画面いっぱいの顔写真、あだ名と年齢と、ちょっとした肩書きが映される画面。これを右にスワイプするか、左にスワイプするかで出会えるか否かが決まる。このマッチングアプリは「とにかく出会える」らしい。

好みの外見だけど、どんな人かはわからない。そんな相手との出会いはエキサイティングだ。こうしたアプリの利用者の多くは、刺激的な“出会い方”を求めているのだ。しかし、私たちが“出会ってみたい誰か”を求める時、マッチングアプリの形式はちょっと違ったものになる。例えば、アメリカで人気のオンラインデーティングサービス「OkCupid(オーケーキューピッド)」を見てみよう。

好みの相手と好みの出会い方ができるマッチングサービス

OkCupidは2004年に創設されたマッチングサービス。1995年に開設された「Match.com(マッチ・ドットコム)」には遅れを取るものの、今なお残る大手のマッチングサービスとしては、老舗といっても過言ではないだろう。OkCupidでは、外見や経歴、性趣向、性格など細かく設定・検索ができる。また、メッセージから始めたり、「近くにいる人」や「マッチ率の高い人(人気のある人)」の中から即座にマッチングしたりと、出会い方に多様性が高いのも特徴の一つだ。

会ってみたい人を探す時代から会える人を見つける時代へ

Match.comやOkCupidはいずれも条件を検索にすることによって相手を選ぶ。こうした検索型のサービスは、マッチングアプリの第一世代と呼ばれている。

2012年に登場した「Tinderティンダー)」は近くにいる“出会いたい”人を表示してくれるサービス。スワイプするだけで誰かと出会えるというカジュアルさが売りで、出会い系を敬遠してきた層にも利用が拡大した。こうしたマッチングサービスは第二世代と呼ばれる。

しかし、利用者の拡大とその気軽さから、「出会えすぎてデートに至らない」という状態が生み出された。そこで、2015年に、「100通のメッセージより1回のデート」を掲げ、あらかじめ食事の時間や場所を決めてからチャットをスタートするというオンラインデーティングサービス「Dine(ダイン)」が立ち上げられ、デートの即時性と確実性に重点を置いた第三世代のマッチングサービスが規模を拡大している。

マッチングサービスは時代とともに普及しているが、こうした三世代のサービスはそれぞれが異なる思想を持っている。そのためこれらは一本の線で結ばれたものではなく、それぞれが需要の異なる三つの枝であると考えられる。

しかし、多くの人はマッチングアプリ=スワイプのイメージを持っているのではなかろうか?そこでOkCupidはオンラインデーティングに一石を投じる広告を打ち出した。

あなたにとってのFはなんだろう?

今回、OkCupidが大々的に掲げたのは、「DTF」という文言だ。これは「誰とでも一夜をともにする(Down To Fuck)」を意味するスラング。OkCupidはこの挑発的なワードに対し、Fを再定義することで、今一度、人々にオンラインでの出会いについて考えることを促す。例えば、「DTFinish my novel(誰と一緒でも本を読み終えられる)」、「DTFifty-Five Hour Binge(誰と一緒でも55時間飲み続けられる)」、「DTFoot the Bill(誰と一緒でも支払いは任せて)」。

自撮り写真だけではなく、内面のユニークさを表現し、そこに魅力を感じる相手と心を通わせる。外見や経歴、性趣向、性格などを細かく検索できる同サービスならではの出会いのあり方が表現されているようだ。

一連の広告は広告会社である「Wieden + Kennedy New York(ワイデン+ケネディ)」によって企画された。イタリア出身のアーティストMaurizio Cattelan(マウリツィオ・カテラン)と写真家Pierpaolo Ferrari(ピエールパオロ・フェラーリ)が撮影、編集を手がけている。すでにニューヨークで大々的に打ち出されており、地下鉄やソーシャルメディアで見ることができる。

あなたのFはなんだろう?
それを見つけた時、普通に暮らしていたら出会えなかった誰かに出会えるかもしれない。