshot taken by Homeless.」が選ばれるためには、ホームレス支援になるのは重要なポイントになりそうだ。

もちろん、ストックフォトサイトとしての価値や、販売によりホームレス支援につながることも重要だ。だが、Homedoorが考えているのは、それだけではないようだ。「ホームレス生活を写真を通じて身近に感じてもらい、偏見が少しでも減っていくことで社会にとって良い循環をもたらすことができれば」とリリースでは述べている。

相手を知ると、偏見はなくなる。たしかに、ホームレスの日常を切り取った写真が流通すれば、ホームレスの目線が人々にも伝わり、壁は崩れやすくなるかもしれない。