離れて暮らす高齢の親が、もし転倒してしまったら――。
あなたはそれに気づくことができるか。気づいたとしても、対処できるだろうか。

若い頃とは違い、転んだ時にとっさには手が出ず、顔や頭を直接打ってしまうこともある。その場合、高齢者が自ら連絡を取ることは難しいだろう。

転倒は高齢者にとっての大きな脅威である。

内閣府の「平成29年版高齢者白書」によると、転倒は、「介護が必要となった主な原因」において、脳卒中、認知症、老衰に次ぐ第4位に位置する。一人でいるときに転んでしまった場合、まさに外部との連絡手段が命綱だ。

では一体どうすれば。そんな問いにひとつの答えを提示するスマートシューズが、フランスのスタートアップから誕生している。

転倒時に自動的に通知を行うスマートシューズ

フランスのスタートアップE-Voneが開発したのは、着用者が転んだ際、自動的に緊急連絡先や最寄りの医療機関に位置情報の通知を行うようプログラムされたスマートシューズだ。

異常な動作を検出するためのジャイロスコープと加速度計、着用者の位置を特定するGPS、携帯電話やIoTの無線通信に用いられるGSMやLoRaアンテナ、そして靴が履かれたことを検知するための圧力センサーなど、数々のセンサーやチップを搭載し、着用者の安全を見守る。

同シューズは全ての情報を内部で処理できるため、モバイル機器へのペアリングなどの難しい設定は必要なく、機械の操作に明るくない高齢者でも安心して利用が可能だ。

詳細な発売日は未定だが、2018年中頃の販売開始を目指しているとのこと。

価格は、日本円にして1万円台となる100~150ドルを予定。これにプラスで毎月20ドルのサービス利用料を支払うと、いつどこで着用者が転倒したのかを24時間体制で見守ってくれる仕組みだ。

実は高齢者の転倒事故の多くは自宅などの屋内で起きているというデータもあり、今後はスリッパなどの室内履きに技術を組み込むことも検討しているという。

このスマートシューズは高齢者だけではなく、認知症患者にも効果的ではないかと期待している。徘徊によって行方不明になった際に、位置データを元に着用者の居場所を特定できるからだ。

自分たちの代わりに、高齢の身内の安全を見守ってくれるスマートシューズ。
離れて暮らす家族にとって嬉しいサービスであることはもちろん、万一の場合の安心が担保されていることにより、高齢者自身も安心して外出ができ、双方にとって価値のあるサービスだ。今後、シニア向けアイテムの新たなスタンダードとなるかもしれない。