LGBTについての話題を目にすることが増えた。企業も、LGBTフレンドリーに向けた動きを始めている。

少しずつ変わり始めている中で、課題として耳にすることがある。

「変化は都市からが中心になりがち」というものだ。地方ではまだまだ偏見は存在しているし、思春期の若者であればなおさらだ。

「世の中と“LGBT”のグッとくる接点をもっと」というコンセプトで活動している団体『やる気あり美』代表の太田尚樹さんは、ずっとこの課題をなんとかしたいと語っていた。

『やる気あり美』代表の太田尚樹さん、大阪生まれ、28歳のゲイ

彼らが新たに始めた挑戦は、この課題に対してアプローチする。

「日本一LGBTフレンドリー」を目指した農家をプロデュース

「やる気あり美」が新たな“グッとくる接点”づくりの場として選んだのは、茨城県笠間市。この地域で、「日本一LGBTフレンドリー」を目指した農家をプロデュースし、とれたお米を皆さんに届けるべく、クラウドファンディングを始めた

今回の農家づくりプロジェクトのビジョンを伝えて、イベント参加者を募集したところ応募者が殺到。結果、約60名のいろんなセクシュアリティの人々と苗を植えた。

彼らの場作りでは、隣の人がLGBTなのかどうなのかは分からない。ただ、そこに集まっている人たちはセクシュアリティの違いを気にしない人たちだ。

最初は少し不安そうだった参加者も、田んぼという空間と苗植えという作業のおかげで、自然と打ち解けていったという。田んぼが持つコミュニティづくりの力はすごい。

地域に、セクシュアリティを気にしない場が生まれることで、その地域に暮らすセクシュアルマイノリティの人にとっても、居場所となるはずだ。この居場所を、彼らは育んでいこうとしている。

この農家づくりプロジェクトを最初に始めたのは、トランスジェンダーのトータルサポートを行う『G-pit net works』代表の井上健斗さん。彼が社内の数名のメンバーと始めていたところに、「やる気あり美」がジョインした。

左が、農家の主になる井上さん。井上さんは女性として生まれ、今は戸籍変更も完了。男性として生きているという。

農家づくりを計画していた「やる気あり美」と、コミュニケーションに困っていた井上さんが出会い、一緒にプロジェクトを進めていくことになったという。

今回の挑戦について、太田さんはこう語る。

太田さん「僕たちはこれまでwebコンテンツメインの発信を行ってきましたが、これからはコミュニケーション領域に課題を持つLGBT関連の団体や取り組みの、コミュニケーションデザインを行うプロデュース事業も頑張っていきたいと思います。『伝え方が分からない…』と相談されることが増えたことがきっかけです。その第一歩として、この農家プロジェクトに挑むと決めました」

「担い手の減る一次産業に人手を呼びつつ、まだまだ少ないLGBTが働きやすい場所を作っていきたい」、そう太田さんは語る。

クラウドファンディングで集めた資金は、農家プロジェクト広報活動のためのWEBサイトやパッケージ等のデザイン製作に充てられる。彼らの活動を応援したいという方は、クラウドファンディングのサイトをチェックしてみてほしい。