日々、東京に新しい場が生まれている。飲食店、ホテル、複合商業施設などその形態は様々。

東京・八重洲にも新たな空間が生まれ、少しずつ人々の注目を集め始めている。全国各地の人や企業、アイデア、情報をつなぎ合せて新しい価値を共創するオープンイノベーション拠点「Diagonal Run Tokyo(ダイアゴナル ラン トウキョウ)」だ。

八重洲にある福岡ビル。その4階に同スペースはある。

入り口には大きく”Diagonal Run Tokyo”というロゴが床に描かれている。

スペース内にはバーカウンターも

リラックスできそうなソファ席や、カフェのように何人かで座るテーブル席も用意されている。空間の中には、集中して作業するためのテーブル席やブース席なども用意されていた。

スノーピークのテントも置かれていた

広々したスペースではイベントが開催される予定だ

利用料は500円/時間、ワンデーパスで2500円、マンスリーパスで15000円となっている。エリアを考えれば利用料は安い。

地域と東京、スタートアップと大企業をつないでいく

東京駅から徒歩圏内のスペースに、これだけの広い空間を生み出したのは、福岡銀行を中心とする、ふくおかフィナンシャルグループだ。

ふくおかフィナンシャルグループは、新しい動きを生み出そうとiBankマーケティングという会社を立ち上げるなど、スタートアップ的な動きを始めていた。加えて、外部の企業との出会いや、「X-Tech Innovation」というスタートアップイベントを開催するなど、コラボレーションや場を作る動きをしてきた。

iBankマーケティング代表取締役永吉健一氏と、福永諒氏は歴史ある金融機関の中で新しい動きを生み出そうと試行錯誤を重ねていたという。そこに舞い込んだのが、東京にある自社ビルの空きスペースの話だった。同エリアは再開発の計画が進んでおり、この先どうなるかは未定。そのため、外部に貸し出すのには難しい空間を活用できないか、そう永吉氏は考えた。

再開発までの期間限定、遊休不動産活用としてスタートしたダイアゴナルラン東京には、2つのミッションがある。ひとつは、スタートアップと大企業をつなぐこと。もうひとつは、東京と地方をつなげることだ。こうしたダイアゴナルラン東京の狙いは、場の運営に携わっているメンバーの顔ぶれからも浮かび上がる。

初期の会員としてスタートアップが複数社名を連ねている一方、場のプロデュースは「福岡移住計画」等のプロジェクトをデザインしている須賀大介氏が担当している。地方と東京、大企業とスタートアップ。どちらかを結びつけようとする動きはこれまでにも多く存在していたが、両方を同時に実現しようとするスペースは数が少ない。

左:永吉健一氏
右:須賀大介氏

こうしたユニークな動きは、スペースの名前にも現れている(ちょっと言いにくいけれど)。

永吉氏「『ダイアゴナル ラン』とは、 サッカーにおける攻撃方法のひとつです。フィールドを対角線上に横切り、水平や垂直の相手のマークを外し、攻撃のための新たなスペースを生み出す動きのこと。 このスペースでは、様々な要素においてタテ・ヨコの動きのみならず、新しい時代を動かすナナメなビジネスアイデアが生まれるようにしていきたいと思います」

「移住計画など各地で広がっているローカルの動きとも連携させていきたいですね」そう須賀氏は語る。各地に散らばるローカルな動きも、縦横無尽につなげていこうとしている。地方の動きとも関連するのが、移住や働き方だ。

同スペースにコミュニティマネージャーとして関わる山田聖裕氏は、「このスペースが副業のきっかけや、地方に行くきっかけになれば」と語る。地方に移住するにしても、仕事がなければならない。ダイアゴナルラン東京では、東京駅付近で働くビジネスパーソンが、平日夜や週末の時間を使って地方の仕事をする、といったことも考えられる。

左:福永諒氏
右:山田聖裕氏

山田氏は普段、「NewsPicks」や「SPEEDA」を開発するユーザベースではたらきながら、複業的に同スペースの運営に関わる。さらに、「リトルフクオカ」という福岡に縁のある人々が集うイベントを主宰してきた人物だ。場を運営するオーナーでもなく、完全に独立しているわけでもない人物がスペースの運営に関わっていることも、このスペースの面白さだ。

これから先、ダイアゴナルラン東京は様々なイベントを行い、コラボレーションを行っていく方針だという。これまでなかなか出会うことがなかった人々同士が集まる場を創出していくことができれば、多様性も生まれ、必然的に新しいことも生まれていくだろう。

ダイアゴナルラン東京は、入居したい人やイベントに使いたい人、コラボレーションしたい人たちを募集しているという。何か、新しいことに挑戦してみたい人は、足を運んでみてはいかがだろうか。