マイクロペイメントの普及による小額課金や、中国における人件費高騰などから、2017年に注目を集めたビジネスがある。

人を介せずにサービスを提供する「無人ビジネス」だ。例えば、レジに人を設けずに営業する「無人コンビニ」が最近は中国で盛り上がっている。

「無人ビジネス」は多くの業界にそのモデルが広り、今年に入ってからフィットネス業界にも「無人ジム」が登場した。

そんな中、「無人ジム」のサービスを提供するMisspaoが同業他社と合併したと、中国大手スタートアップニュースメディアの36krが報じた。

WeChatさえあれば会員登録から決済まで気軽に行える手軽さ

無人ジムとは、WeChatのQRコードや専用アプリをベースに、会員登録から決済までを行えるコンパクトジムだ。

部屋は、2~3人しか入れない小さいサイズのものから、10人近く入れるものまである。従来の大型スポーツクラブと比べると、コンパクトなサイズだ。使用時にはデポジットを約1,700円支払い、退出時に時間に応じて支払う仕組みになっている。

日本のサービスで例えるならば、24時間営業をウリにしているエニタイムフィットネスのサイズをさらにコンパクトにして、会員登録から決済までをLINEの中に組み込んだようなもの。

無人ジムは、住宅街やマンションの下などの空きスペースを中心に設置されている。通勤前に気軽に通うことができたり、家からすぐ近くにあるため週末の空いた時間に使用することができたりと、若い世代を中心に中国の大都市で広がりつつある。

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「独自サービス提供」と「立地」が成功の鍵を握る

中国スタートアップのデータベースであるItjuziによると、10月末時点で類似サービスは9社存在する。独立系スタートアップは2017年頃から参入し、概ねエンジェルラウンドもしくはAラウンドで調達を行っている。

まだ競合は多くなく、投資のラウンドも進んでいない。今後、何が競争優位となり勝者が決まるのだろうか。

ひとつは独自サービス提供による差別化だ。酸素Barや空気清浄機などを無人ジム内に設置し、付加価値の高いサービスを提供しようとするプレイヤーが登場している。

もうひとつは、立地だ。人々の往来が多いエリアに設置しなければ、ジム自体が使われない。そのためには、いかに素早く「一等地」を抑えられるかが重要だ。

そのためには、製品の差別化や出店スピードを維持するための量産体制を構築できる人材を早期に囲い込むことが求められる。現地メディアのNewseedによると、Misspaoに合流する企業「达卡运动」のチームは、フィットネス機械の設計や製造に十数年以上携わってきたようだ。

今回買収を実行したMisspaoの創業者は、調達した資金でM&Aを行うことで、専門人材の獲得を狙ったのではないかと考えられる。同氏はMisspao創業前に、30億ドル以上を調達しているフードデリバリーサービス大手「Eleme」の初期メンバーを務めていた。調達した資金の有効な活用方法をそこで学んだと考えられる。

今後も「無人ジム」ビジネスへの新規参入は続くと考えられる。調達した資金を有効に活用し優れた人材を獲得できるかが、その企業の成長を左右するだろう。

img:https://weibo.com/u/6296075940 , http://www.misspao.com/