ネコは、自由奔放な生き物である。

こちらにまったく興味がない素振りを見せていたのに、気が付くと少しずつ近寄ってきている。仲良くなれたと思えば、踵を返して昼寝している。

そんなネコとヒトが、共に暮らすようになって久しい。

数千年以上前、農耕文化の発展にともない、穀物を食い荒らすネズミを退治する番人として保護されていたという史実が世界各地に残る。また古代エジプトにおいてネコは神格化され、高貴な愛玩動物として今日のペットに近い存在だったとされる。

今では、ネコは身近なペットであり、インターネットでは犬以上の人気者だ。日本国内での飼育頭数も増加している。平成29年全国犬猫飼育実態調査(一般社団法人ペットフード協会)によると、2017年には545万9000世帯、9526頭のネコが飼育されている。

ネコをペットとして飼うヒトが増えるに伴い、遊び道具や爪とぎ、キャットハウスなど、様々なネコグッズが生まれた。それらは、ネコがヒトの家で健やかに暮らすために欠かせないものだった。

そんな「ネコが健やかに暮らすため」の道具から一歩進み、「ネコとヒトの双方にとって心地よい暮らし」を提案するキャットツリーが登場した。

ネコが透けて見える美しいキャット・ツリー

2017年12月に発表された「NEKO」は、「モダニズム建築やアートミュージアムにフィットするような、美しいネコ用遊戯家具がつくれないか」という開発者の考えから誕生したキャットツリーだ。発表されてから、そのキャット・ツリーらしからぬ美しさと、「100万円」という高価な価格設定に、国内外のメディアで取り上げられ話題となった。

「NEKO」を販売するRINNは、これまでも獣医師が監修した大谷焼の水飲み器「IZUMI」や、食べ過ぎや一気食いを防止する自動給餌器「PELTY」など、ネコの健康をサポートする美しいプロダクトを開発・販売してきた。「ネコの健康を通じて、人の暮らしを豊かに。」を掲げ、事業を展開している。

“快適さ”のために選び抜かれた素材

そもそも、キャットタワーはなぜ必要なのか。東京猫医療センター院長の服部幸氏によると、ネコは外敵から身を守るべく木に登っていたため、現在でも高いところが安心する習性があるという。また室内でネコを飼うとなると、外で生活するのに比べどうしても運動量が不足してしまう。キャットタワーを設置することで、ネコが安心して過ごし、運動するための場所をつくってあげられるのだ。

「NEKO」をまとうのは、岐阜県飛騨地方の森の広葉樹。株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)が製作ディレクションを担当することで、「NEKO」に求められる最高の素材を活用することが可能となった。

土台に使用されているのは、ギリシャから採掘された大理石だ。白色系の地に淡いグレーの模様が入った石板、その上にネコがしなやかに横たわる様は、非常に美しい。これはネコの体温調節にも役立つという。

この2つの素材は、意匠や機能だけではなく、木の文化である東洋と石の文化である西洋の文化的な融合が表現されている。デザインしたのは、東京や上海で活躍するプロダクトデザイナーの小宮山 洋 氏。「NEKO」について次のように語っている。

「縦へ伸びる天然木によって覆われた外観は、猫のプライベート空間をつくりながらインテリアへ溶け込むオブジェとして機能します。丸棒と丸棒の間にある隙間が猫と人の気配をかすかに繋げ、一体感を感じられるようになっています」

ネコとヒト、双方のためのデザイン

従来のキャットタワーはネコにとっての快適さを叶えていたが、ヒトの生活空間に馴染むインテリアとしての美しさを兼ね備えたものは、なかなか登場しなかった。

「NEKO」がとくに優れているのは、ネコの快適さだけでなく、ヒトにとっての快適さも両立している点にある。従来のキャットタワーと比較して圧倒的に美しく、目に心地よく、猫と一体感を得られる空間を実現しているのだ。

ネコとヒトが共に暮らすことが日常になったいま、ネコとヒト、お互いにとって快適に過ごすことができる空間をつくるデザインが求められている。「NEKO」のようなプロダクトが生まれていくことで、ネコとヒトの生活を変えていくかもしれない。

2018年6月より、いよいよ注文者の方への発送が始まっているようだ。届いた飼い主たちの声、そしてユーザーとなるネコたちの声を、楽しみに待ちたい。