仕事を終えて満員電車に揺られながら、自宅の最寄り駅まで向かう。玄関を開けて、手探りで部屋の電気をつけると、疲労と安心が入り混じったような小さいため息がでた。お腹は空いているが、料理を作る気力などない。

帰り道のコンビニで買ったお弁当を温め直し、その間に1日に必要な野菜の3分の一が摂れると謳ったサラダに手をつけた。美味しくてヘルシーなものを、なるべく手軽に家で食べれたなら。食べ飽きたコンビニ弁当の味を噛み締め、そう願ったひとが今までどれだけいただろうか。

アメリカの大学院に通っていたTovalaの創業者、David Rabie(デイビッド・ラビー)氏も同じような経験をしていたという。忙しい日々を送っていた彼には、料理を作る時間もなければ、美味しくてヘルシーなご飯を手軽に食べるための手段もほとんどなかった。このときの経験が、フードデリバリーサービスTovalaを始めるきっかけになったそう。

アメリカには便利なフードデリバリーサービスがたくさんあるが、Tovalaの特徴は配送されたミールキットを自動的に調理してくれる専用のスマートオーブンが用意されていることだ。

使い方は実にシンプル。始めにTovalaから届いたトレー付きの食材をそのままオーブンに入れ、付属の紙に記載してあるQRコードをオーブンのバーコード読み取り機にかざすだけ。あとは、放っておくだけでオーブンが自動的に調理を進めてくれる。

オーブンでは、焼く・煮る・蒸すの調理工程を行うことが可能。料理に応じて、最適な調理温度や時間が設定されるという。タイマーが鳴るまで待っているだけで、美味しくヘルシーな料理が食べられるのだ。これほど手軽に準備できるミールキットは、今までになかっただろう。

もちろん、このスマートオーブンは一般的なオーブンとしても使用することができる。専用のアプリをダウンロードすれば、アプリ上で調理手順を登録することも可能。焼き加減や調理時間など細かな設定も、アプリから調整できるという。

価格は、オーブン単体で399ドル(約44,000円)。ミールキットは、1人前が週に3回届くプランが36ドル(約4,000円)、2人前が週に3回届くプランが72ドル(約8,000円)という価格設定になっている。オーブンを購入する際に、ミールキットをセットでいくらか注文するとオーブンの単価が安くなるプランも用意されている。

現時点では、アメリカ国内での販売のみ。日本への進出は未定だが、販売が決まれば忙しいビジネスパーソンを中心に人気が出そうだ。

ここ最近、衣食住にまつわる日常の意思決定の負担を減らすサービスが増えているように感じられる。Tovalaを使えば、その日の献立を決め、具材を買い、料理するというプロセスを全て省くことができる。2017年12月にリリースされた、10秒で献立を決められるアプリ「タベリー」も、近しい課題を解決しているサービスだ。

これらのサービスを使えば、頭を使わずとも、手軽に食の楽しみを味わえる。食べ飽きたコンビニ弁当の味を噛み締め、寂しい気持ちに浸る時間がなくなる日も、そう遠くないのかもしれない。