荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を運営しているecboが、新たなサービスをリリースした。飲食店と全国の食卓をつなぐ“レストランキット”デリバリーサービス「ecbo kitchen(エクボキッチン)」だ。

ecbo kitchenは、日本全国の飲食店のメニューをミールキットのような商品にし、各家庭の食卓へと届けるサービスだ。飲食店は店舗に来てもらうか、近隣にフードデリバリーで配送するしかなかったところ、商圏を全国に広げられる。これまでにもミールキットのように自宅で調理する選択肢は存在していたが、これらは専用工場で作られていた。ecbo kitchenでは、飲食店がマイクロ工場な役割を果たし、レストランキットを生産する。

工場で作られていたミールキットは、様々な味を表現するのは構造的にハードルが高い。レストランキットはロット数に限りはあるが、飲食店ごとに味に違いが出る。最近では自宅で過ごす時間が増え、食のバリエーションに限りがあることを感じた人も少なくない。自炊やデリバリーだけでは食の楽しみに限界を感じていた人向けに、ecbo kitchenは新たな食卓の楽しみ方を提案しようとしている。

最近ではテイクアウトなどを実施する動きも活発になっているが、安心安全面での懸念の声もある。キットの提供をしていく上では認証の取得が必要であり、ecbo kitchenはこうした環境整備や飲食店における新たなオペレーションの構築を手助けする。ecbo cloakで培ってきたオペレーション構築を支援するノウハウが活きる見込みだ。

レストランキットの開発にもハードルはありそうだが、各飲食店の名物メニューの商品化を行いつつ、今後はユーザーヒアリングなどプロダクト開発のノウハウを飲食店のレストランキットの開発に活かせないかと考えているという。スタートアップにおけるビジネスノウハウがうまく活用されれば、飲食店の可能性はさらに広げることもできそうだ。

ecbo kitchenは、コロナの影響をきっかけにスタートしたサービスだ。だが、コロナが終息したとしても、子連れでレストランに足を運ぶことが難しかったり、遠くの飲食店には頻繁に行けないなどの課題は変わらず存在する。食卓の楽しみと、飲食店の可能性拡大の両立に挑戦しようとしている。

このサービスは、ecbo cloakの加盟店の多くを占める飲食店にも、売上や営業体制に大きな影響が出ていたこと、ウィズコロナの状況下において改めてミッションに立ち返って考えた結果生まれたという。ecboのミッションは、「世界中のモノの循環を滑らかにする」というもの。今回、飲食店が持つ価値に目を向け、これまで来店やテイクアウト、デリバリーという限られた商圏にしか販売できなかったモノの循環を滑らかにすることで課題を解決し、より多くの人々の元に届けたいと考えたそうだ。

不確実性の高いなかで、新しいサービスを始めることには反対の声もあったと代表の工藤氏は語る。「このサービスの着眼点が良ければ、他のプレイヤーも参入する可能性がある。そうすれば、生活者も飲食店も豊かになる。身軽に動けるスタートアップだからこそ、リスクをとってチャレンジするべきだと思った」との考えから、リリースに踏み切った。