この記事はテクノロジージャーナリストのSimon Owens氏のブログ記事を公式に許可をいただき翻訳したものです。

先日アメリカではついにNetflixの会員数が国内のケーブルテレビ契約数に並んだ。(翻訳者注:PwCがアメリカ人を対象にした調査でNetflixの会員数と国内のケーブルテレビ契約者数の割合はいずれも73%となった)Netflixがまたひとつ大きなマイルストーンを達成した瞬間だった。

インターネットの登場で真っ先に打撃を受けた新聞や音楽業界に比べ、テレビ業界はこれまで比較的安全な立場に置かれていたといえる。テレビのコマーシャルに匹敵するほどの予算をインターネットが手にすることは稀だったからだ。米国の人気ドラマ「ビッグバンセオリー」の視聴者180万人の30秒を独占できるメディアなど他には存在しなかった。

またテレビ放映用のコンテンツをつくるには相当な予算が必要になる。インターネットの仕組みでは1つのエピソードに100万ドルを割くことはできなかった。だからこそケーブルテレビは普及しテレビ広告枠は高い価格を保っていた。

Netflixはそうしたハードルを超えていった。1つのエピソードに100万ドルを支払い、十分な制作リソースを確保する経済的基盤を備えている。同社は昨年オリジナルコンテンツの制作におよそ80億円もの予算を投入した。その結果、ケーブルテレビを解約する行為“cord cutting”が一つの社会現象となったのだった。

Netfilxがケーブルテレビと肩を並べたことにより、すでに伝統的なテレビのビジネスモデルは終焉を迎えつつある。2000年代に音楽と新聞業界が経験した低迷期に向かっているのだ。

しかし皮肉なことにテレビの衰退を招いたNetflixの勃興は、コンテンツにお金を払うミレニアル世代を育てている。現在の新聞業界や音楽業界はコンテンツに出費を惜しまぬミレニアル世代によって息を吹き返しつつあるからだ。

Netflixが登場するまで、インターネットのコンテンツは無料であることが当然だった。Netflixは他のどのメディア会社も参入する前からコンテンツに値付けをし、コンテンツにはお金を払うべき価値があるとユーザーを教育していったのだ。

またケーブルテレビの解約によってユーザーに金銭的な余裕が生まれた側面もある。ケーブルテレビの契約料金は平均で毎月99ドル程度。Netflixの月額料金10ドルと比較してもかなり高額だ。つまり“cord-cutting”を行った人たちは90ドル程度の余裕が生まれたともいえる。この余った予算がWashington PostやNew York Times、Spotifyの購読料に流れた可能性も十分考えられるだろう。

これらの説は明確な統計に基づいているわけではないが、一つの仮説として考えるに値するのではないだろうか。

原文: Is Netflix the reason Millennials are now paying for news content?
翻訳者: 向晴香