ジェームズ・W・ヤングは著書『アイデアのつくり方』で、「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」だと語った。1940年のことだ。

ヤングの言葉を信じるなら、現代は最も創造的な時代を迎えている。変化が激しく、情報が溢れている現在は、これまで以上にアイデアの元となる要素に溢れているはずだからだ。

現代人を悩ます「情報の散らかり」が私たちの時間を奪う

「そういえば、あの情報ってどこに残しておいたんだっけ?」

通勤途中に読んだWebの記事や、仕事中に思いついたアイディアのメモ、友人から聞いた美味しいレストランの名前。どこかに記録したはずなのに、見つからないことがよくある。

メモアプリに書いたのか、写真で撮っておいたのか、会社のチャットで呟いたのか。時間が経つと、どうしても忘れてしまう。

仕事でもプライベートでも、私たちは複数のアプリを駆使して、情報をやり取りしている。たった1つのURLを探すために、アプリを行き来したり、チャットの履歴を何ヶ月分も遡った経験のある人は少なくないだろう。

現代人を悩ます「情報の散らかり」は、私たちの貴重な時間をどんどんと奪っていく。テクノロジーの発達により、これまでに無いアイデアを生み出すための知的生産性の向上が求められる中、「情報を探すだけの時間」はできる限り抑えたい。

これまでも、「情報の散らかり」を解決するための様々なツールが生まれたが、求めている機能を全部備えた、夢のようなツールはなかなか現れなかった。

そんな矢先、僕らの長年の悩みを解決してくれる救世主が生まれた。米国発の“情報一元化”ツール「Notion」だ。

バラバラな情報を一元化できる「Notion」

意見、考え、見解
心象、観念、イメージ
〔気まぐれな〕思い付き、出来心

「notion」という言葉は、これらの意味を持つ。ツールの「Notion」は、言葉の意味通り、頭に浮かぶ様々な情報を管理するためのツールだ。

Notionは、メモやタスク管理、カレンダー、スプレッドシート、Wikiなど、幅広い機能を備えている。「all-in-one workspace(オールインワンのワークスペース)」を掲げる通り、複数のアプリで管理していた情報を1つにまとめることができる。

とにかく機能が豊富なため、初めて使う人はどこから始めればいいのか、戸惑ってしまうかもしれない。この記事では、最低限押さえておきたい4つの機能をピックアップして、紹介したいと思う。

1.文書作成から締切管理まで行える「ドキュメント機能」

Notionでは、Googleドキュメントのようにクラウド上で文書の作成や共同編集を行える。

Notionを開き、左下の「New Page」をクリックすると、いくつもテンプレートが表示される。書類やメモを作成したい場合は「Default Page」か「Empty Page」を選ぼう。

ページを開くと、通常のテキストだけでなく、チェックボックスや番号付きのリスト、引用文など、幅広い書式を選べる。ToDoリストや議事録としても使い勝手が良い。

ヘッダーやサブヘッターも選べる

ドキュメント内で「@」を入力すると、リマインダーも設定できる。メディアの仕事に携わっている筆者にとって、ドキュメントの編集と締切の管理を1つのツールで行えるのは心強い。

2. タスク進行状況が一目でわかる「カンバン機能」

2つ目は、プロジェクトの進行度合いに合わせてタスクを整理できる機能だ。「New Page」から「Board」を選択すると、何も入力されていないタスクボードが表示される。

カードをクリックすると、以下のようにタスクの名前や担当者、ステータスを設定する画面が表れ、「Property 1」には、テキストや数値、日付、URLを追加できる。それらに沿って、タスクボード上のカードを並び変えられるので、プロジェクトの名前や締め切りなどを設定しておくと、管理する際に便利だ。

例えば、メディアの運営に利用する場合、以下のように「取材申し込み中」や「取材済み」「編集中」「校閲中」「入稿済み」など、進捗を設定している。

タスクボードはカレンダー表示にも切り替えられる。各カードに締切日を設定しておけば、カレンダーで「いつまでに何をやらなければならないのか」がひと目で確認できる。

3. インプットした情報をまとめて管理する「リスト機能」

3つ目は、Googleスプレッドシートのように、様々なデータを一覧で管理する機能だ。テンプレートで「Table」を選ぶと、以下のようなスプレッドシートが表示される。

