2017年3月23〜25日に秋田県五城目町で開催された「ナナメ上行く冒険世界キャンプ」の模様をレポートしています。
2日目は早朝から雪が降って、あたり一面が雪景色に!東京からきた子どもたちはこんなに雪が積もっているのは新鮮だったようで、外に出た瞬間大はしゃぎ。
2日目の朝は初日とは場所を変えて、里山の森の中につくられた「環境と文化のむら」へ。ここは里山での自然とのふれあいや自然のもたらす恵みにより築かれてきた文化について、体験出来る場所。なんと東京ドームで11個分もの広さがあるんだとか!
森に併設された「自然ふれあいセンター」のセンター長の渡部さんさんから、森や施設についての説明のあと、自然のいろんなものをつかった工作の時間がスタート!ひとり1個、ホオノキの丸い板が配られます。紙やすりで板を削り、マジックで好きな絵を描いたりグルーガンで木の実をくっつけたりして、オリジナルのアイテムを作ります。
似顔絵がメインのボード、木の実と枯葉でかわいい模様になったボードなど、子どもたちの個性が表れた様々なボードが完成しました!
工作の後は外に出て、森に囲まれた丘で雪合戦をしたり、雪だるまをつくったり。都会ではなかなか経験できない雪は、子どもたちにとって絶好の遊び道具となりました。
光と風と緑の学び舎、五城目第一中学校
続いて訪れたのは、平成21年に改築された五城目町立五城目第一中学校。入り口のエントランスホールには美しい組小細工の見事な引き戸が目をひきます。この組子は、秋田公立美術短期大学(現:秋田公立美術大学)の学生さんがデザインし、町の職人さんたちによって作成されたそうです。
「森山仰ぐ 光と風と緑の学び舎」をコンセプトとしてつくられた校舎の中には、地場産木材が使われており、広々とした廊下や体育館、木の香り漂う教室と手作りの机が印象的。
一通り校舎内を見学してから、なぜ秋田県の子どもたちは学力が高いと言われているのか、五城目町教育委員会学校教育課の川村さんがその秘密をお話してくださいました!
①秋田型の探究学習
先生と子どもたちは授業の最初に話し合い、学習の目標を決めます。そして授業の最後には、もう一度話し合い互いの理解を深める時間を持ちます。学級全体で課題を解決する、「探究型学習」が行われているのです。
②のびのびと学べる少人数学級生
秋田県の多くの学校では、子どもたちが自らグループで課題を設定し、解決のアイデアを話し合う学習活動が行われています。そのため、1つの授業を複数の先生が担当するチームティーチングが行われているのです。また、授業の中に将来なりたい職業や夢について考える時間も組まれています。
③みんながのびのびと学べる校舎
こだわりを持って作られた校舎はもちろんのこと、地元生産者グループとの連携を通じて野菜を中心に供給品目が増え、地場産物の利用比率がカロリーベースで80%を超えている学校給食も特徴のひとつ。給食の献立は普段家庭で食べてほしい食事の見本になるよう「日本型食生活の定着」を進めています。
昼食では、紹介された日本一の給食を体験!地元産の野菜をつかって作られた給食は、栄養バランスもしっかり考えられていて、優しいお味。子どもたちも大満足でした。
特別探究プロジェクト!キッズクリエイティブマーケット
2日目午後のプログラムは、特別探究プロジェクト「キッズクリエイティブマーケット」!
先生を務めるのは、大阪から五城目町に移住してきたNPO法人cobonの松浦真さん。松浦さんは、これまでにも小学生を中心としたまちづくり体験型の教育プログラムを実施してきた人物です。
このプログラムでは、子どもたちがチームを組み、目標を決めて商品開発から販売までを実践します。舞台となるのは。520年以上続く五城目の朝市。以前開催されたキッズクリエイティブマーケットでは、子どもたちがお母さんのためにマッサージ屋さんやミサンガを販売して2,520円の売上があったそう!
今回のキャンプでは、2日目の午後の時間にどんな商品を販売するかを考え、最終日の朝市で自分たちが考えたアイデアで出店します!
まず、一言もしゃべらず生年月日順に並ぶアイスブレイクから始まり、4人組のチームに分かれます。そしてこれからの時間を、いい時間にするためのルールとして5つのことが共有されました。
①「きく」:人の話は終わりまでしっかり聞く。
②「はなす」:自分の思いを言葉で話そう、うまく話せなかったら書いて伝えよう。
③「ひていしない」:友達のアイデアは否定せず、たいせつにしよう
④「考える」:自分の頭で考えよう。
⑤「まつ」:会話のない時間も大事にしよう。
今回のキッズクリエイティブマーケットのキーワードは「ギフト」。五城目にいるひとたちに喜んでもらえる贈り物を考えることが目標です。
ユーザーのニーズを知るためのインタビューに挑戦
アイデアをつくるにはまず、ユーザーのことを理解するために、じっくり話を聞かなければなりません。今回のターゲットユーザーは、五城目町民である丑田さん!
