一般財団法人KIBOWが運営するKIBOW社会投資ファンドは、2015年9月の設立以来、社会課題に挑む起業家への投資を続けてきた。2025年12月末時点で累計投資金額は10.17億円(追加投資含む)、投資先は累計28件にのぼる。投資によって呼び込まれた追加資金は21.62億円。EXIT実績も3件を数え、インパクト・スタートアップのエコシステム形成に一定の役割を果たしてきたことがわかる。

現在は総額10億円規模の3号ファンドを運営しており、1件あたり1,000万〜1億円の投資を行う。投資対象は、社会的包摂(Social Inclusion)、ヘルスケア、育児、貧困、地方創生、環境保護など幅広い領域に及ぶ。

今回発行された「IMPACT REPORT 2025」が従来のレポートと一線を画すのは、成果の数値報告にとどまらず、ファンドを取り巻く人々の「志」にフォーカスしている点だ。レポートには3つの特集が組まれている。

特集1:出資者が語るKIBOW社会投資ファンド 10年にわたりファンドを資金面で支えてきた出資者3名——サンブリッジ代表取締役会長兼グループCEOのAllen Miner氏、寺田倉庫代表取締役社長の寺田航平氏、そしてKIBOW代表理事の堀義人氏が登場。出資者の視点から、社会的インパクトへの評価と今後の期待を率直に語っている。

特集2:ソーシャルアントレプレナーの「志」の源泉 投資先であるカケミチプロジェクト代表の岡琢哉氏、GOOD COFFEE FARMS INC代表のCarlos Melen氏、ラポールヘア・グループ代表の早瀬渉氏らが、自身のバックグラウンドと社会課題解決に立ち上がるまでの経緯を振り返る。レポートではこれを「シンクロニシティ(意味のある偶然)」と位置づけ、起業家個人の原体験と社会課題がどう結びついたのかを掘り下げている。

特集3:代表パートナーからのメッセージ 代表パートナーの中村知哉氏・山中礼二氏は、今回のレポートについて「成果や数値だけでなく、実践の中で生まれた葛藤や学び、そして次の挑戦につながる”意志”までをまとめた」と語る。出資者・投資家・起業家それぞれの「志」がつながり、連鎖反応を起こす様子を読み取ってほしいという。

市場規模が拡大するなかで、「インパクト」の定義や測定方法をめぐる議論はますます重要になる。大手金融機関の参入が相次ぐいま、社会起業家に伴走してきたKIBOWのような存在が、数字の裏側にある物語と志を丁寧に発信し続けることの意味は大きい。投資の「量」だけでなく「質」が問われるフェーズに入った日本のインパクト投資市場において、このレポートは一つの基準点を示すものになりそうだ。