旅好き、シェアハウス住まい、土日はカフェでときどき仕事をする会社員。平日はインバウンドメディアで編集の仕事をしているため、会社のオフィスで働く日もあれば、各地の観光スポットへ取材にいくことも。そのまま現地のカフェに入って仕事をする場合も多い。

私は今、こんな暮らし方、働き方をしている。

こんな場所にとらわれないスタイルは、比較的珍しい方だと思っていた。けれど、ここ1年で大手企業に勤める友人も気軽にリモートワークが可能になったり、シェアハウス住まいの人によく出会うようになったり。場所、所属するコミュニティ、そして働く場所は変わってきているように思う。

こうしたトレンドを後押しするかのように、様々なサービスが生まれている。月1.5万円から全国のホステルへ泊まり放題のホステルパスや、Co-livingと呼ばれる共同生活とコミュニティを提供する「Common」、それに加え快適なオフィス環境も整えている「Roam」などだ。

また新たに登場したサービスが、私たちを決まった家、決まったオフィスから解き放ってくれるかもしれない。

契約は1か月単位。月額定額で住まい、旅の宿、ワークスペースを提供

「毎月定額で、世界中を旅しながら働こう」のキャッチフレーズと共に現れたHafHは、まさに旅、コミュニティのある住まい、働く場所についての理想を詰め込んだようなサービスだ。

運営元は、長崎に本社をもつ株式会社KabuK Style。外資系投資銀行で勤めていた砂田憲治さんと大手広告代理店出身の大瀬良亮さんが共同代表を務める。

HafHは、世界中に展開予定のHafH物件が毎月定額で住み放題になり、そこには働く場所も用意されている「コワーキングスペース月定額制住居」だという。

旅をしながら働きたい人にとって、賃貸契約にある2年縛りはネックになる。拠点を置いた上で別の場所へ滞在するのも、家賃に加え宿泊費がかさんでしまう。

HafH物件ならば、1か月からの月額契約が可能であるうえに、他の物件へも月額内の金額で宿泊ができる。メインの拠点を持ちながら、住む場所も気軽に変えられることになる。

“第2のふるさと”という意味を持つ「Home away from Home」という言葉のアルファベットの頭文字をとったサブスク型住居サービスは、クラウドファンディングで1,000万以上もの資金を集めた。

HafHには3つの定額メニューがあり、最低1か月から契約が可能。1つ目の「いつもハフ」は一つの拠点に専用ベッドをもち、実際にそこで暮らす人のためのもの。自らの専用ベッド以外も、すべてのHafH物件は予約すれば利用ができる。

2つ目の「ときどきハフ」は、毎月10日以内を条件に空いているベッドに宿泊できる。こちらもすべてのHafH物件が対象となっており、事前に予約すれば宿泊が可能だ。

最後は「はたらくハフ」で、これはHafH物件のコワーキングスペースを自由に利用できる。

クラウドファンディングの資金を用いて長崎にオープンした第一号店は、1階にカフェ、2階にコワーキングスペース、3階がコリビングスペースとなっており、1階は居住者だけでなく地域の人にも開かれている。

住居と一緒にコワーキングスペースが用意されている点で、旅先でも働きやすい環境が整えられている。

特に第一号店では、スノーピークブランドのキャンピング用品を設置。テントの中やキャンプ用チェアに座り仕事が可能。単純な「働く場所」ではなく、普段とは異なる雰囲気の中で仕事ができる工夫がされている。

HafH物件は、国内では福岡にはじまり、大阪、東京、横浜の4か所、海外はマレーシア、ベトナムへと拡大する予定だという。

利用者が行きつくしてしまう前に拠点を広げ、新鮮さを確保し続けるためには、初期投資に必要な十分な資金と回収計画、次の拠点を押さえることが重要になる。

「HafHのある街に行く」という選び方

利用シーンはどんな場面が想定されるだろうか。HafH物件のある土地から旅行先を探すことで、知らない街に出会える点をHafHの魅力の1つとして語られていた。

単純な観光ではなく「働く」視点が入ると、旅先の選び方にも変化がある。WeWorkは23か国280か所以上に拠点をもつコミュニティ型コワーキングスペースで、登録者の中にはWeWorkのある都市を選んで働きながら世界を旅する人もいるという。働く場所が起点となり、旅先を選ぶスタイルだ。

働く場所を基準に選ぶのと同様に、HafH内で形成されたコミュニティや、そこに暮らす人々に会いに行くことも旅先を選ぶ基準になり得そうだ。HafH物件内で生活する人々は、「旅をする暮らし」に興味のある人が集まる。同じ興味をもつ人々のコミュニティを探しに行く場として使うのも面白いだろう。

「旅」というキーワードからも、新しい場所、コミュニティに出合え、行き先が限られないことが、利用者にとっての魅力になる。これらを継続的に提供することが、事業拡大の要素になりうる部分だろう。

理想と現実とのすり合わせが今後の鍵

仕事に集中できるコワーキングスペースがあること、まるでゲストハウスに住んでいるように旅人とも交流をもてること、また宿泊先を気にせず気軽に旅へ出られることも、多くの人が魅力に思うことだろう。その点で、HafHの掲げるサービスは夢を実現へと近づけるものになっている。

けれども「平日会社員の場合は、有効活用できるのだろうか」や「専用ベッドをもって滞在する時、自宅のような居心地のよさは作れるのだろうか」など、懸念点も浮かんだ。

会社員の場合は、平日に「旅をする」ことが難しい。ランサーズのフリーランス実態調査 2018年版によると、フリーランス人口は全体の約17%。そのうち働く場所が自由に選択できそうなフリーワーカーは5%程度。旅をしながら働ける人の割合は、現状まだ少ないように思う。

総務省のデータでは、リモートワークを導入している企業は13.3%と未だ少数。けれど2020年までには30%以上にすべく、「働き方改革」の名のもとに政府では施策を進めている。

こういった動向も考慮すると、HafH物件のコワーキングスぺースに企業のサテライトオフィスを用意したり、連携したスペースを確保するなど、各企業を巻き込むことで利用者層も拡大が図れるかもしれない。

また今後、リモートワークが導入された企業が増えていけば、フリーランスでなくとも「旅をしながら働く」ハードルは下がる。その時にHafHは、使ってみたいサービスの一つになり得るだろう。

理想の生活を実現しようとしているからこそ、今の状態でその暮らしが始まった時に、どのようなギャップが発生するか、不明点や課題は多い。実際にサービスを使いたいと申し込むのは、それら不明点が解消されてからになりそうだ。

新しい場所に行くのはワクワクするし、比較的自由に働ける状況ではある。HafHを含めて移動のハードルを下げるサービスは増えてきている。自分の生活と合いそうなサービスがリリースされれば、積極的に使っていきたいと思う。

旅をしながら働きたい人それぞれの、今の暮らしに合ったサービスが出てくることで、人はより自由に、住む場所も働く場所も選べるようになってくるだろう。

img:PR TIMES