夢を持つ人に対して、優しい世の中だなと思う。

私たちの周りには、インターネットを通じた投げ銭サービスやクラウドファンディングなど、一つの夢や目標に向かって頑張っているひとを気軽に応援する仕組みが存在している。お金を理由に夢を諦める時代は、少しずつ終わりを迎えようとしているのではないか。

発展途上国の小規模事業を支援するNPO団体Kiva

アメリカに住む一組の夫妻によって2005年に立ち上がったNPO機関Kivaもその終焉を後押しする団体の一つ。貧困緩和を目的として、発展途上国の小規模ビジネスと融資者の間を執り持ち、CtoCのマイクロファイナンスを行なっている。

マイクロファイナンスと聞けば、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏を思い浮かべる人が多いかもしれない。彼が1983年にバングラデシュで創設したグラミン銀行は、貧困層を対象に低金利の無担保融資を農村部で行うマイクロクレジットの起源でもある。Kivaはグラミン銀行のオンライン版とも言えるだろう。

Kivaの活動は、記事の冒頭で触れた投げ銭サービスやクラウドファンディングと似ている気もするが、Kivaの場合は“寄付”ではなく“融資”であるということが大きな特徴だ。つまり、自分が投資をしたお金は、遅かれ早かれ手元に戻ってくる。

途上発展国に住む事業主への融資と聞くと、貸したお金が戻ってこないのではないかと危惧するひともいるかもしれない。Kivaの公式サイトによれば、融資の返済率は97%(2018年1月時点)と高い数字を打ち出している。

夢や目標を掲げ、働く意欲は十分にあるのに資本がないという理由で、貧困から抜け出せないひとはたくさんいる。Kivaはそこに救済の余地を見出し、2005年の設立以降、多くの途上国民の夢を叶える手助けをしてきた。

オハイオ州コロンバスの事例にみる、Kivaの活動の広がり

最近では、発展途上国で事業を営む人だけでなく、他国で新たなビジネスを始めようとする移民の力にもなっているそうだ。ここで、The Columbus Dispatchにより報じられたKivaの活動事例を一つ紹介したい。

ブータン系ネパール人の男性Phuyelは、2010年に渡米し、オハイオ州コロンバスで友人とスポーツバーをオープンさせた。事業を始めるにあたり、彼に救いの手を差し伸べたのはKiva ColumbusのプロジェクトリーダーであるVailという女性だった。

Phuyelは以前、別の団体からお金を借りていたこともあったが、同時に高い利子を払わされていたため、利子ゼロで融資を受けられるKivaに強く心惹かれたそう。彼はKivaを通じて7,000ドル(約76万円)の融資を受け、お店のフロア改修とテラス席の屋根の設営を行なった。

Kivaには、様々な借り手や小規模ビジネスが存在するが、Vailはなかでも移民や難民によってスタートした事業に強い想いを抱いていると言う。

移民や難民は、様々な困難を抱えながら生きてきた。自分にできることが目の前にたくさんあるのに、法的地位によってそれを実行する機会が与えられないのは苛だたしいことだ。

事実、自分の手でビジネスを始めたくても銀行や財団からお金を借りることができず、親族から資金をかき集めるほかないブータン系ネパール人が大勢いると、Phuyelは述べた。

Kivaでは信用査定のために、最初の融資資金を、借り手側の親族や友人のみからサイト上で集めるという方法もとっている。期日までに十分な人数から融資を受けられた者は、融資を募る範囲を広げられるという仕組みだ。財政面ではなく、人としての信用を尊重しているのがわかる。

2016年の設立以降、Kiva Columbusを通じて満額の融資資金を得られたものは、現時点で36名もいるそうだ。

夢を持つ人は、いつだってまぶしい。自分の地位や財政的な困難をもろともせず、大きな目標に向かって走ることは決して簡単なことではないだろう。けれど、その背中を後押ししてくれる人たちが世界にはたくさんいるということを、Kivaは証明し続けている。