得意料理は麻婆豆腐だ。というより、それしか作れない。
ひとり暮らしを始めた頃は、凝った料理をつくって丁寧に食べる毎日を想像していたけれど、いざ日々が動き出してみると、そんなのは別世界の話だった。
結局、料理のレパートリーは一向に増えないままだ。

当然、自炊のたびに麻婆豆腐では飽きてしまう。たまには別の料理を作ってみようと張り切ってみるものの、実際の調理に入る前に”何を作るか”決めるのが、意外と、めんどくさいことに気づく。
ふと、毎日違う献立でご飯を作ってくれていた母親はすごかったんだな、と密かに感謝したものだ。

そんなめんどくささを感じている人は自分以外にも思いの外いるようで、最近では、タベリーのようにレシピを提案してくれるサービスも目にするようになった。

そんな中、イギリスのフード&ビバッレッジカンパニーKnorrが、毎日の食事体験を豊かにするAIツール「EatYourFeed 」を発表した。Instagramの投稿を分析し、ユーザーの思い出にインスパイアされたレシピを提案してくれるサービスだ。

EatYourFeedは、デジタルクリエイティブエージェンシーAnalogFolkが開発した視覚認識アルゴリズムが技術の核となっている。

ユーザーが自分のInstagramアカウントと連携すると、EatYourFeedがユーザーのプロフィールとフィード(過去に投稿した写真)をスキャンする。写真から、撮影されたシーンを大別するのはもちろん、投稿に紐づけられた場所・人、投稿に添えられたキャプションなども分析し、独自のキーワードに整理する。
その情報を、Knorrがもつレシピのデータベースと照らし合わせることで、各ユーザーにパーソナライズされたレシピを提案する仕組みだ。

それぞれのレシピでは、材料や調理手順だけでなく、カロリーやタンパク質などの情報も知ることができる。必要に応じて、レシピを指定のEメールアドレスに送信することも可能だ。

レシピには、スーパーマーケットのECサイトへのリンクも設置されている。レシピを気に入れば、用意された6種類ほどのスーパーマーケットの中から好きな店を選んで、そのまま食材の購入が可能だ。


せっかく提案されたレシピも、「今度作ろう」で忘れられてしまっては意味がない。スムーズに必要な食材を購入するためのこの動線は、ユーザーが実際に料理をつくることに寄与するだろう。

EatYourFeedのおかげで、豆腐とひき肉しかなかった我が家の冷蔵庫に、新たな食材たちが仲間入りするもしれない。なにより、自分の写真をもとに提案されたレシピなら、当時の楽しさや懐かしさを思い出しながら、料理をもっと、楽しめそうだ。