スーパーで野菜を購入するとき、棚にならんでいる野菜の中でも、なるべく綺麗で新鮮そうなものを選びたい。しかし、一人ひとりのその行動の積み重ねが、食品廃棄問題のひとつの要因になっている。

余計な廃棄を防ぎ、新鮮な生鮮食品を効率的に店頭へ届けるため、米国ウォルマート社は「Eden」という食品管理システムを開発した

Edenは、ウォルマート社内で行われたハッカソンで優勝したエンジニアたちによって、わずか6か月で開発された。

ウォルマートにおける従来の食品管理方法はこうだ。まず検査官が入荷された商品を撮影し、目視で確認。米国農務省の品質基準とウォルマートの品質基準に対応しているか、手動でチェック。そして商品の受け入れを決める。

エンジニアたちはまず、品質基準をすべてデジタル化することで、検査官が共有で使っていたカメラを廃止し、iPhoneに置き換えた。

Edenの主要機能である、生鮮食品の鮮度を測定するアルゴリズムは、同じリンゴを毎日撮影することで構築された。褐色に変化したリンゴの画像に基づいて、データを処理する機械学習アプリケーションがつくられた。

そうして、検査官が写真を撮る際、データベースを検索して対応する画像を見つけ、「そのリンゴが新鮮であるか」や「いつ頃まで販売することができるか」を容易に判断できるようになった。

店舗の従業員たちが、販売待ちの果物や野菜を管理するのにも役立っている。食べごろのキャベツを優先的に棚に出したり、トマトの貯蔵寿命を予測したり、より効率的にバナナを追熟させたりすることが可能になった。

すべての生鮮食品が適切な鮮度で販売できるようになった結果、無駄な廃棄が軽減された。2018年3月現在、すでに43の流通センターで採用され、8,600万ドル(約90億7000万円)もの廃棄物の発生を防止している。

無駄が生じてしまっている分野に先進的な技術を応用することで、企業にとっても、社会にとっても、そして私たち市民にとっても、よい効果をもたらしている。Edenのような優れたアイデアが社内メンバーから生まれ、実用化できるウォルマート社の動向にも、引き続き注目したい。