私は商社マンの父と専業主婦の母との間に生まれた。だから一人暮らしをするときや初めてカードを作るとき、保証人の欄に日本では名の通った父の会社名を記入すれば審査が通らないなんてことはなかった。クレカが作れない、そんなの都市伝説だとすら思っていた。

しかし、結婚して携帯を買い換えたとき、携帯代を分割払いしようとしたら思いがけず審査に落ちてびっくりした。うわずった声で「じゃ、じゃあ、一括で」と言ったときの情けなさは今でも覚えている。ただの学生だった私はずっと親の衣を借りていたのだ。

けれど、私は今フリーランスのライターとして稼ぎを得ている。しかしながらクレジットカードを作りたい、そう思ったときどうやらこの“フリーランス”という肩書きでは、審査は通してくれないらしい。それってあんまりではないか。

フリーランスによる、フリーランスのためのクレジットカード

そんな課題を解決するために、フリーランス総合支援プラットフォームであるランサーズは、新生銀行と連携し、フリーランス向けのクレジットカード「FreCa(フリカ)」の開発プロジェクトを始動した。

開発にあたってはフリーランスのクリエイターと共同で、カードのデザインや販促ツールの制作、選定、コワーキングスペースやカフェの利用優待、wifiや業務に必要な機材リースの割引など、特典内容についても選考するそう。

現在カードデザイン&優待特典選考会に参加するフリーランスを最大10名募集している。クレジットカードのデザインコンペも同時開催予定だ。

働き方の多様化を日常的な課題で妨げたくない

広義のフリーランスの経済規模は20兆円を超え、副業経済は8兆円規模に達しているという。市場が拡大する中で、フリーランスが抱える悩みについてランサーズが調査したアンケートによると1位が「お金」について、約50%がそう回答している。そのほかにも「社会保障」が2位にランクインするなど、不安定な状態を憂う人も少なくない。さらに、アンケート調査には「クレジットカードが持てない」という声も届いていたそう。

そこで、ランサーズはフリーランスを支援する「ランサー経済圏」構想の一つとして、新生銀行と連携し「フリーランス自身がほしいと思えるクレジットカードを、フリーランス自身がつくる」プロジェクトをスタートしたそう。「選んで待つ」から「作って持つ」という、新たな取り組みは現在をクリエイターとして生きる人々にとって共感しやすい考え方だろう。さらにランサーズは今後もフリーランスの働き方の自由な選択の阻害要因を取り除き、多様な働き方を選択できる環境づくりに注力していくという。

  • ランサー経済圏
    金融ニーズに対して融資・決済サービスを開発・提供するほか、設備や教育訓練の投資支援、取引法制の周知・遵守徹底、フリーランスのコミュニティの育成などで構築する独自の経済圏

働き方が多様化するなか、新しい働き方に挑戦する働き手の負担や悩みを軽減してくれるプロダクトが増えてきている。その制作過程にサービスを利用するフリーランスのクリエイターが関わることで、より使いやすいサービスが生まれるだろう。FreCaの発行は2018年秋を予定しているという。まずはどんなデザインになるのか楽しみだ。