トイザらスのおもちゃカタログと『ホーム・アローン』、なかなか片付かないささやかなクリスマスツリー。

小学生の私にとって、これがクリスマスのすべてだった。

金曜ロードショーで『ホーム・アローン』が放送される日は慌ててお風呂に入ったことを、今でもなんとなく覚えている。

それから十数年が経ち、金曜ロードショーのCMを眺めていると、なんと今年もクリスマス映画として『ホーム・アローン』と『ホーム・アローン2』が放映されるそう。

また、2016年に映画情報サービス「Filmarks(フィルマークス)」がユーザーから投稿された映画レビューのデータに基づいて算出した「クリスマス映画100選」を見てみても、上位10位内に入っている作品は、『ラブ・アクチュアリー』や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』など、見知った作品がほとんど。一方で、2010年代の作品は2015年に公開された『クーパー家の晩餐会』(8位)のみ。幼い頃から変わらぬラインナップに安堵すると同時に、小さな不安が頭をよぎる。

2歳の娘は今後、『ホーム・アローン』を私のように楽しめるのだろうか?

世代を超え、人々に愛される作品だからこそ、娘も楽しんで見れる可能性は高い。しかし、2016年に生まれたスマホネイティブな娘にとって1992年に公開された『ホーム・アローン』の主人公ケビンを取り巻く「家に置き去りにされて家族と連絡する手段が一切ない」という状況は奇特なものであり、おそらく、私のように今作に懐かしさを感じることはないだろう。

だからこそ、娘の成長と同時期に公開された作品を一緒に見たいな、と思うようになった。そこで今回は、Netflixより子どもたちと楽しめる最新クリスマス映画をご紹介する。

現代の街並みでサンタクロースが活躍する『クリスマス・クロニクル』

『クリスマス・クロニクル』は『ホーム・アローン』や『ハリーポッター』の前半三作品の制作、監督をつとめたクリス・コロンバスの最新作だ。

あらすじ
主人公は、父を亡くしたばかりのピアース兄妹。2018年12月24日、病院で働く母親が急に夜勤になり、兄妹は二人でクリスマスを過ごすことに。妹のケイトは父の形見のビデオカメラで過去のクリスマスを振り返っていた。一方、兄のテディは、父の死をきっかけに素行が悪くなり、クリスマスも悪い仲間と出歩こうと画策する。
しかし、ケイトが過去のビデオの中にサンタクロースらしき人影を見つけたことをきっかけに、二人はサンタクロースを隠し撮りすべくカメラを片手に夜の街に出る。
すると空にはサンタのソリが浮かんでいたのだ。サンタクロースがプレゼントを配るすきにソリに乗り込んだ二人には、思いもよらない大冒険が待ち受けていた。

ファンタジックな物語なのに、なぜか入り込めてしまう。そんな作品を作り上げてきた監督が放つ最新作では、彼がこれまでに培ってきた技やユーモアが存分に発揮されている。例えば、サンタクロースがどのように世界中の子供達にプレゼントを届けているのか、サンタの服にはどんな秘密が隠れているのか、など、作り込みが細かい設定は大人が見ても十分楽しめるものだ。また、「コーラを飲む」、「でっぷり太っている」といったサンタクロースのイメージは作り上げられたものだとサンタ自身が否定したり、トナカイを探すべくサンタが車を運転しようするシーンは新鮮で、ついつい笑ってしまう。

なにより、現代の街並みの中で、サンタが子ども達のために各家の屋根に降り立つシーンは、科学技術が発展しても、人々が「サンタクロースを信じる心」は変わらないのだろう、そう思わせてくれるものだ。現代ならではのファンタジー作品はクリスマスシーズンに大切な人と見るのにぴったりだろう。

歌って踊って「クリスマス」について学べるミュージカルアニメ

クリスマスの楽しいところは、正しいとか間違っているとかじゃない
『ホーム 宇宙人ブーヴのクリスマス』

楽しい音楽に、カラフルな映像、ちょっとシュールで笑えるシーン。子ども達にとってこれほど魅力的なものはないだろう。それらがギュッと詰まったそんな作品が『ホーム 宇宙人ブーヴのクリスマス』だ。

2017年に公開された今作は2015年に公開された3DCGによる3Dアニメ映画『ホーム 宇宙人ブーヴのゆかいな大冒険』をベースに主人公の宇宙人ブーヴの一員のオウと、その親友で地球人の少女チップが過ごす初めてのクリスマスの様子が描かれている。ストーリーとしては独立しているため、映画を見ていなくても、十分に楽しめるアニメーションになっている。また、歌手のケリー・クラークソンと俳優のベン・シュワルツが本人役として登場し、劇中歌を歌い上げることでミュージカル作品として見ることもできる。

あらすじ
地球に移住しに宇宙からやってきた種族、ブーヴ。そんなブーヴの一人、オウは、地球に来て初めてクリスマスの日を迎える。親友のチップから「クリスマス」を学んだオウは仲間のブーヴ達に「クリスマス」を教えることに。しかし、オウが思う「クリスマス」が間違っていたために「クリスマス」はブーヴ達によってめちゃめちゃにされてしまい…。

今作の魅力は音楽に乗せながらクリスマスとはなんなのか?をオウと一緒に視聴者達も学んでいけるところだ。

特に素晴らしいのが、オウが自分の勘違いによって危機に瀕した町並みを眺めながら、ベンに自分の失敗を問いかけるシーン。ここで、ベンが、クリスマスと同時期に行われるユダヤ教の行事ハヌカーをオウに教えることで、地球人同士でもクリスマスの祝い方が違うのだ、ということをオウが知るのだ。その結果、オウとチップは「クリスマスを楽しむ気持ち」こそが大切なのだと自覚する。

このシーンからは、単に伝統を紹介するだけでなく、多様性も示唆されており、現代らしい思想が作品の基盤にあることが感じられる。

『ホーム 宇宙人ブーヴのクリスマス』を見れば、あなたもきっと「クリスマスを楽しむ気持ち」になれるだろう。

技術が発展しても、クリスマスが見せてくれるファンタジーは変わらない

数年ぶりにクリスマス映画を見る中で強く感じたのは、サンタクロースを信じ、クリスマスを楽しもうとする人々の心は、どれだけ年月が経とうと技術が発展しようと変わらないのだ、ということだ。

ファンタジーの力は、技術によって気軽に会いたい人に会え、欲しいものをすぐに手にできる便利な現代社会においても、衰えを知らない。

サンタクロースを信じる子どもの割合は、スマートフォンで検索すれば簡単に様々な情報を得られるようになった今と情報が得にくかった30年前を比較してもさほど変わらないというデータもある

その一方で、今回紹介した作品には、緻密な設定や思想に裏打ちされたストーリーでリアリティを追求するという側面もあった。

ファンタジーとリアリティ、一見相反する要素が絡まりあうことで、グッと作品に入り込めるようになる、というのは、私が子どもの頃にはあまりなかった体験で、時代の変化を感じた。

様々なクリスマスにまつわる作品を娘と見る中で、いつか彼女にとっての『ホーム・アローン』が見つかればいいな、と願ってしまうのかもしれない。