さっきから、何度小首を傾げただろう。
全身鏡に映る自分とにらめっこをしながら、あーでもない、こーでもないと中々納得できずにいる。
この間、一目惚れをして買ったばかりのワンピース。まだ片手で数えられるくらいしか着ていないのに、もうドキドキしない。何となく、自分に似合っていない気がするのだ。
そう思うのは、きっと服のせいじゃない。キャリアや将来への不安、プライベートの問題。今の自分への“自信”のなさが、服にも現れてしまっている。
どうやら内面から湧きでる自信は、外見にも滲みでるらしい。
そういう意味では、「内なる自信」と「ファッション」には強い結びつきがあるように思う。同じ服を着ていても、自分に“自信”を持っている人とそうでない人では、服の見え方に差が出る。アメリカの女性ファッションブランド「tuxe」は、その点に目をつけた。
同ブランドのCEOであるTamar Daniel氏は、自身が以前パフォーマンスコーチングを受けていたことにより、仕事における困難な場面を乗り越えられたと語る。当時の経験から、彼女は「tuxe」の服を着る女性たちにも“外見”だけでなく“内面”にも自信を持ち、より魅力的になって欲しいと考えた。
そう、パフォーマンスコーチングの無料提供だ。
ブランドが扱うのは、主にボディースーツ・ブラウス・シャツなど。ビジネスシーンで活躍しそうなシンプルなものが多い。生地の素材や機能にこだわり、ほとんどの製品は股下でホックを止める仕様になっている。ホックは安定感があり、肌に食い込むことなくしっかり身体にフィットするそう。
「tuxe」でこれらの商品を買った女性は、無料でパフォーマンスコーチングのセッションを受けられる。講師は、女性のキャリアや人生におけるコンサルティングで高い評価を持つIanna Raim氏。
彼女が「過去の挫折」「人生の目標設定」など様々なトピックに関するコーチングセッションを事前に録画し、ブランドの購入者に動画を提供するという仕組みだ。今後は、ユーザーごとのニーズに合わせたコーチングセッションも視野に入れているという。
ブランドを実際に利用した女性のなかには、「tuxeの服を着ることで、大切な面接を乗り切れた」「賃上げの交渉に踏み切れた」など前向きなコメントが相次いでいる。「tuxe」により内外ともに自信をつけた女性たちが、人生やキャリアにおいて大きな一歩を踏み出せている証拠だ。
最近では、日本のお笑い芸人である渡辺直美氏が「GAP」の新商品PRモデルに起用された際のインタビューで語った内容が、“ボディポジティブ”という文脈で注目を浴びている。
このキャンペーンで、私は“大きな女の子”を代表して選ばれたんだと思います。これを見ている人が、どんな体型でも自分の好きな服を着ていいのだと感じてもらえたら嬉しいです。
ファッション業界が、独自のブランドユーザーに対して「内面から自信を持つ」ことを促す動きは今後も増えていくに違いない。
「自分に自信を」
この記事を書きながら、私も自分の内側にプラスの感情が芽生え始めていると気づく。明日、もう一度あのワンピースを着てみようと思う。
きっと今の私には、よく似合うはずだから。