一児のパパである丑田さんが五城目でどんな毎日を過ごしているかを知るために、子どもたちが質問して、その結果を模造紙にまとめながら、丑田さんのタイムスケジュールを作成します。
子ども:「0時に何してる?」
丑田さん:「そろそろ寝ようかなと思って、読んでた漫画を片付ける時間かな」
松浦さん:「何の漫画か聞いたほうがいいんじゃない?」
子ども:「何の漫画?」
丑田さん:「ブルージャイアントっていうジャズの漫画」
松浦さんからのもっと具体的に相手を知る質問をするよう促す声がけによって、何時に何をしているかだけを聞いていた子どもたちが、より具体的な質問を投げかけるようになっていきました。
「朝の7時に起きて、9時に子どもを保育園に送りに行き、朝ごはんにはたまごかけご飯を食べる。」
ひととおり、丑田さんの一日のスケジュールが埋まったあとは、もう一歩踏み込んだ質問をする時間です。
松浦さん:「丑田さんがどんなときに何に困っているか、何があったら嬉しいかを聞いていきましょう。丑田さんがほしいものだったら、他の人にも役に立つものだから、誰かに買ってもらえるかもしれません」
インタビューで困っていることや嬉しいことを聞いていくのは、自分たちがつくりたいものをつくるのではなく、あくまでもユーザーの生活のなかでの困りごとを解決したり、生活をよりよいものにすることが目的です。
子ども:「出張に行ったりする?」
丑田:「するよ」
子ども:「ホテルに泊まるの?そのときなんて思ってる?」
丑田:「出張でホテルに泊まったときは、早く五城目の家に帰りたいなって思うかなあ」
子ども:「何で帰りたいの?」
丑田:「ホテルのベッドは寝にくくて疲れるから、家のベッドがいいなあって思うから」
質問を繰り返すなかで、丑田さんは仕事で出張の際は疲れを感じていること、コーヒーを淹れるのが好きだということ、子どもとは家の中ではオセロで遊び、家の外だと散歩に行っていることなどがわかってきました!
五城目にあるものを活かして商品をつくろう!
ユーザーインタビューが終わり、今度はアイデアを作る時間です。
五城目にある使えそうなものを書き出していきます!たとえば会場の馬場目ベース、五城目の自然である雪や木、スタッフの持ち物であるスマートフォンなど。55以上もアイテムのアイデアが出たチームもありました!
次は、五城目にあるものを使って、朝市でできそうなことをかたちにしていきます。
めあて(もくてき):うっしーさんの○○をごじょうめの□□をつかってたのしく(うれしく)したい!
ひとりひとりがこのフォーマットに当てはめて、アイデアを考えてチームごとに発表します。
「うっしーがパソコンをしていると肩がこるのを、五城目の木の枝や木の実、石をつかって肩たたきをつくってたのしくしてあげたい」
「うっしーがホテルにいると帰りたくなる気持ちを癒すために、五城目の紙や糸を使っていやされるアクセサリーを売りたい」
「うっしーは子どもと遊ぶのが好きなので、秋田は寒いし暖かくなるように足湯をやりたい」
それぞれの視点が生かされたアイデアがたくさん生まれました!チームでどれを実現するかをひとつ選び、いよいよ商品づくりに入ります。
毛糸、割り箸、布、紙コップなど、かき集めてきた様々な素材をつかって、子どもたちの商品づくりが始まりました!
あわせて、お店での売り方も考えます。価格はいくらにしたら買ってもらえるか。2つ買ってくれたら割引になっていたら売れやすいかもしれない、お客さんに希望を聞いてからつくりはじめたらよいのではないか…子どもたちが頭をひねります。
鬼ごっこをしてはしゃいでいた休み時間とは全く違って、子どもたちは真剣な表情で作業に集中していました。
特に朝市は屋外で開催されるため、まだ気温が低い3月はお客さんに立ち止まってもらうのが難しそう。売る環境も考慮して、チームごとに売り方の工夫を考えます。
古民家のかまどでの炊飯に挑戦!
夕ご飯は、子どもたちみんなでカレーづくりに挑戦!2チームに分かれて、ごはんとカレー・サラダをつくります。
お米はなんと、築130年の古民家を改装した宿泊施設「シェアビレッジ町村」のかまどをつかって炊きました。いつもは炊飯器でお米を炊いているので、初めて目にするかまどに子どもたちは興味津々。
もう1チームも、大人と協力してカレーとサラダをつくりました!
完成後はみんなで並んで「いただきます!」。
終了後は、またチームに分かれて各々熱心に商品づくりを続ける子どもたち。いよいよ明日の朝は本番です!
編集:モリジュンヤ
執筆:工藤瑞穂