空港にいると、無条件に心が浮き立つ。

大きな荷物、行き交う人々、耳に届く聴き慣れない言語。まだ見ぬ土地へ旅立つ期待と、非日常的なムードが心地よく混ざり、“空港”という特別な空間を演出しているのかもしれない。

ただ惜しいのは、待ち時間が長いこと。そして、あれだけ多くの人たちが同じ空間にいながらも、交流がなかなか生み出されずにいることだ。

世界の交流場でもある空港に、新たなコミュニケーションをもたらしたい。KMLオランダ航空は、空港にいる人々が交流できるようにと、翻訳機能の付いた席「Connecting Seat」をクリスマスシーズン限定で設置した。

動画は、実際に国籍の違う旅客者同士がシートを利用したときのもの。一方が付属のマイクに話しかけると、向かい側に座る旅客者のスピーカーから翻訳された相手のセリフが流れてくる。動画内では、日本人女性も、イタリアのシチリアに住む男性とクリスマスにまつわる会話を楽しそうにしていた。

「Connecting Seat」のハードウェアには、Google CloudのSpeech API・Translation API・Web Speech APIを利用している。シートの設置にあたり、KLMオランダ航空は利用者の反応からある種の手応えを感じているようだ。

「Connecting Seat」を設置したことで、旅客者は母国の逸話やクリスマスの願い、自らの世界観など暖かく感情的な会話を楽しんでいました。30以上もの国籍の違う人々が、携帯電話や本を横に置き、お互いに心を開いていたのです。“人と人を結びつける”。これは、私たちKLMが日々目指していることでもあります。

これまでにもKLMオランダ航空は、“人と人を結びつける”という理念のもとにユニークなキャンペーンを実施している。

2016年のクリスマスシーズンには、見知らぬ旅客者同士を集めた豪華なクリスマスディナーを開催。空港のロビーに設置された円状の椅子に人が座るごとに、高く太い柱で支えられていたテーブルが少しずつ降下し、満席時には食事をするのに適した高さになるというものだった。この様子はKLMの公式Facebookで投稿され、約36万件のシェアを誇るなど多くの反響を呼んだという。

今後、KLM航空が「Connecting Seat」の常時設置に踏み切れば、旅客者のなかで空港に対するイメージが大きく変わりそうだ。待ち時間が長いことはもはや、ディスアドバンテージではない。空港が文字通り“世界の交流場”に変わろうとしている。