2017年3月23〜25日に秋田県五城目町で開催された「ナナメ上行く冒険世界キャンプ」の模様をレポートしています。


最終日の朝8時半、五城目町の朝市会場に集合!初日と2日目は曇天だった天候も、晴天に!気持ちの良い空の下、開店準備がスタートしました。

テントと机を組みたて、チームごとに商品を並べていきます。どのチームも限られた材料でオリジナリティ溢れる商品をしっかり完成させています!

値段が書いた看板もセットして、9時にはお店がスタート!1時間半という短い時間に、朝市に来たお客さんに実際に商品を売ってみます。

冬の土曜日なので客足はまばらですが、どのチームも工夫しながら商品を販売しました。

◉1チームめ
・足湯とマッサージコーナー
・「シカの模型」販売

このチームは丑田さんが疲れが溜まってるというので、足湯とマッサージで癒してあげるというアイデア!桶に熱いお湯を入れて、足湯中に肩たたきや足のマッサージをします。うっしーも気持ちよさそう。5分で50円という激安の値段設定もあり、お客さんが絶えず訪れる人気コーナーとなりました。

シカの模型は、つくりたいからつくったのだそうです(笑)。マッサージをすると50円引きというお得なシステムをつくったものの、なかなか売り上げが伸びず、残り15分で「今なら半額です!」と叩き売りを始めます。

収益は1,550円でした!

◉2チームめ
・アクセサリー 
・肩たたき棒

「出張のとき早く帰りたくなる」という丑田さんの困りごとを解消するため、五城目にある素材をつかって癒されるアクセサリーをつくりました。50円から150円の価格帯で、毛糸や布を使ったミサンガやブレスレット、ネックレスなどを販売。

特に人気だった商品は肩たたき棒!持ち手に木の棒、布のなかには木を入れてリボンで結んだものです。店だけでは売れないので、積極的に朝市に来ているお客さんのところに足を運んでアピールしに行っていました!

収益は1,740円でした!

◉3チームめ
・枕、クッション
・モビール


丑田さんの「出張のとき、ホテルのベッドでは寝にくい」という悩みを解消するために、枕とクッションを作製!昨日、試作品をつくり、大人に意見を聞きながら何度かつくりなおしていたこのチーム。

「中身が柔らかいと逆に疲れて寝れないって言われたから、プチプチを使った」のだそう。他にも枕と同じデザインで小さなサイズのものをつなげて、モビールも販売しました。

始まった途端、積極的に朝市を歩き回って宣伝していただけあって、枕の売れ行きが好調で開始30分で2000円もの売り上げが。250円という強気の価格設定も功を奏したようです。

最終的はなんと収益は5450円!これはキッズクリエイティブマーケット史上1番の売り上げだそうです。

3チームとも最初は戸惑いながらの販売でしたが、最後の30分には「いらっしゃいませー!」「今お得ですよー!」とみんなで大声を出して宣伝に励んでいました。

参加している子どもの親御さんからも、「性格的に普段はおとなしい子なんですが、みんなの楽しい雰囲気のおかげで、元気に声を出してて嬉しいですね」との声が。

一人ではなくみんなでひとつの目標に向かっているからこそ、頑張れる。「自分のつくった商品が売れた」という喜びが、さらに励みになる。そんな好循環が生まれていました。

お金を誰のためにどう使うのかまで考える

10時30分に朝市は終了。片付けをして向かった先は蔵をリノベーションしてつくられた絵本屋さん「ものかたり」へ。畳の空間に子どもたちが全員集合し、最後の振り返りの時間です。


松浦さん:今回みんなが商品をつくれたのも、うっしーがいたから。インタビューで困っていることや必要としていることを聞けたからこそ、商品が生まれましたよね。

今回のプログラムで子どもたちに経験してほしかったのは、自分たちがつくりたいものをつくるのではなく、ニーズを汲み取り、ユーザーに喜ばれるものを考えるということ。

今ある職業から選ぶだけでなく、自ら考えて「仕事をつくる」こともできるという選択肢を知ってもらうことでもあります。

このプログラムはけっして自分たちの力でお金を稼ぐだけで終わりではなく、その先の「お金を誰のためにどう使うのか」を考えることも含まれています。

松浦さん:「みんなは会社つくったことないよね?会社の利益は、株の割合で分けたりします。今回は一人ずつがみんなで頑張ったので、お金を分けたいと思います。

お金を稼ぐのは嬉しいけど、お金を稼ぐために仕事をしているわけではありません。大事なことなんだけどそのために生きているわけではありません。

お金が循環したらみんな幸せになります。自分が大事だなと思うもの、自分が大事なひとのためにお金を使ってみてください。今回みんながここに来れたのも、お父さんやお母さんがお金をつかってくれたから。」