「Name」列の項目をクリックすると、タスクボードと同じように「Property」を設定でき、「Property」がシートの列に追加される。以下のスプレッドシートでは、「Tags」や「著者」「Year」を追加した。

複雑な関数が入り組んだシートをつくるには少し頼りないが、読んだ本や訪れた場所の記録であれば十分な機能だ。

4. Notion内の情報を構造化して整理する「Wiki機能」

Notion内で作成したドキュメントやスプレッドシートは、ドラッグ1つで構造化し、整理できる。それらをまとめる親ページには、各ドキュメントへのリンクが表示されるので、簡単にWikiのようなページが出来上がる。

サイドバーの内容と対応したページができあがる

Notionを使っていると、管理したいドキュメントがどんどん増えていく。親ページをつくって定期的に整理すると良いだろう。

とはいえ、どう便利に使えば良いの?

ざっと4つの機能を紹介しただけでもわかるように、Notionは自由度の高いツールであり、使い方は無限にある。

ここでは、筆者の経験も踏まえ「こんなふうに使えるよ」という例をいくつか挙げる。

プロジェクトごとに何度も見返す情報を整理

携わっているプロジェクトごとに、何度も見返す資料やWebページはないだろうか。筆者の場合、各媒体で文章を書く際のトンマナや取材申込書のテンプレート、プロジェクトに関わる参考資料一覧などがある。

以前は、各資料のURLをブックマークしていたが、NotionではそれらのURLを一覧にまとめたWikiページを作成できる。携わるプロジェクトごとにまとめておくと、「あの資料どこに行ったっけ?」と探す手間が省ける。

同時に動いているプロジェクトのタスク管理

社内で複数のプロジェクトに携わったり、個人で仕事を請けていたりすると、大小様々なタスクが降ってくる。複数のプロジェクトが動いている状態でも、タスクを的確に優先順位づけし、漏れを防ぐために、筆者はスプレッドシートを利用している。

以下のように、タスクが発生したらスプレッドシートに「案件名」や「タグ」、「期日」を打ち込む。

タグは関わっている会社やプロジェクトごとに色分けすると見やすい

スプレッドシートの左上にある「Add a View」から「Callender」を選択すると、カレンダービューに切り替えられる。

すると、以下のように「いつまでに何を終わらせるべきか」が一目で確認できる。

日付だけでなく時刻も細かく設定できる。筆者は発生したタスクを大まかに把握するために使っているが、細かく日時を設定してカレンダー代わりに利用しても便利だろう。

チーム内の情報も1つに集約し、効率化を図る

ここまで主に個人で使う方法を紹介してきたが、Notionには、1人8ドルで(約900円)で利用できる「Team」プランもある。

保存できるデータ量、アップできるファイルの容量に制限のある「Free」プラン、無制限の「Personal」プラン、企業向けの「Enterprise」プランも用意されている

Teamプランでは、作成したドキュメントやタスクボード、スプレッドシート、カレンダーをボタン1つでメンバーの共同編集が可能。議事録の執筆やチームでのタスク管理、社内Wikiの作成など、これまで複数のツールで行なっていた作業をすべてNotion上に集約できる。

追記

Notionは、随時新機能を提供している。2020年の秋にはガントチャートが利用可能となるタイムラインビューをリリースした。今後もNotionは新しい機能をリリースするだろう。

さいごに

NotionのWebサイトでも語られているように、これまでの知的生産性向上に関わるツールは、例えばタイプライターの生産性を何十倍にも拡大しただけで、元々のコンセプトは産業革命の時から変わっていない。インプットのためのツールとアウトプットのためのツールは、メーカーが同じであれ別のアプリとして存在していた。

Notionはアウトプットもインプットも全て一つのツール内で完結する。全ての情報を1つの場所に集約するメリットは、複数のアプリを行き来する手間を省けるだけでなく、「これさえ見ていれば大丈夫」という安心感が得られることだ。情報の検索や管理に頭を使わずに済めば、よりクリエイティブな仕事に集中することもできるだろう。

アプリ間の移動の無駄がなくなることで、人の知的生産性はさらに向上し、より一層面白いイノベーションが生まれるだろう。あなたもNotionを使って、無駄な時間を減らし、効率よく楽しく仕事に取り組もう。