「サーキュラーエコノミー」と聞いて何が思い浮かぶだろう。

日本ではペットボトルの再利用やレジ袋の削減を連想する人が多いかもしれない。正直、筆者も「サーキュラーエコノミー」という概念を初めて知ったとき、資源のリサイクルとどう違うのかあまり理解していなかった。

しかし、先日サーキュラーエコノミー研究家の安居昭博さんとお話した際、リサイクルは一つの要素に過ぎないと教えてもらった。

サーキュラーエコノミーとは、「資源や人、モノ、すべてが健やかに持続できる経済活動」を指し、大量消費・廃棄を前提とした社会から脱却するために掲げられた。

ペットボトルのように、廃棄されていた製品や部品を資源として再利用すること、労働環境を改善し、人が健やかに働ける環境を整えること、モノの所有ではなくシェアを推進すること。いずれもサーキュラーエコノミーの実現には欠かせない。企業も消費者も、経済活動のあり方そのものを見直す必要がある。

4つの領域から変化を促す「サーキュラーグーグル戦略」

こうした動きを牽引するのが巨大テック企業、Googleだ。同社は2012年に企業活動に必要なエネルギーをすべて再生エネルギーで補うと宣言。2017年に見事達成した

先日には「circular Google strategy(サーキュラーグーグル戦略)」を発表。社内で資源の再利用を徹底するだけでなく、社会全体のサーキュラーエコノミーへの移行を後押しすると発表した。

彼らがフォーカスする領域は「データセンター」「ワークプレイス」「コンシューマエレクトロニクス」「Enabling others(他の人々が実践できるよう手助けする)」 の4つだ。各領域で、以下のような取り組みを行なっていくという。

データセンター

世界14ヶ所のデータセンターにおいて、設備の再利用や、埋め立て以外の廃棄物の処理を推進する。2019年までに、古いハードドライブから新しいハードドライブに必要な素材を抽出するスケーラブルな方法を確立することを短期目標の一つに掲げている。

ワークプレイス

食べ残しから空調の廃熱まで、オフィスから発生するあらゆる廃棄物の削減、環境に配慮した建築素材の利用に取り組む。2020年までに、25ヶ所のオフィスで、従業員数あたりの使い捨て容器の利用を半分にする予定だ。

ワークプレイス領域における目標やサブ目標を図解したもの

コンシューマエレクトロニクス

Google Pixel 3aやNest Learning Thermostat、Google Homeなどのプロダクトにおいて、リサイクル素材を優先的に利用する。2022年までに100%リサイクル素材からの製造を目指し、サプライチェーンの構築に取り組む。

Enabling others(他の人々が実践できるよう手助けする)

オンライン学習コンテンツ『Your Plan, Your Planet』を無料で公開、小さな行動の変化がいかに環境にポジティブな影響をもたらすのかを社会に広く伝えていく。また、1000社を超えるサプライヤーと連携、資源の再利用や従業員の労働環境を進める。

彼らの取り組む領域の広さからも、サーキュラーエコノミーが単なる「資源のリサイクル」にとどまらないことが伺えるだろう。

“情報の課題解決”で培った知見を活かす

サーキュラーエコノミーを後押しするに辺り、Googleは既存の事業で培った知見を存分に活かしていきたいと語る。資源を“情報”として捉え、整理し、新たなソリューションを模索していく。

資源の取引がとめどなく起きている経済を、情報技術の文脈で捉え直すと、私たちの資源や廃棄物の課題の一部は、データの問題だと理解できる。ある業界にとって廃棄物でも、別の業界にとっては貴重な資源となることもある。私たちはそれらをデータによって繋ぎたい。

(中略)Googleは、情報にまつわる課題を解決するために生まれた。サーキュラーエコノミーはもっともエキサイティングな挑戦の一つになるだろう。

Googleに負けず劣らず、Appleも実店舗やデータセンターにおいて、100%代替可能エネルギーを実現。購入した代替可能エネルギーを、部品製造を担うサプライヤーにも提供している。巨大テック企業が、蓄積した技術を収益拡大のみならず、サーキュラーエコノミーの推進へと、惜しみなく提供する動きは大いに歓迎したいと思っている。