ビジネス版マッチングアプリ「Yenta」が新たにQ&A機能をリリースした。1日1回、Yentaから質問が送付され、ユーザーは回答可能な質問を選んで回答する。他のユーザーはその回答を閲覧できるようになり、10種類のリアクションやコメントで反応できる。自分から考えをシェアしようとしてもなかなかハードルは高い。適切に問いが投げかけられることで考えが引き出されることについては様々な書籍で触れられているとおりだ。

この新たな機能を実装した背景には、2020年2月にリリースしたタイムライン機能の失敗があるという。Yentaがタイムライン機能で目指していたのは、ユーザーが出会いたい人と出会うために、自分で努力できるようにすることだった。

一定は目指したとおり、パブリックな場での投稿も盛んになった一方、互いに価値を交換するGive&Takeな投稿ではなく、Takerのような投稿も増えてしまったことが機能提供を終了した要因だという。タイムライン機能の提供を続ければユーザーはアクティブになったかもしれないが、Yentaが目指したいサービスの姿とは違ったようだ。

質の高いマッチングを生み出すためのQ&Aの可能性について考えてみたい。実際、肩書や実績など、何をしている人なのか、何をしてきた人なのかなどの情報で判断できることには限りがある。自分に合うかどうかを判断するには、どんな価値観の人なのか、どんな思考をする人なのかという情報を知ることは非常に重要だ。先述の通り、それらを自分の頭で言語化し、出力する作業はなかなかハードルが高い。

そこに、Yentaが問いを投げかけることでユーザーの思考の言語化とアウトプットを促す。周囲はそれを見てどんな考えをしている人なのかに触れ、会ってみたい人かどうかを判断する。質の高いマッチングが起これば、思考は加速し、よりアウトプットもしやすくなっていく。

Yentaは、このアプローチを宇野常寛さんが提唱する「遅いインターネット」的なUX設計だと語る。アウトプットの質にこだわり、思考や思想のアウトプットを促す。タイムライン機能の撤退からも感じられるが、スケールやスピード等ではなく、質にこだわる姿勢が一貫しているのは好感が持てる。

YentaのQ&A機能は、自分も投稿しないと相手の投稿を見ることができない。それも「Give then Take」な習慣をコミュニティの当たり前にしていきたいというYentaの考えの現れだ。じっくり自分に合う人を探す、Yentaならそんな体験ができるかもしれない。