「International Women’s Day(国際女性デー)」である2018年3月8日、ヘルスケア業界でイノベーションを目指す女性リーダーを育成する、米国サンフランシスコ発のコミュニティ「HealthTech Women」の日本支部の設立を記念したイベントが、渋谷のPlug and Playの日本支社で開催された。

HealthTech Womenでは、サンフランシスコ・ニューヨークに拠点を置き、ヘルスケアの分野において、「グローバル」「女性の活躍」「イノベーション」をキーワードに、興味のある全ての方へ学びと繋がりの機会を提供。様々なバックグラウンドの女性が集まり、交流し知見を深めることで、次世代の健康社会の創造を目指している。

HealthTech Womenは2013年の発足から約4年で米国内の会員数は2万人を超えるという。今回、日本支部ローンチパーティーと併せて、米国内に新たにLos Angeles支部・Nashville支部・Charlotte支部設立の3拠点の開設も発表された。

日本支部の立ち上げに先駆け、HealthTech Women Japanはイベントを開催してきた。過去には、多言語遠隔医療通訳「mediPhone」やヘルステックのグローバルカンファレンス「Health2.0」、ダイエットコーチングアプリ「Noom」などの関係者が登壇。今回は第5回のイベントとして位置付けられ、イベント内ではピッチなども行われた。

米国のヘルステックスタートアップシーンに関するピッチでは、資金調達やM&Aが活発に行われていることに加え、医療のSaaS化やオバマケアによって新しい医療保険の形が登場しており、米国のヘルスケアスタートアップのビジネスモデルは8割以上がB2Bか、B2B2Cとなり、収益をあげられるようになってきていることなどが語られた。

オンライン診療が与える社会的インパクトとは

株式会社インテグリティ・ヘルスケア代表取締役社長の園田愛氏、特定非営利活動法人 日本医療政策機構の高松 真菜美氏が登壇したパネルディスカッションでは、「オンライン診療が与える社会的インパクト」をテーマに語られた。

「オンライン診療」は、3年前から全国で解禁され、2018年2月の時点で約1600の医療機関が導入。2018年4月からは診療報酬が加算され、普及がさらに進むと見られることから、厚生労働省は具体的な手順や注意点を示した初めてのガイドラインの案をまとめている。

インテグリティ・ヘルスケアは、在宅医療やオンライン診療をアジアで展開することに取り組んでいる企業だ。代表である園田氏は、「オンライン診療」。この言葉に対する共通認識を作ることが、これから社会には必要だという。

インテグリティにとっての「オンライン診療」とは、対面診療の補完、患者データの質と量を上げる、医師と患者の双方向のコミュニケーションを深めるだとし、症状や療養状況をオンラインで共有し、医師・患者のコミュニケーションを深めることでよりよい診療につなげていく「YaDoc」を提供している。

パネルディスカッションでは、オンライン診療が今後、社会的にどのようなインパクトを与えるのかに関して、両者の視点から語られた。

高松氏「オンラインで診療を続けていくと、データが蓄積されていく。それが進むと、重症化する前に予防できる人が増えるのではないでしょうか。そのためには患者側が理解し、行動変容が必要になる。患者の行動変容を促すためには、インセンティブの設計が必要になり、その役割は保険者が担えるのではないかと思います」

園田氏「YaDocには弱音を言えるように設計しています。オンライン診療等を通じて、関係性も変わっていくといいなと考えています。中国では、オンラインの医療が進んでいて、民間の医療サービスは日本と比較しても格段に進んでいます。この先、病室の中で閉じて行われるのではなく、生活の中で診療が実践されるように変化していくはずです」

園田氏は、日常生活に医療が入り込むような未来を語る際に、天気予報をたとえとして挙げていた。医療や健康に関する技術が発展し、生活に浸透していくと、その日の朝に自分の体調が予報される、そんな未来が訪れるのかもしれない。