人はなぜ、同じ失敗を繰り返してしまうのか。

哲学的な話ではなく、冷蔵庫の中で賞味期限が切れた卵の話をしている。自分で料理をするようになってから、何度食材を無駄にしてしまったことか。ついこの間、賞味期限を確認したばかりなのに。

まめな性格ではない私は、食材ごとに賞味期限をメモすることもしない。何か対策を打たなくては、と思いながら惜しい気持ちで卵を捨てる。そしてまた、同じことの繰り返しになる。

国境を越えて、アメリカでも同じような失敗を繰り返す家庭は多いようだ。事実、国内では約30〜40%の食料が廃棄され、賞味期限切れによる家庭内での廃棄率も高い割合になっている。

この問題に待ったをかけたのが、シカゴのスタートアップOvieだった。家庭内における食料廃棄に歯止めをかけるために同社が開発したのは、タグとスマホで簡単に食料の鮮度が確認できるシステム「Smarterware」だ。

使い勝手は、非常にシンプル。「Smart Tag」と呼ばれる円形の小型タグを鮮度管理したい食材に取り付け、ボタンを押し、Amazon Echoもしくは専用アプリにその食材の種類を登録するだけ。

タグは単体のものだけでなく、タッパーやクリップ状になっているものも用意されているため、食材に合わせた付け方が可能だ。

ボタンを押したタグは、食材の鮮度状態に応じて、周りのリングの色が変わる仕組みになっている。鮮度に問題がないときは「青」、賞味期限間近のときは「黄」、期限を過ぎてしまったものは「赤」に色が変わる。

冷蔵庫を開けるたびに「どの食材が悪くなりかけているか?」を一目で判断できるため、いちいち賞味期限の日付を確認する手間が省ける。どの食材を優先的に使うべきかがわかるだけで、食事の献立も作りやすくなるのではないか。

ただ、冷蔵庫を開けるたびに「Smart Tag」の色を確認するのも面倒臭いという人もいるだろう。「Smart Tag」を取り付けた食材の鮮度は、いつでもスマホから確認できる。食材名の横にリングの色が表示され、「青」から「黄」に色が変わった食材があれば、通知で知らせてくれるという。

また、賞味期限の近づいた食材を使ったレシピをAmazon Echoやアプリが提案する機能もある。足りない食材は、そのまま「Amazon Fresh」から購入することもできる。食料の無駄が減ることはもちろん、時間の短縮にも繋がるため非常に効率的だ。

クラウドファンディングKicksterterで「Smarterware」の開発資金を募ったところ、目標額の40,000ドルに対して約65,000ドルの費用が集まった。一般発売の前から、大きな注目を浴びている。

食料廃棄は、日本でも大きな問題となっている。農林水産省の調査によれば、日本に出回っている全食料の約20%が捨てられている。この問題を解決へ導くためにも、「Smarterware」のようなシステムは、現代の日本にも必要ではないか。

後ろ髪を引かれる思いで賞味期限の切れた卵を捨てる習慣に、今こそ終止符を打ちたい。