「社会性」と「経済性」という、時に相反する二つの価値を追求する「ゼブラ企業」。その概念が日本に上陸してから数年、今や議論は「定義」から「いかに社会に実装するか」という実践のフェーズへと移っている。

株式会社Zebras and Companyと一般社団法人Tokyo Zebras Uniteが2025年12月26日に公開した、全国21社のゼブラ企業の経営を可視化したリサーチブック『Zebra’s Management Research Book vol.1』は、次世代の経営者や支援者のための「実践的な教科書」となっている。

4つの視点から紐解く、ゼブラ経営の「手触り感」

今回公開されたリサーチブックは、ゼブラ経営を多角的に捉えるための4つのパートで構成されている。それぞれの領域において、抽象的な理論ではなく、現場に即した「使える知」が提供されているのが特徴だ。

  1. 事業:ゼブラ・トランスフォーメーションのプロセス 老舗中小企業が事後的にゼブラ企業へと変容していくプロセスを「5段階」に体系化。変容を駆動する心構え「ゼブラ態度(Zebra Attitudes)」など、既存企業が社会性を獲得するためのヒントを提示する。

  2. ファイナンス:地域金融の構造的ギャップを埋める 地域企業87社への調査に基づき、資金調達の課題を解明。2026年施行予定の「企業価値担保権(EVC)」の活用や、柔軟な投資スキーム「LIFE type1」など、経済合理性だけでは測れない価値を支える金融のあり方を提唱する。

  3. 組織:哲学をシステムへと昇華させる 理念・文化・人事・事業という4つの柱を軸に、短期的な利益圧力から現場を守る「防波堤」の築き方や、個人のWILLを尊重する組織モデルを考察している。

  4. 公民連携:「to G」から「with G」への転換 行政からの受託(to G)という関係から、自治体と共に価値を創る「with G(共に創る)」への転換を提唱。文化の違いを乗り越える「橋渡し役」の重要性を説く。

「失敗」さえも共有する、アップデートし続ける海図

本書の特筆すべき点は、巻末に収録された「ゼブラ的フェイルコン(失敗共有)」だ。一直線の成長を目指すユニコーン企業とは異なり、荒波や停滞期、あるいは失敗さえも詳細に記すことで、それぞれの企業が自社の固有性に合わせた最適な進路を見出すための「海図」としての役割を果たそうとしている。Zebras and Companyの代表取締役である阿座上陽平氏、田淵良敬氏らは、ゼブラ企業を「優しく健やかで楽しい社会」への最適な進路を見出すための手助けにしたいと語る。

2023年度より「骨太の方針」等の国家戦略に明記され、さらに「地方創生2.0」においてもその推進が掲げられるなど、ゼブラ企業は今や日本の経済政策の重要なキーワードとなっている。宿泊予約や観光、あるいは製造業やサービス業といった既存の産業構造の中で、いかに「社会的なインパクト」と「持続可能な経済性」を統合していくか。

『Zebra’s Management Research Book vol.1』は、これからの時代の「良い経営」とは何かを問い直すとともに、各地で孤独に奮闘する実践者たちを繋ぎ、新しい経済のスタンダードを形作る大きな一歩となるはずだ。

URL:
https://www.zebrasand.co.jp/wp-content/uploads/2025/12/Zebras_Management_Research-Book_2025.pdf