ソーシャルアパートメントはミレニアル世代向けに、ラウンジのある生活を提供し、居住者同士の交流を生み出してきた。ソーシャルアパートメントに暮らす住民同士もつながり、そこからソーシャルネットワークが広がっていった。
「アーバンネイバーフッド」という概念がある。田舎ほど同質性はなく、かといって都市ほど希薄でもない。そのちょうど良さを追求しようとする姿勢で、ポートランド等で見られる考え方だ。ソーシャルアパートメントの目指す姿も、これに近いのかもしれない。
ソーシャルアパートメントを運営するグローバルエージェンツは、4年前からソーシャルアパートメント以外にも事業範囲を広げ、ホステルの雰囲気を体験できるホテルや、築30年のビジネスホテルをリブランディングしたホテル、ロッジの世界観を取り入れたアーバンアウトドア風なホテルを札幌に立ち上げた。共通しているのは、「共有部」に力を入れている点だ。
「ライフスタイル分野のトレンドをリードしていくような役割を果たしていきたい」、そうグローバルエージェンツ代表の山崎剛氏は語る。彼らが次に始めたのは、コワーキングスペースを併設するホテル「The Millennials」だ。
これまでのグローバルエージェンツの事業と同じく主要なターゲットはミレニアル世代。山崎氏は、この世代を狙う上で3つのキーワードを挙げた。
- 合理性
- 自由
- 多様性
合理性を実現するために導入されたのが、多機能のスマートポッドだ。カプセルホテルをアップデートしたような印象を受ける宿泊施設は、デザインと利便性を追求したつくりになっている。宿泊客に渡されるスマートフォンのアプリから部屋の明かりや空調、目覚まし、ベッドの角度などを操作することができる。
主には一泊の利用を想定しているそうだが、寝る際に使用するのであれば快適に使うことができそうだ。男性用の階、女性用の階に加えて、オールジェンダー向けの階も用意されているという。
そして、同施設にて自由や多様性を実現するための機能が、共有部としても活用されるコワーキングスペース「andwork京都」だ。
ロビーの階をコワーキングスペースとしても活用可能にすることで、旅先で旅行者やコワーキングユーザーとの出会いを創出しようと試みる。
ソーシャルアパートメント、ホテル、ダイニング、コインランドリーと様々な空間を手がけてきたグローバルエージェンツだが、ワークプレイス事業は初。
「andwork京都」がどうなっていくかこれからが楽しみだが、ホテルのロビー・ラウンジのすぐ隣がオフィスとして使えるのは興味深い。ずっと共有部をデザインしてきたグローバルエージェンツの腕の見せ所だ。
さらに、コワーキングスペースの利用者は、ホテルの設備・サービスが利用可能となっているためユーザーの体験価値も高く、ホテルに併設することで通常であれば、コストがかけにくい空間にもコストを割くことができているという。
交流を前提とするため、「ザ・ミレニアルズ」のために作られたアメニティも、ゆったりと着れるパジャマではあるものの、人前に出やすいデザインとなっている。コワーキングユーザーと宿泊客の交流がどのように生まれるのか、オープン後に期待したい。
グローバルエージェンツは、「ザ・ミレニアルズ」を2号店を渋谷に2018年1月開業予定。今後3年間で、10施設を国内外に開発する予定だという。