高層ビルが立ち並ぶ東京の街には、使われていない空きスペースが無数に存在する。

「公開空地」と呼ばれるその空間には、さまざまな活用方法が残されているはず。その空間の活用に乗り出したプレイヤーがいる。

ビルの空きスペースと個性豊かなフードトラックをマッチングするモビリティプラットフォーム「TLUCH」を提供するmellowだ。

“三方良し”を目指すmellowのビジネスモデル

mellowは400店以上のフードトラックと提携し、東京都内を中心に85ヶ所でランチスペースを展開している。フードトラックオーナーは店舗を開こうとしても、道路に出店すると道路交通法などに反し、制約が大きいことが課題だった。

そこでmellowが空きスペースを持つビルのオーナーと交渉し、出店場所を開拓。加えて、各場所での販売データを蓄積していくことで、フードトラックオーナーの売上に貢献する仕組みだ。

mellowは、出店料としてフードトラックから売上の15%を受け取り、5%をビルオーナーに配分している。そのため、フードトラックオーナーの売上増に貢献するインセンティブが働きやすい。

ビルのオーナー、フードトラック事業者、そして“ランチ難民”となりやすいオフィスワーカー、その全てへの貢献を目指すプラットフォームだ。

“必然的”に生まれる「公開空地」をどう活用するか

そんなmellowが新しく目をつけたのは、「公開空地」だ。

東京の街に「公開空地」が生まれるのには、理由がある。

建築基準法には、区画によって20mないし31m以上の建物は建ててはならないという規制が存在する。だが、地域住民に対して開かれたオープンスペース「公開空地」を私有地内に設けることで、規制を緩和できるという。

しかし、公開空地は営利目的での活用ができないため、都市空間の中に活用されてない広いスペースを作ってしまうことが課題となっていた。

そこで東京都は2017年4月に「東京のしゃれた街並み推進条例」を制定。特定の条件に基づき、公開空地を営利目的で利用できる条例だ。

しかし、適用条件の複雑さや、用意しなければならない書類のわかりにくさといった課題から、活用はなかなか進まない。

そこでmellowが提供を始めたのが「しゃれ街」というサービスだ。プラットフォーマーとしてのmellowが、条例適用に必要な調査や申請、運営業務までを一貫して担うことで、公開空地の活用ハードルを下げる。

mellowはこれまで都内10カ所以上の公開空地にて、フードトラックの出店を行ってきた。そのノウハウをビルの魅力向上や、より良い街並みづくりに活かしていくという。

フードトラックで「公開空地」の活用を推し進める

mellowは取り組みの第一弾として、日本IBM本社ビルおよび周辺地域のランチ環境、オフィスワーカーの利便性向上のために、フードトラックが日替わりでランチを提供する「青空シェフごはん TLUNCH<トランチ>」を展開する。

ビルオーナーの三井倉庫ホールディングスの委任を受け、mellowが東京都にまちづくり団体登録の申請を行い、受理される形で9月3日からスタートした。

フードトラックのシェフが作った出来立てのランチを毎日楽しめるようになり、ランチ環境の充実、エリアの活性化に期待がかかる。

mellow代表の柏谷氏は今回の取り組みについて次のように語る。

「東京は高層ビルで溢れています。そして、高層ビルの数だけ公開空地が存在しています。mellowは「しゃれ街」の拡大によって公開空地の活用をさらに加速させ、高層ビルの数だけの人々の笑顔が溢れるようなまちづくりを実現していきます。

そして、東京2020オリンピック・パラリンピックまでに、東京の全ての公開空地で特色ある賑わいづくりがあたりまえのように行われている環境を作っていきたいと考えています」

柏谷氏に取材した時、mellowは「人を元気にする会社」だと語っていた。フードトラックを通じて美味しい食事を提供することで、ビジネスパーソンのランチを豊かにする。柏谷氏が「死んだ目の人を救いたい」と強く語っていたのが印象的だった。

公開空地を活用すれば、より多くのビジネスパーソンに美味しいランチを届けられる。それまでベンチしかなかった空間に、フードトラックが並び、人の賑わいが戻る。

工夫次第で、東京の町並みは変わっていく。mellowのような新しいプレイヤーが、その景色を塗り替えていくことに、とてもワクワクする。