2016年以降、ロート製薬の副業解禁や、カルビーが上限なしの在宅勤務を解禁するなど、大手企業の「働き方改革」の動きが進んでいる。

IT企業では、ヤフーの「週休3日制」導入や、リクルートホールディングスが全社員を対象にリモートワークを導入する取り組みが行われてきた。

2017年4月6日、三井不動産はこうした大手企業の「働き方改革」をサポートする多拠点型シェアオフィス「WORKSTYLING」を発表した。

WORKSTYLINGは、「企業と社員が共に創る働き方」をテーマに、東京都心を中心に全10拠点を展開するシェアオフィスだ。

企業のみが入居可能で、入居すると企業の社員はどの拠点にも乗り入れができる。企業に勤める人材の多様な働き方をサポートするのが狙いだ。

なぜ法人企業向けのシェアオフィスが求められているのか

WORKSTYLINGの発表日には、拠点のひとつである「WORKSTYLING汐留」にて記者会見が行われた。本プロジェクトを立ち上げた背景にある課題意識について、宮田 歩氏(三井不動産 執行役員 ビルディング本部副本部長)は次のようにコメントした。

2017年は「働き方改革」元年と言われています。今、多くの企業が「働き方改革」に取り組んでいる背景にあるのは、少子高齢化による労働人口の減少という社会問題です。

労働人口が減るならば、一人あたりの生産性向上や、多様な人材の活用が求められます。大手企業の「働き方改革」にまつわる制度が整いつつある中で、三井不動産として「働く環境」をサポートしていきます。

WORKSTYLING汐留は日本料亭があった場所につくった。会議室などに日本料亭の部屋をそのまま活用している

シェアオフィス内には、集中して作業するための個人スペースや、他の入居企業の社員と交流ができるオープンスペースが設置。TV会議システム付きの会議室も完備されている。

「近場のお気に入りの飲食店」を共有する掲示板を設置し、入居企業の社員同士の交流を促す

ロック機能付きロッカーや、コーヒーやお菓子が提供されるドリンク&リフレッシュメントブースなどのファシリティも充実している。

企業のシェアオフィス活用における課題

スタートアップやフリーランス向けのコワーキングスペースが数多く存在する一方で、大手企業に対して「働く環境」を提供する事業者はなぜ少なかったのか。その理由を山村 知秀氏(三井不動産 ビルディング本部 法人営業統括二部長)は次のように指摘した。

企業のシェアオフィス活用の障壁になっているのが、セキュリティの問題です。契約企業の社員のみが入居できる会員制度や、有人受付にてシェアオフィス利用者の入退室管理を行うことで、高いレベルのセキュリティを実現しています。

セキュリティ以外にも、大手企業のシェアオフィス活用の障壁として挙げられるのが、リモートワーカーの勤怠管理だ。WORKSTYINGでは、シェアオフィスの利用履歴をリアルタイムで閲覧可能にすることで、勤務状況の可視化を目指す。

また、10分単位で利用料が課金される従量課金制を導入することで、企業のコスト負担をなるべく低く抑える予定だ。

「多拠点型」を活かしたWORKSTYLINGの利用シーン

企業のWORKSTYLINGの活用方法として、次のような利用シーンが紹介された。

  • 外回り社員が空き時間に会社に戻らず、近くのWORKSTYLING拠点を活用
  • 社外での打ち合わせの際にWORKSTYLINGの会議室を利用
  • 集中力が求められるクリエイティブな作業を行う時にWORKSTYLINGの個人作業スペースを利用
  • 介護や育児中に、自宅近くのWORKSTYLINGに出勤して仕事をする
  • 通勤ラッシュを避けるために朝は自宅近くのWORKSTYLINGで仕事をして、午後から会社に出勤する
  • 出張時にその地域のWORKSTYLINGを利用

現在は、味の素、コクヨ、資生堂ジャパンといった企業がWORKSTYLINGプロジェクトに参加。拠点数も現在の10拠点から、2017年度中に日本全国で30拠点を目指す。

WORKSTYLINGのような法人向けシェアオフィスの登場で、スタートアップやフリーランスだけではなく、会社員の働き方も多様化していくことだろう。