子どもたちの感想のなかには「商品を売るのは大変なことなんだとわかった」「自分は何ができないのかを知ることができた」という感想もありました。

お金を稼ぐことの難しさを知ることによって、自分のためにお金をつかってくれる人のありがたみや自身のお金の使い方を考えるきっかけになったのではないでしょうか。

松浦さん:「お金は誰かのために使うこともできるし、自分のためにも使えます。貯めておいて、後で自分がほしいものができたときに使うこともできます。お金をいくらずつ何に使うか、考えてみてください。」

子どもたちはひとりひとり、自分の稼いだ金額に向き合ってどう使うかを決めていきます。

「全部自分の未来につかう」
「300円でおもちゃを買って、200円は家族のために使う、100円は貯金」

参加していた子どもの親御さんからも、「子ども向けのプログラムで仮想通貨を使うことはありましたけど、本物のお金のやりとりはしたことがなかったので、いい経験ですよね。」という感想がありました。

誰かに必要とされる仕事をつくってお金を稼ぐことから、お金の使い方を考えるところまでを経験できるキッズクリエイティブマーケットで、子どもたちは一回り成長した様子。

最後には3日間のキャンプを振り返る時間が設けられました。どの子も、ただ楽しんで終わりではなく、自分の変化や学びをしっかり確認します。

松浦さん:「ほとんどのひとは今回初めて五城目に来て、初めて会うひとたちと三日間を過ごしました。このキャンプで初めて挑戦したことはなんだったか。そして来る前と来た後、どんな変化があったか。紙に書いてみましょう」

ひとりひとり付箋紙に自分の変化について書いていきます。

「初めてお米をかまどで炊いた」
「雪でいっぱい遊んで雪が好きになった」
「秋田が好きになった」
「東京と違ってコンビニがなくて、朝市で売ってるものは畑でとってきたものだった」

関東の都会での暮らししか知らない子どもたちにとって、地域の暮らし自体が新鮮だったようです。キッズクリエイティブマーケットで初めて経験したこともたくさん。

「お店の宣伝を初めてやった」
「みんなで協力してお金を稼いだことが楽しかった」
「売るのが楽しかった。値下げしたりよく売れるための工夫ができたから。」
「売れると思っていたものが売れなかった」
「人の喜ぶことができてよかった」

なかには、こんな感想を書いていた子も。

「来る前は自分一人だけよければ良かった気がする。来た後はみんなで一緒にしたらよいと思えるようになった」

個人ではなくチームで協力して挑んだチャレンジによって、子どもたち人と協働して何かを成し遂げることの喜びを経験しました。

「スタッフの人たちが私たちのことを考えてくれて嬉しかった」という、自分たちが楽しく過ごせたのは周囲の大人の協力があったからだと気づいた子どももいました。

今回、キャンプで子どもたちが体験した6つの学びのポイントは、決して非日常なイベントではありません。秋田ではこうした教育が日常的に実践されています。

「キャンプが親御さんや子どもたちにとって「こんな学びもあったのか!」「こんな学び方もありだよね!」といった新たな視点を、ナナメ上の角度から五感で感じてもらう機会になっていればと思います」

今回のキャンプを運営したハバタクの丑田俊輔さんは、そう語ります。現代は、田舎だからといって、出会う人が狭まってしまうというわけではない時代になってきました。親御さんのライフスタイルやワークスタイルに合わせたり、子どもの特性に合わせて環境を選んだりすることができるようになってきています。

今回のキャンプにも参加していた東京から移住した五城目の親御さんは「五城目は田舎だけど、様々な地域や職業の人、様々な国の人があつまるので、東京にいた頃より多様なひとに出会えていると思う。東京に比べて地方では多様な人に出会う機会が減るという固定概念があったが、逆だった」とコメントしていました。

教育のために秋田に移住してみたり、1年の限られた時期だけは秋田で過ごす二拠点教育を実践することも十分に考えられる選択肢です。学びにはグラデーションが生まれ始めていることを、キャンプを通じて多くの人に掴んでもらいたいと思います。

編集:モリジュンヤ
執筆:工藤瑞穂